春の風物詩。7つのチェックポイント(石砂山 ー前編ー) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。


さあ今年もやってまいりました。春恒例の石砂山です。
ツバメに迎えられ、藤野の駅を降りたのが7時15分。
ちなみに朝は5時に自宅(戸田)出発とかなり早かったのですが
かなり過酷な道中になることは予想していたので、前日早めに就寝し、
HPは十分に回復しました。体調は万全です。

さて、毎年1回必ず足を運ぶ石砂山。
至上目的はもちろんギフチョウを撮ることなのですが
「生きものめぐり」を掲げる本ブログとしては、
メイン種の撮影だけで終わらせるのはあまりに勿体無いことです。
石砂山の自然を満喫し、楽しみつつ理解を深めるためには
他の生きものや山野草、そして「食」などもっと包括的に捉えたいもの。

そういうわけで、私は今回以下の7つ
クリアしなくてはいけない必須項目として掲げました。


1.石砂山の山頂に登る
2.ギフチョウを撮影する
3.ミヤマセセリ、ヒオドシチョウ、テングチョウ、ビロードツリアブを撮影する
4.山野草3種(フデリンドウ、シュンラン、ヒトリシズカ)を撮影する
5.「森のはちみつ」を食す
6.「藤野芸術の家」で昼食を食す
7.カタクリ群生地でカタクリとイカリソウを撮影する



このうち、時間と体力さえあればどうとでもなる1や
休業日でなければ問題ない5と6は容易にクリア可能。
至上目的の2に関しては、山頂まで行けばこの時期いないということは
まずありえないので、4種コンプを要求される3よりは容易いでしょう。
残る山野草関連の4と7に関しては、動かない分3より容易な面もありますが
ネックとなるのが花期。近年の不安定な気候ゆえに花が終わっていたり
あるいはまだ咲いてなかったり、最悪消えている(枯死・盗掘など)場合もあるので
実はかなり運に左右される項目だったりします。

まあしかし、いずれも最低限コンプできると踏んで設定したものであり
「サシバを鮮明に撮る」「クマと遭遇する」みたいな無理難題ではないので(汗)
達成難易度は然程高くはありません。気楽に構えて臨みました。

同時にこの7項目は、本ブログを見て石砂山に行こうと思われた読者様に
ぜひ「これだけはやってもらいたい」と思うステップでもあります。
これらを達成できれば、春の石砂山の魅力は9割方堪能できたと言っていいでしょう。






さて、藤野駅から山方面に向かうバスは8時発。
45分ボーッと待つのは時間がもったいなかったので、
先にカタクリ群生地を撮ってしまうことにしました。

駅からすぐのトンネルをくぐり、陣馬山方面に向かえばすぐに到着します。
ちなみにこのトンネル、結構長いので日が暮れると通るのがちと怖いです(汗)








件のカタクリですが、ピークこそ過ぎていたものの
まだこの時はそこそこ咲いていました。
この花、山下公園や植物園なんかにある園芸種と比べれば当然地味ですが
山野草界隈ではダントツ目立つヤマユリあたりに次いで花が大きく、
人気が高いのも頷けます。それが群落を作るのですから、ピーク時は圧巻です。








セットでイカリソウも健在。
こちらは株自体は大きいものの、花が小さいので
パッと見ではなかなか気づかないかもしれません。
(加えてここ自体は立入禁止なので、生育地の外からズームで撮らないといけません)

ともあれ、これでまず項目の7番は達成です。






カタクリの近くに来ていたテングチョウ
飛べばすぐに気づきますが、翅を閉じてジッとしていたら見つけるのは困難。






8時になったので、バスでやまなみ温泉へ。
そこから石砂山登山口までは徒歩で移動します。

なお、ポケモンは藤野駅前にはかなり集中して現れます。
ポケストップもそこそこありますが、やまなみ温泉より奥では
まず何も引っかかりませんし、ストップもありません。
いやそれ以前に、スマホの電波が届かないのでプレイすらできませんでした(汗)
……秩父の浦山ですら、道が表示されないだけでちゃんと動かせたのに……






やまなみ温泉から歩いている途中です。サクラがちょうど見頃でしたね。
平地よりも若干花期が後ろ倒しになっているようです。






道中、あちこちにスミレが見られます。
これは山を登り始めても同じで、定番のタチツボスミレ以外にも
平地では見かけない品種がたっぷりと見られます。
(でも多分高尾山のほうが数・種類ともに上です)






一瞬でしたが、上空にノスリが現れました。
相当高い位置でしたし、咄嗟だったので写りは残念なことに……。
とは言え、昨年に次いで猛禽が見られたのは収穫です。

こういう出会いがあるから、乗り合いバスの予約をせずに
わざわざ歩いている……というのはありますね。
(予約が面倒くさい&交通費をケチりたいというのもありますが)






登山口近くの民家の前で、アスファルトの隙間から生えていたミヤマオダマキ
花の形状はスミレに似ていますが、大きさはこちらのほうがはるかに上です。
園芸用に植えていたものが野生化したのか、それとも山奥から種が運ばれてきて
ここに根付いたのか……。いずれにしても確実に1つ言えるのは
根性のある花だなということですね。

ちなみにクリスマスローズもまれにこういう所から生えることがあります。






さてさて、登山口から石砂山に入りました。
入ってすぐの所は高木が多く、林床にあまり日が当たりません。
開けた山頂付近と比べるとやや不気味な印象すらあります。








入山してすぐの山道ではスミレとテンナンショウくらいしか見られませんが
日当たりのよくなる中腹以降では、フデリンドウ(ハルリンドウかも?)を始め
他の山野草も見られるようになってきます。

特にフデリンドウはなかなか数が多く、ある意味ここの代表種ですが
如何せん花が小さいので、注意して探しても見つかりにくかったり、
場合によっては踏んづけてしまう可能性もありますので要注意でっす。








フデリンドウキランソウ(左上)。
キランソウはオオイヌノフグリなんかよりやや小さいくらいで
雑草あつかいされてしまうこともしばしば。
そんなキランソウと比べても、フデリンドウのサイズは大差なく、
これでは登山客に気づかれないのも無理はありません……。






これはマダツボミ。
サクラ(ソメイヨシノ)と同じで、今年は若干花期が遅れているのかも?
昨年は今回より1週間前倒しで登りましたが
すでに殆どの株が満開状態でしたからね。






やや成長した株。こういう形状のものは初めて見た気がします。
これでもなおスミレより株が小さいんですよね……。








山道を歩きます。道中、カメラを持った人とよくすれ違いました。
上みたいな細い道だとさすがにすれ違うのはしんどいですけどね(汗)。

この山、高尾山なんかと比べて整備された道はほとんどないですし
道幅が狭いのはもちろん、ご覧のように両サイドが急な崖になっている所も多く
足元にはくれぐれも注意が必要です。リンドウを踏まないためにもね(汗)。








おっと、ミヤマセセリが地表に降りてきました。
前翅に、後翅に黄色の紋が入り、
セセリチョウの中でも特筆すべきオサレな種ですね。
メタリック色のアオバセセリとはまた違う魅力があります。
(大きさはアオバの方がやや上(アオバは日本のセセリチョウでは最大種))








日なたに現れたニホンカナヘビ。去年もここで撮影しましたね。
同じルートを通っているので当たり前といえばそうなのですが
基本見られる生きものは同じです。
でも、そういう「変わらない」ということが大事なのです、ハイ。






ヒトリシズカ……なのですが、やはり1人(1株)ということはありません。
この植物は大抵群生しますし、石砂山では中腹~山頂でよく見られます。






ビロードツリアブも出てきました。ホバリングを得意とする昆虫ですが
基本日中は飛びっぱなしのオオスカシバやホシホウジャクなんかと違い
待っているとこうして落ち葉で休憩してくれたりします。

なお、小さい羽でこの太った丸い体を浮かせる必要がある以上
飛ぶ時には相当早く翅を動かす必要があります。
それゆえに近くを飛ぶと羽音がハッキリと聞こえてくるばかりでなく
地表近くを飛べば、細かな落ち葉の欠片やチリなどを吹き飛ばすことも可能!
小さな昆虫ではありますが、結構侮れないパワーを秘めています。








そして、今年も登頂する直前にギフチョウを撮ることができました。
ちょっと角度はよろしくないですが、まあまあの写りです。
ここで無理して回り込もうとするとビビッて逃げられてしまいますので
遭遇した時は「待ち」に徹するか、
でなければ音を立てないよう細心の注意を払う必要があります。

至上目的であった項目2もこれで無事達成!
しかし、もう少し鮮明かつ色々なシーンが撮れる可能性もあるので
そのまま山頂に向かいました。(ここまで来て引き返す人もいないでしょうが)








山頂手前の階段。ぶっちゃけここが一番しんどいです。足に来ます(汗)。
あと少しです。登頂後の記録は後編にてお送りいたします。


<後編に続く>