私の度重なる訪問要請に、たぶん少しは疑問を感じながらも、訪看さんは来てくれた。
これが、今日二度目。
その時の訪問看護記録。
『血圧176/91
いびき様呼吸あり SpO2 88%
上体起こし SpO2 90-92%
右腕 リンデロン1A 皮下注射』
「いつもより、血圧が高いね。それがちょっと気になるけど。手が冷たいね。こうやって上体を起こしておいて、水分だけでもとにかく飲ませてください。」
訪看さんが帰った後、買ってきたOS1ゼリーを一本全部飲ませた。
嫌がらずに飲んでくれた。
上体起こしの体制を保つために、背中に布団や毛布をあてがい、寝かせる。
時間は、午後6時。
この日は宅配の介護弁当だったので、ばーばにそれを食べさせる。
自分の分は作る気にならなかったので、卵かけごはんで済ます。
それから、洗濯物たたんだり、食器洗いしたり、家事をして、いつものように7時過ぎにばーばを寝かせるために、じじばばの部屋に連れていく。
じーじは、上体が起きているからか、呼吸に乱れは無く寝ている。
この日、仕事が忙しく、それまでの疲れもあり、二階の自分のベッドに横になる。
ちょっとだけ寝るつもりが、目が覚めたのは、午後10時半。
旦那が帰ってきている気配もない。
あ~、晩ごはん作ってなかったんだ。
そう思いながら、階下に降りていき、まず、じーじの様子をみる。
すると、口の中が白い痰でいっぱいで苦しそうにしている。
慌てて、口腔ケア用のスポンジで口の中をキレイにする。
ちょうど、この時に旦那が帰ってきた。
今にして思えば、痰と言うよりは、口から泡を吹いている状態だったのかもしれない。
背中から抱きかかえながら、
「じーじ、口の中キレイになったよ。」
「じーじ、わかる?」
「じーじ?」
呼びかけても、反応しない。
目は開けているものの、視線は定まっていない。
ばーばは、ずっと自分のベッドの上で、私とじーじのやり取りを見ている。
旦那を大声で呼び、持っていた携帯で訪看さんに電話をする。
私「意識がありません。」
訪看さん「息はしてる?」
私「かろうじて」
訪看さん「とにかく、少し時間はかかるけど、今から行くから。」
私「お願いします。」
電話を切り、じーじに再度呼びかける。
すると、少し大きくスゥっと息を吐き、目を閉じた。
胸に手を当てても、鼓動は感じられない。
脈をとっても、感じられない。
4月6日、午後11時15分。
もう一度訪看さんに電話をする。
私「今、息を引き取りました。」
訪看さん「えっ?そのままでいて。とにかくすぐに行くから。」
ほどなくして、訪看さんが来てくれた。
私の電話を受けても信じられなかったそうだ。
『娘さん、取り乱して何を言っているのだろう?』
そう思いながらも、エンゼルケアの準備をして来てくれた。
訪看さんが、その目でじーじの死亡を確認し、先生に電話をしてくれた。
日付けが変わろうとしていた。
続きます