先日は、月に一度の茶道の稽古でした。


今日の稽古終了後に、個人的に衝撃的なことがありました。

 

それは・・・

 

社中の一人が、「今日限りで引退したい」と申し出たのです。

 

その方は、社中の中では最高齢の86歳。ですが、本当にお元気な方でして、今でも原付に乗り、買い物に出かけているとのこと。

 

どこからどう見ても、60代前半にしか見えない方なのですが、最近 膝が弱くなり、正座をすることが容易ではない感じではありましたが、

 

 

そのようなこともあってか、

 

「これ以上、無様な格好をお見せするわけにはいきませんから。年齢的にも体力が下降することはあっても、もうこれ以上 上昇することはないので」と、おっしゃっていました。

 

社中一同にお礼の品を下さったのですが、「私が学生時代を過ごした新潟・長岡の『花火パイ』です」と。

 

御年86歳の女性が、「学生時代を過ごした-」と言った時の、その目の輝きや、声の明るさ。あの表情は、一生涯忘れることは無いと思いました。

 

上の写真が、その「長岡花火パイ」です。

 

 

2年ほど前に、ご主人が認知症を発症し、その介護の傍ら、稽古場に足を運んでいました。

 

今年1月の初釜の際には、「主人のこともありまして、今年はもう来れないかも知れません」と、弱音を吐いておられました。

 

月に一度の習い事には通いたい。でもそれさえも許さないほどに夫の容態が思わしくない。ここで外との繋がりを絶ってしまったら、外出はめっきりと減り、今度は自分がボケてしまうかも知れない。

 

負のスパイラルが脳裏を駆け巡り、幾度も幾度も葛藤し、悩みに悩み抜いたうえで出した答えだったのでしょう。昨日、今日で出した答えではありません。その胸中を察すればこそ、胸が苦しくなります。

 

 

 

東大名誉教授の上野千鶴子さんの著書に、『老いる準備』というのがありますが。

 

「まだまだお元気なのに・・・」と、周りは引き止めましたが、これが彼女なりの〝老いる準備〟なのかも知れません。

 

ある一定の年齢を過ぎると、人は誰しも、老いることと、生きることという、相反することを両立していかなければならないのです。