旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

奥武蔵やまあるき

2017年11月13日 | 旅の風景
 10月の”旅行好きの夕べ”の際に、何人かの方から"E&Gやまあるき部"の正体への質問をいただいていたのですが、今回はE&Gやまあるき部の日帰りやまあるきです。

先に気になるやまあるき部の正体について。

単純に、私個人が低山の山歩きでもしてみようかなと歩き始めただけなのですが、ある日、同じように山歩きを始めた友人と話していたら、私にとってはお気楽な遊びなのですが、普通に暮らしている人にとっては案外ハードルが高い遊びである事に気づかされたのです。

 田舎育ちの私にとっては山は一番手軽な遊び場でした。それに加えて短い期間ですが大学の山岳部に所属して貴重な体験を積む事ができたのです。

 そんなある日、雑談をきっかけにして一人の友人が加わるようになりました。

 それだったら、ちょっとハードルが高い遊びに気軽に参加できる機会を提供できれば良いかなと生まれたのがやまあるき部なのです。

 さて、今回は先月予定していて台風で中止になったルートへの再挑戦です。ルートそのものは伊豆ヶ岳へ行った時に言葉を交わしたご夫婦が向かっていたルートを参考にしたコースで、正丸駅から名栗元気プラザを経て武川岳へ向かい、稜線沿いに二子山へ繋いで芦ヶ久保駅へ下山するコース。

 今回、参加できる人がいないので”E&Gやまあるき部”とはいっても私個人のやまあるきになったわけですが、もともとビジネス展開しているわけでもないので悪天候以外の中止はありません。責任が私個人の範囲内なので少し冒険してみることもできます。今後へ向けての調査を兼ねたやまあるきという感じです。

 海外を旅するときはけっこう適当にしか計画や準備をしない私ですが、山では別人です。ちゃんと地図上で計画を立て、予定到着時間や限界到着時間、エスケープルート、エスケープする判断基準などを考えます。

 昭文社の”山と高原地図”では全行程6時間45分。私の狙いは6時間。正丸駅を8時半頃出発するので14時頃には芦ヶ久保へ到着できる時間。休憩時間を入れても16時までには下山できるでしょう。途中で何かあった時のためのプランBとしては、武川岳が判断の基準で、ここに昼頃までに到着できればその先へ進むけれど、午後になってしまったら武川岳から直接下山するというのが大まかなイメージです。

 もう寒くなったとはいえ、飯能で乗り換えることなく長瀞まで行ける西武池袋線の列車は登山客で混み合っています。私の下車駅、正丸でも結構な人数が下車します。グループで来ている登山者に紛れ込まないように下車してすぐに歩き始めます。山に入ると暑くなるので防寒のために着ているジャケットは脱いでおきたいのですが舗装路を歩いているうちはこのまま行く事にしました。

 正丸峠分岐から山道に入ります。伊豆ヶ岳へ向かう人のルートと分岐して名栗へ向かうところで体も十分温まったのでジャケットを脱いで長袖Tシャツ1枚になりました。

 ”重ね着”もいろいろな考え方があるのだと思いますが、私は基本的にはベースレイヤー1枚で歩きます。今の時期だとさすがに半袖は寒いので長袖を着ますが、行動中は”暑い”と感じる事が多いのと汗冷えが不快なので裏起毛の温かいものではなくて速乾性のTシャツです。休憩の時に寒いと思ったらレインウェア兼用のシェルジャケットを羽織ります。もっと寒いと思ったときに着用できるようにバックパックの中にはダウンのパーカーを1枚入れています。
 
 つまり、重ねて着る”重ね着”ではなくて、いつでも重ねて着れるように用意している”重ね着”です。

 よく整備された登山道を名栗へ向かっていくと峠を越えたあたりで何か音楽が聞こえてきました。”街宣車?”と思いましたが移動する気配はありません。先へ進むにつれて音楽はどんどん近づいてきてやがて私が目指している名栗元気プラザから聞こえてくることがわかりました。大音響の音楽は道迷い防止の役割でも担っているのでしょうか。

 舗装路に出たところで他のルートから来た登山グループと出会いました。自分は地図を見ながらルートを探しているのに対して落ち着き払って進んでいく彼らを見ると、ついて行きたくなるのですが、自分と違うルートの事も多いので地図を信じて我慢...案の定ルートは違ったようで元気プラザの駐車場横から山へ入るルートを選んだのは私だけでした。

 展望台までは元気プラザを利用している方々が歩くのか道は判りやすく、身軽な服装で下山してくる人数人ともすれ違いましたが、その先は地図に”荒廃ぎみ”と書かれているのが頷ける判りずらい道になりました。


 広葉樹の山なので落ち葉で踏み跡が消えていて更に判りずらく、地図を何度もチェックして、少し開けたところに出るたびにコンパスで進んでいる方位が地図と辻褄があっているか何度も確認し、木々に巻かれているコースマーカーも慎重にチェックしながら進みます。



 足元もあまりよくなくて落ち葉の下に隠れた浮石で足元をすくわれそうにもなります。奥武蔵の他の山と同様、稜線に出るまでは傾斜もきつく、展望も開けません。
 
 それでも武川岳には11時過ぎに到着。イメージより少し早めに動けているのでバックパックから行動食を取り出してカロリーバーとドライフルーツを食べながら少し休憩を取りました。今回はコンデンスミルクとトレールミックスを非常食にすることにして、他の食料は全てベルトのポーチへ。

 少し眺望が効くここから眺めるとどちらを向いても山、山、山で、山深い場所に居る事を実感します。

 ここまで順調に来たのですが、二子山方面へ向かう稜線を歩き始めた時に自分の脚がいつの間にか消耗しきっている事に気が付きました。今年は8月の長雨のおかげでランニングも全然できず完全に体力不足になっているようです。

 このまま下山へ向けて山中を進めるか不安がよぎりますがどうやっても自分の脚で進むしかないのが山歩き。意識的にペースを落として、それでも一歩一歩進むしかありません。上り坂では何度も足を止めないと進めない状況です。先へ進むと状況は悪化して、下りでも踏ん張りがきかなくなってきました。
 
 ポーチから取り出した行動食を口にしたり、水を飲んだりしながら、頻繁に脚を休めながら先へ進むとやがて4月にも訪れた二子山雄岳の登りが見えてきました。一度来たことがある場所へ着くと、なんとなく安心です。もはや下りでも思うように動かなくなった脚を引きずりながら、それでも14時前には芦ヶ久保駅へ到着しました。急いで切符を購入している私の目の前へ飯能行の列車がホームに入ってきたのですが、走って乗車する余裕は今日の私にはありませんでした。

 もう非常食は必要ないのでトレールミックスを口に放り込みながら駅のベンチで次の列車を待ったのでした。

 このルート、あまり眺望が開けないという奥武蔵の山々に共通する難点はありますが変化に富んだルートは飽きずに楽しめます。距離と所要時間は日帰りにもちょうど良いのではないかと思います。次回は皆さんも一緒にいかがでしょうか。


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