「思考と直覚」人間の霊魂を思考/スピノザ12
スピノザの思考からすると、個々其れ其れの、ものの現実的本質は「自己保存の努力」インド・ヨーロッパ語族の一分派であるイタリック語派に属するラテン語のconatus se conservandiであり、スピノザは其れを「自存力若しくは自己保存力」、即ち「自己を維持する、もしくはその存在に固執する傾向」としています。個々其れ其れの、ものの現実的本質であい、大凡(おおよそ)一般の個物に備わっている傾向であるとします。現代科学が捉える「ウイルス」さえもその自存力を備えています。此のことはスピノザが言ったことを事後証明したことになります。ところが、其の人間の自己保存の努力そのものの顕(あらわ)れが欲望として現れ、欲望が人間精神の感覚的認識によって決定される限りにおいては其の不完全性が顕著になります。此の認識段階では人間は外的対象である「もの」の支配下にあり、感情への隷属状態を脱することは出来得ないし可能性すらもありません。然し乍ら、人間の感情には「もの」の隷属下にある受動感情ばかりではなく、正当な精神に育まれば自己の内に眠る精神自体の知的活動に伴う能動感情があり、自己自身の持つ理性的認識によって欲望を決定するときに人間は自由であることを獲得します。人間存在の精神性における自由とは、存在としての神が「神の本質」としての「無限の可能性ではなく」存在としての必然により「有と無を離れた自身の存在さえ意識しない「自由其のものの必然性」を持つが如く、スピノザによれば、自己の本性の必然性によってのみ働くことを「自由」と定義するのです。
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