徐々にさかのぼって記録しています。

8月19日(土)はレンズブルクのキリスト教会で、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭合唱団のコンサート『夜の静けさ』がありました。

〈プログラム〉
サン=サーンス:夜の静けさ
ブラームス:混声合唱のための5つの歌 op. 104
リリ・ブーランジェ:混声合唱とピアノのための『春』
         混声合唱とピアノのための『泉』
         メゾソプラノ、女声合唱とピアノのための『サイレーンたち』
         男声合唱とピアノのための『嵐の中で』
         ソプラノ、テノール、混声合唱とピアノのための『平原上の夜』
ブラームス:混声合唱とピアノのための『4つのカルテット』op. 92

指揮:ニコラス・フィンク
シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭合唱団
ソプラノ:ファニー・アントネル
テノール:トーマス・フォッレ
ピアノ:フィリップ・マイヤース

リリ・ブランジェは20世紀初頭に活動し、ラヴェルが何度も挑戦して得られなかったローマ賞を得るほど評価されていながら、1918年に24歳でこの世を去った女流作曲家です。

私は留学時代に彼女の歌曲を持ってきてくれた歌の学生がいたので、名前を知っていましたが、合唱団のメンバーは誰もブーランジェを知りませんでした。

半音進行と全音進行、息の長いフレーズ、感覚的に官能的な、開放的な、非常に快感のあるハーモニーで、まぎれもないブーランジェの語法が確立されています。

このプログラムは、合唱団のメンバーにも好評でした。

他の演奏会では、実際の本番を振るプロのオーケストラ指揮者と、我々素人合唱団の間に立って中間管理職のストレスを背負っている我らが合唱指揮者にとって、この演奏会は彼が企画し、彼が本番も指揮できる、ストレスの少ないはずの演奏会なんですが…。

今までとは違って予測のつかないハーモニー、フランス語の歌詞、一部は8声にもなる見た目のややこしさ、おまけにマイナーな作品だからか、なかなか楽譜が届かず(コピーで練習していました)、ミスプリントが散見されます。とくに、臨時記号。何が正しくて何が間違っているのか、ひと目では判断できません。

6日前には初のエルプフィルハーモニーでのコンサートが終わったばかり、ピアニストはようやく前日、歌手とは当日初めての合わせで、とかく予定が押し気味で気が抜けませんでした。ブーランジェの作品は、ピアノパートが、腕が3本要るんじゃないかしらと思うくらい音が多くて、重要な役割を果たします。ピアノとの合わせは出来をかなり左右します。

前日も当日も、この演奏会のために一日中リハーサルか待機している状態。そもそも指揮者がピリピリしていて、それが団員に伝わって…となると、ロクなことになりません。

幸い、コンサートの前に空き時間があったので、町に出て気分転換することが出来ました。

ありがたいことに会場はほぼ満員、本番ではみんなが力を出し切ることが出来ました。
けっこうみんな、乗せられやすい体質?^^;

キリスト教会は大きすぎず、残響もほどほどでとても聴こえやすく、気に入りました。
教会の方々が私たちのためにひな壇を作ってくださって、指揮者ともよくコンタクトが取れました。

1曲目のサン=サーンスで、音程は下がりながらも、ハーモニーが調和していたので、行けそうな手ごたえを感じました。ブラームスOp.104までは、無伴奏アカペラ。

「サイレーンたち」では、サイレーン部隊が遠くからハーモニーを流します。リハーサルの時はよく響き、できるだけ静かに、と指示されました。それが、ほぼ満員の会場で響きが違ってしまったのか、舞台上のメンバーにも聴こえなかったと言われたし、聴いている人にも「指揮者が違うほうを向いて指揮しているから、そこにも誰かいるのかと思ったけど、何を指揮しているのか聴こえなかった」と言われました。わざわざ特別時間を作って練習したのに、う~ん残念なハプニングでした。録音ではマイクで音を拾っているので、大丈夫そうですが。

アンコールに応えて、「平原上の夜」をもう一度演奏しました。

当然と言えば当然かもしれませんが、この日がブーランジェのレンズブルク初演だったそうです。

プログラム全体が本当に素敵な曲ばかりでした。とくにブーランジェは、また演奏する機会があればいいのに、と思った人が多かったみたい。

この日の演奏は、10月29日22時よりラジオ NDR Kultur で放送の予定です。

この演奏会について新聞記事

http://www.kn-online.de/News/Aktuelle-Nachrichten-Kultur/Nachrichten-Kultur/Der-Schleswig-Holstein-Festival-Chor-in-der-Christkirche-Rendsburg