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ビデオカメラやスマホで撮られた動画で

手ブレが酷いと、しばらく見ていたら

気分が悪くなりますね


これを、映像酔いと言います


この映像酔いを起こしたときに

脳がどのような状態になっているかを

調べた実験が報告されました


京都大学と明治国際医療大学の

研究グループによる成果です


京都大学のプレスリリース
「映像に酔うと右脳と左脳の活動が乖離する現象を発見」


論文(preprint)
Miyazaki J, et al. (2015)
"Inter-Hemispheric Desynchronization of the Human MT+ during Visually Induced Motion Sickness"
Experimental Brain Research




脳の活動は fMRI で調べています


被験者は MRI の装置の中に頭を入れて

以下の流れにしたがって、

動画を見ている間の脳活動を計測します


安静(5分)
 ↓
酔いを起こさない動画(6分)
 ↓
安静(5分)
 ↓
酔いを起こす動画(6分)
 ↓
安静(5分)


実際に映像酔いを起こすかどうかは

人によりますね


実験では、8名が映像酔いを起こし、

6名には起きませんでした


そして、映像酔いを起こした人と

起こさなかった人とで

視覚情報を処理する脳の領域(視覚野)

の活動を比較しました


視覚野と言っても、

V1, V2, … といった具合にたくさんの

領域に細分化されていて、

段階的に処理が進められます


実験の結果、

V1, V2, V3, V3A, V7 では

映像酔いの影響は見られませんでしたが、

MT+野では、左脳と右脳の活動リズムが

違っていたということです



ちなみに、

MT+野(エムティープラスや)
motion sensitive middle temporal area

は、ヒトで動きを感知する視覚野


視覚野もサルの方が詳しく調べられていて

サルで言う、MT野とMST野

を合わせた領域に相当します


MT野(Middle Temporal Area)は

網膜上の運動を処理し、

MST野(Medial Superior Temporal Area)は

動く対象を目で追うときに関わります


実験の結果から、

映像酔いを起こしたときに、

MT+野の活動に左脳と右脳で差が出たワケ

ですが、その理由については

論文でも推測にとどまっています


MT+野までの情報処理にズレが生じて

結果的に MT+野での活動に左右差が出る

ということなのでしょうが、

MT+野までのズレで映像酔いになって

MT+野の活動の左右差も随伴したのか、

それとも、MT+野の左右差が映像酔いを

引き起こしたのか、

ということは、まだ分かりません



高画質で本物と見紛うばかりの映像技術や

ドローンのような臨場感のある撮影技術が

急速に進歩している中、映像酔いの問題は

今後ますます顕在化すると思われます


脳科学の研究が進められて、映像酔いが

起きにくい対策が講じられるとよいですね




(おしまい)




文:生塩研一




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