「思考と直覚」人間の霊魂を思考/スピノザ19
プロティノスの思想は一元論、即ち、物事の一切を人間の精神に還元する唯心論や物事の一切を物質に還元する唯物論、精神と物質とをともに夫々の現象形態として「一」の第三者に還元する等の系統に属します。其の西洋の代表者の一人として目(もく)されているのが「一者(ト・ヘン/to hen)」からの多種多様な現象の流出を説くプロティノスなのです。彼によれば其の「一者」から世界内存在の一切が現出します。存在事物の源泉なのです。一者はその存在の充溢(じゅういつ)から、一者以外の他の何者をも生み出します。「溢出(いっしゅつ)亦は流出( effluent)」とも呼ばれるは尽きることのない源泉です。即ち、自己内源泉の転移に過ぎないからです。「一者」其のものは何等(なんら)損なわれることは有り得ません。存在の働きを自己以外のものを生み出す創造の働きとして把握する此の直観は、ギリシア哲学の達した中でも極限の美しい直観の一つであるとも言えます。此の「産む自然」としての実体を信仰上の神格性を持った神存在ではなく「神」、論理上の必然として「産む自然」としての一なる神を実体、多様な「産まれた自然」をその様態と説くのがスピノザであると云えます。西田幾多郎の「善の研究」(1911)も、純粋経験の程度及び量的差異による世界と人生の一元論的説明の試みと言っても過言では無いでしょう。
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