まず、

眼が光を感じる仕組みを

簡単にみておきましょう


eye


nature.comのサイトより



眼の中に入ってきた光は、

水晶体というレンズを通って

突き当たりの壁の網膜にぶつかります


薄い網膜の一番奥にあるのは

光を感じる視細胞


視細胞は以下の2種類

 杆体細胞:光の明るさを感じる

 錐体細胞:光の色を感じる


ここでは、杆体細胞についてみてみます



杆体細胞には、光に反応する

視物質のロドプシンがあります


杆体細胞の一番深くにある外節には

円盤膜が幾重にも層状に配置されており

ロドプシンはその円盤膜を7回貫通する

分子量約4万の分子です


ロドプシンは内部に

ビタミンA(レチノール)の端が

ちょこっとだけ変えられた、

レチナールを包んでいます



ビタミンA


理化学研究所のサイトより



ちなみに、ビタミンAが不足すると、

夜盲症(俗に言う、鳥目)になり

暗い所で物が見えにくくなります


ただ、

普通の食生活で不足することはなく、

逆に、妊娠中の過剰摂取は先天性異常を

引き起こすことが知られています



ビタミンA が少し変化したレチナールは

もともとシス型という構造なのですが

光が当たると、トランス型の

メタドプシンに構造変化します


下図の赤い部分が構造変化する部分です


レチナール


産業技術総合研究所のサイトより



すると、その近くにあるタンパク質の

トランスデューシンを活性化し、

それにより、cGMP を分解する PDF

(ホスホジエステラーゼ)が活性化され

cGMP が減少し、

cGMP 依存性 Na チャネルが閉じて

膜電位がマイナス(過分極)になります


それから、

視細胞の軸索終末からの

グルタミン酸の放出が抑制されて、

シナプス接続する双極細胞に

光を受けたことが伝わって、

最終的に脳に情報伝達されます


ちょっとややこしかったですかね。。



ロドプシンの中にあるレチナールの

構造変化が発端になったわけですが、

どれくらい強い光が当たると

この構造変化が起きるのでしょうか?


実は、たった1個の光子でよいことが

カエルの杆体細胞を使った実験で

確かめられています


Sim N, et al. (2012)
Measurement of photon statistics with live photoreceptor cells.
Phys Rev Lett 109(11): 113601.




その実験では、

生体から取り出した杆体細胞に

直接、光を当てていますが、

実際には眼から入った光の90~97%は

桿体に届くまでに吸収・反射される

と考えられています


また、1個の光子で反応するとなると、

誤作動の可能性もあり、

脳も困ってしまうでしょう


ということで、

どれくらいの数の光子が

網膜に当たると「見えた」となるか、

というのは、実際に生体で調べて

みないと分からないとされていました



2015年6月に開催された、

アメリカ物理学会で、それに関する

研究発表があったと Nature が

ニュース記事として報じています

Davide Castelvecchi
"Quantum technology probes ultimate limits of vision"
doi:10.1038/nature.2015.17731




それによると、、

研究者らは、一度に一定数の光子を含む

レーザー光を発生させる装置を使って、

被験者の前方の、右か左から光を当て

左右のどちらが光ったかを被験者に

答えてもらいました


わずかな光ですので、

はっきり見えたというよりは

「そんな気がする」程度だったようです


すると、光子30個のレーザーで

「見えた」と答えられたそうです


眼に入った 30個の光子の10%が

網膜に当たったとして、ヒトの眼は

3個の光子が網膜に当たるだけで

反応すると結論付けています


たった光子3個に網膜が反応するなんて

私たちの眼は、スゴいですね




(おしまい)




文:生塩研一




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