私が一番尊敬する映画監督は黒澤明である。

 

黒澤監督の映画を初めて見たのは15歳(中学3年)の時、『隠し砦の三悪人』だった。

 

映画の師であり学校の英語教師でもあった益田先生(山鹿映画を見る会の主催者でもあった)が、自分と映画好きの仲間で鑑賞したいがために十万円以上も出し合って東宝からフィルムを借りて黒澤映画鑑賞会を公民館で行ったのだ。

 

告知はしたものの、その日は熊本は山鹿に雪が降りとても寒かった。

 

親友と遊び帰りに公民館の前を通ると益田先生が雪の中ぽつんと一人立っていて手招きする。

 

『よかところに来たたい。今から黒澤映画鑑賞会をするけん、見に来たらよか。雪降るけんお客さんが少なかと。お前たちはタダにしてやるけん』

 

私と親友は大喜びした。

 

すでに夕方だったので先生は奢りで出前をとってくれた。中華丼だったがとっても美味しくて、あの時の中華丼をもう一度食べたいといまだに思いだす。

 

夕飯付き黒澤映画鑑賞会、しかもタダで・・最高じゃないかー!

 

『隠し砦の三悪人』が始まった。

 

ど迫力のオープニングミュージック、いきなり、砂漠ようなところで二人のノッポとチビの落武者が歩く後ろ姿。

 

冒頭から圧倒された。

 

この印象的な冒頭シーンは、音楽も含めてジョージルーカスに多大なる影響を与え後に『スターウォーズ』を産み出しロボットが砂漠を歩く名シーンを誕生させた。(スターウォーズのストーリーそのものが隠し砦の三悪人を原案にしている)

 

物語が始まってゆくと殆どセリフが聞き取れない。

 

何しろ1979年のことである。

 

フイルムは傷だらけ、音響設備はかなり悪い。

 

先生方やお客さんはかつて、隠し砦の三悪人を見たことがある人ばかりなので物語より先に爆笑する始末で、こちらはなんで笑うのかがわからない。

 

ゆえに面白さなどは感じることは出来ず、ただただ凄い映像作品を目撃した、にとどまった。

 

後に、上京してから名画座で隠し砦の三悪人を改めて鑑賞したのだが爆笑し過ぎてお腹が痛くなったほどで、なぜあの時に大人たちが先に笑ったかがよく理解出来た。

 

隠し砦の三悪人は最高に興奮したし面白かったし爽やかな感動を得ることも出来た。冒険活劇として映画史に残る名作である。

 

その後も時々『隠し砦の三悪人』を見るが、今まで30回以上は見た。

 

何度見ても面白い。

 

それが真の名作というものだろう。

 

しかし、振り返ってみると15歳の時に黒澤監督の隠し砦の三悪人を見たのは私の人生にとってはとても意義深い価値ある出来事だった。

 

用心棒や椿三十郎、天国と地獄、赤ひげ、影武者など皆、10代で見たからだ。

 

20代でほぼ全作品を見た。

 

私が作る作品は、黒澤映画の影響を間違いなく受けている。

 

まさに、それが舞台『銀河鉄道に乗ったサギ』である。

 

二人の振り込め詐欺師が、逆に騙され銀河鉄道に乗せられて命からがらの宇宙の旅を通して成長してゆく物語である。[本編ノーカット版(前編)この度youtubeにに動画をアップした]

 

実は、私は黒澤監督に5回お会いしたことがある。

 

私が執筆したシナリオを2作品も読んでいただいた。

 

今、考えれば世界の大監督に対して無謀というか大変恐れ多い大胆なことをしたと思う。

 

黒澤監督が生きていた時代、ジョージルーカスやスピルバーグやコッポラくらい有名であっても黒澤監督にはそう簡単に会えるわけではなかったので、映画界では私が黒澤監督に5回も会って話をしただけでなくシナリオまでも読んでもらったというのは“西から日が出る”くらい信じてもらえそうにない話だからだ。

 

さらに、私は黒澤監督の御葬式(数万人も集まったお別れ会の方ではなく、身内だけの葬儀)にも参列して黒澤監督の棺を担いだ。

 

これらの詳細については別な機会で書きたいと思う。

 

その前日のお通夜の時に『男はつらいよ』の山田洋次監督が外でインタビューを受けていた。

 

「山田監督が、黒澤映画の中で代表作と思われる作品はなんだと思いますか」

 

私は、バカな質問だなぁと思った。

 

案の定、山田監督がムッとした表情になった。

 

断っておくが、山田監督は温厚な方でインタビューでそんな表情を表すような監督では決っしてない。私自身、大尊敬する名監督である。

 

山田監督は少し表情を和らげてレポーターに諭すように話し出した。

 

『黒澤さんの映画をどれが代表作かなどと言うのは大変失礼な言い方なんです。黒澤さんの映画は全てが代表作なんですね』

 

あーさすが、山田監督だと私は拍手を送りたくなった。

 

黒澤映画はたった30本しかない。

 

しかし、その30本がいかにして作られたか・・それだけで百科事典を作りたくなるほどの膨大な努力と苦労の結晶の記録となるだろう。

 

スピルバーグは黒澤監督を現代のシェークスピアだと言ったが、千年万年歴史に残る大監督である。

 

その作品の本当の評価はまだまだこれからだと私は思う。

 

私は生きている間に、一本でもいいから黒澤映画を超える作品を作りたいと決意している。

 

半世紀生きてきた私が、その目標に向けて歩んでいる途上での半集大成的に作ったのが『銀河鉄道に乗ったサギ』である。

 

この作品は、黒澤監督の隠し砦の三悪人へのオマージュ的な作品でもあるのだ。

 

黒澤映画が大好きな人なら、すぐにそれがわかるだろう。

 

銀河鉄道に乗ったサギはもちろんオリジナル・・・しかし、そこには黒澤イズムが静かに流れていることを感じとっていただけると思うのだ。

 

銀河鉄道に乗ったサギを誰に一番見て欲しかったかと言えば、黒澤明監督である。

 

「あなたが、作った作品があるなら、それを持ってきなさい。それを見ようじゃないの」

 

黒澤監督はそう言ってくださったのに、私は映像作品を持って行かなかった。

 

次回もっと良い作品を作ったら持っていこう、そうやって時は過ぎてゆき黒澤監督は他界してしまった。

 

実に情けない。

 

もし今、監督が生きていたら今回映像作品に仕上げた舞台『銀河鉄道に乗ったサギ』を間違いなく黒澤監督に届けて見てもらっただろう。

 

私は黒澤監督にぜひ見てもらいたい、そう思って作り上げたのが『銀河鉄道に乗ったサギ』なのだから。

 

しかし、もし誰かに・・

 

あなたの作品で最高傑作はどれですか?と尋ねられたら、私は即座に答えるだろう。

 

『次の作品です』

 

次回最新作は

『Sirius game』

 

【『銀河鉄道に乗ったサギ』映像作品〜前編〜は下の画像をクリック!】
 

 

(真崎明監督ブログより本文転載)

 

 

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