筆者の主張は明確である。「病院によく行く人は、薬や治療で命を縮めやすい」。医者に行けば疑わしい所見を検査されて、基準値ぎりぎりの異常でも念のために薬を飲んだり、手術をする羽目にもなる。近代医学による薬には効能とともに副作用があり、手術の技術も不安定で、がんと分かると苦しい抗がん剤治療を進められたりもする。本当にがんである場合には、切除しても放射線治療をしても完治はなくて、転移していれば手遅れ。切ったり抗ガン治療をするリスクを冒すよりも、放置して楽に暮らし、痛みを和らげる方を選ぶべき、という主張である。最近読んだ本で、「腸内細菌や皮膚常在菌の働きが消化吸収や免疫機能を司っている」、「抗生物質投与が常在菌バランスを崩したため花粉症やアトピーなどの自己免疫異常による疾患が増えた」、「傷の消毒はできるだけしない方が治りが速い」などの主張を知った私としては非常に受け入れやすい内容である。
47の心得の中でも印象的なものをあげると、心得3.血圧130で病気なんてありえない 心得10.医療被曝を避ける、特にCTスキャンは通常X線の300倍 心得12.一度に3種類以上薬を処方する医者は信用できない 心得13.軽い風邪に抗生物質を出す医者は信用するな 心得14.「抗がん剤で寿命を延ばす」という医者は信用できない 心得24.断食、野菜ジュース、免疫療法は「がん詐欺」と思え 心得27.体重とコレステロールをむやみに減らさないのが健康法 心得31.コラーゲンもグルサコミンもサプリでは増えない 心得33.コーヒーはがん、糖尿病、脳卒中、ボケ、胆石、皺を遠ざける 心得34.暗くなったら寝て明るい間は起きる、これが健康法の第一 心得36.大病院にとって患者は被験者 心得39.よく歩く人はボケにくい 心得40.インフルエンザと子宮頸がんワクチンは打つな 心得47.延命治療をしないことが安らかな死 本書の内容はここまで。
現在の日本におけるがん治療の問題点を数多くの著作で主張、その集大成が、「がん治療常識のウソ」で1994年に「科学朝日」に一年間連載したものを再編集したもの。章立てを見ると内容がわかる。
- がんの治療法は国によって異なる
- 治療法の選択は医者の個人的好みだ
- 生存率は低いほど信頼できる
- がん手術による死亡が今後ふえる
- 放射線治療を最初に選ぶメリット
- いいかげんな抗がん剤治療が横行している
- 「がん」か「良性」か、誤診がとても多い
- がん検診は非科学的で疑問だらけ
- 検診で見つかる早期がんは「がんもどき」だ
- 延命治療では「延命」できない
- がんで安楽死や尊厳死を論じる必要はない
- 科学を装う日本のクジ引き人体実験
- 民間療法にはやはり副作用が多い
- 病名を知らせないのは医者自身のため
- 「半数は治る」はあまりに楽観的すぎる
- 専門家とマスコミで「がん撲滅」デマ
- どのように治療法を選べばよいか