「思考と直覚」人間の霊魂を思考/スピノザ72
アイネシデモスの打ち建てた10か条の懐疑の方式トロポイ(tropoi)は、第一に動物其々各種族の身体構造は何等(なんら)定型化されたものでもなく、時間の経過に置いて変動しうる。此のことはダーウィンの進化論を待つこともなくても当然の帰結です。第二の人種或いは人間各個人の体質の相違にしても黒・白・黄の肌合いは単にメラニンの配合の違いであり人間の正邪の判断の基底とは成り得ないこと当然です。第三の各感覚器官の構造は其々の生命組織が自己保存能力の適合過程に置いて獲得したものであり、生命保存の希望的恒常性と結び付き、人間各個人の体質、各其々の感覚器官の構造、生理心理上の条件を永遠的に存続することを、通常生活する人間は兎も角も、自己は天命から選択された人間であることを認証せずとも、自然淘汰が作用しています。第四の生理心理上の条件とは、其の人間の生育環境や宗教色の度合いにより千変万化します。爬虫類である蛇を愛玩する者もいれば、宗教的に見るのも嫌だといった具合です。第五の対象の位置、距離、場所に関しては、人間其れ其れの感受性が表層に浮かび上がります。ぎらつく太陽を間近に観想する者もいれば、暗闇に輝く星々を平面的に捉えるといった具合です。まして宇宙の果への感覚は「距離」感さえ掴めず、球形なのか馬頭型なのかさえ掴みきれない問題であり、懐疑性の塊であるのを考慮すると頷けます。
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