前回「マイナス金利の先にあるもの8 - 日本経済衰退の原因は?」では、日本経済は衰退しているように見えるけれど、実際はゼロ金利・完全雇用下で全力を出して走り続けていて、実質ベースでは成長を続けていること。
むしろ潤沢な資金による供給過剰と人口問題による需要減少でデフレが起こっているため、衰退しているように見えるだけだということ。
しかし国の借金はその分膨大であり、人口減少社会=デフレ社会を受け入れるのであれば借金は減らしていかなくてはならず、拡大経済を望むなら人口増加が必須であることを書きました。

実質成長率=人口増加率+αであることを考えれば、質の改善だけでは限界があります。
名目ベースの日本経済の衰退の原因は、やはり人口問題だと思います。

それにしてもなぜ人口が減り始めてしまったのでしょうか?


晩婚・少子・高齢化
日本では、婚期が遅くなり、子供が少なくなり、寿命が延び高齢化が進んでいます。
これは文化的な背景や様々な要因が指摘されていて、一概には言えません。
しかし日本だけではなく先進国では共通の課題となっており、各国それぞれ事情は異なるのでしょうが、共通項がないわけでもなさそうです。

文化的な背景はさておき、経済的な背景について少し考えてみたいと思います。

平成26年に内閣府が行った調査によれば、男性が結婚しない理由の1位は経済的理由です。
女性の場合は独身の気楽さを失いたくないというのが1位で、2位はやはり経済的理由です。
一方、結婚願望がないわけではなく、70%以上の人が結婚を希望しています。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h25/ishiki/pdf/gaiyo.pdf

経済的理由?
お金がなくて結婚ができない?

変ですね。
日本は国債を大量に発行し、政府が借金を背負っています。
税金を取らず借金して財政出動や社会保障で民間に支出しています。
民間には使い切れないお金が溜まり、ゼロ金利政策でも借りる人はこれ以上いません。
国の借金の対極にあるのが、アメリカ・スイスに次いで世界3位の個人金融資産のはずです。
お金がないはずはありませんが・・?


どこにお金が偏っているのか?
まず日銀の資金循環統計を見てみましょう。

純資産ベースで
家計+1361兆円
企業 -496兆円
政府 -655兆円
となっています。

確かに家計は大きくプラスですね。
これがよく言われる一人当たり千数百万円の個人金融資産です。
しかし若い人はお金がなくて結婚ができないと言います。
なぜなのか。


お金は高齢者の懐に
今度は年代別の家計を見てみましょう。

nendai-chochiku

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2015/html/zenbun/s1_2_2.html

上記は二人以上の世帯。つまり結婚している世帯と考えていいでしょう。
20代はまだ持ち家率が低く、貯蓄もローンも額は小さいですね。
30代は家のローンがあるので純資産はマイナス。しかしその後は40代で純資産がプラスに転じ、60代以降はローンの返済を終えて大幅な貯蓄超過となっています。
そして貯蓄は70代以降もほぼ取り崩すことがなく、純資産が60代より増えていることがわかります。
そしてこれは金融資産であり、土地家屋などは含まれません。

日本人は死ぬ時が一番金持ち。
平均3500万円残して死ぬと言われていますが、概ねそんなものでしょう。

それでは20代・30代の単身世帯はどうなっているのでしょうか?
金融広報中央委員会の調査では以下のようになっています。

単身世帯の金融資産

tanshinshisan


単身世帯の金融負債

tanshinfusai


20代単身者では100万未満の貯蓄しかない人は70%超。貯蓄のある人の中央値は10万円。
30代でも100万未満の貯蓄しかない人は50%弱います。貯蓄のある人の中央値は100万円。

負債はどうかというと、単身者の20代30代とも80%前後が無借金ですね。
20%くらいの人は借金があるようです。
借金の理由で最も多いのは、両世代とも日常の生活費です。

単身者なので住宅ローンのような長期固定のものはないでしょう。
20代は貯蓄額100万円未満の人が7割、貯蓄がなく借金のある人が2割。
30代は貯蓄額100万円未満の人が5割、貯蓄がなく借金のある人が2割。
概ねこんな姿と考えていいかもしれません。

アンケート調査なので正しい回答をしているかはわかりません。
借金の項目は答えにくいでしょうから、借金があってもないと答える人もいるかもしれません。
しかし結婚適齢世代の経済状況の厳しさはなんとなくわかります。

貯金100万未満の30代男性が、結婚のあいさつに行けるだろうか?
経済的な理由で結婚できないというのも、嘘ではなさそうです。


人口減少の原因は世代会計
つまり国の借金の裏側で民間には使い切れないお金が存在しますが、そのお金は大きく高齢者世代に偏っており、結婚適齢世代は経済的な理由から晩婚化し、それが世代交代サイクルを引き延ばしている様子が見えてきます。

使い切れない財産を3500万円残して死んでいく日本人。
お金がなくて結婚できない日本人。
なぜ世代間でこれほど大きな差ができてしまったのか。

次回もう少し見ていきたいと思います。

読者登録してね 

↓他のブログも読んでみる?