岩手県岩泉町町長のセクハラ疑惑にみる一般のセクハラ事件との相違 | ★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
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 岩手の岩泉町の町長のセクハラニュースが連日流れています。自治体の長や政府関係者のセクハラ騒ぎは、マスコミの話題性もあり、視聴率アップにもつながるとの目論見からマスコミも取り上げるものです。また、政治家というだけで、そのスキャンダルは格好の材料なのでしょう。

まず、岩手日報の言い分もありますのでそのまま記載します。読んでみましょう。見出しから載せます。
 
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 74歳町長、記者にセクハラ 宿泊先訪ねて抱きつきキス 岩手

 

  進退については「辞職も含めて考えていく」とし「町は昨年の台風10号からの復興途中で、(進退について)関係者と協議している」と述べた。


 伊達町長は1999年に初当選。岩泉町は昨年8月の台風10号の豪雨で、関連死を含め23人が犠牲になった。災害復旧・復興業務が続く中、伊達町長は今年2月に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受け、8月末ごろから幻覚や幻聴に悩まされていたという。記者の部屋に入った後の10月30日から12月4日まで休職し、5日に復帰したばかりだった。

 これに対し、伊達町長は会見で「わいせつ目的で会いに行ったのではない」と強調。自宅で起床して顔を洗おうとした際「助けて」という声が聞こえたと感じ、ホテルに駆け付けた。無事だと分かって思わず抱きしめ、われに返ったという。「幻聴、幻覚で飛び込んでいった。病とはいえ社会通念上、許される行為ではない。迷惑行為に対し心から謝罪する」と述べた。キスをしたとの指摘に関しては「記憶にない」と明言を避けた。

 同社によると、伊達町長は10月中旬の早朝、取材目的で泊まっていた町内の記者の宿泊先を訪ね、何度も部屋のドアをノック。記者が開けると部屋に入り、抱きついて複数回キスをしたという。記者はショックを受けて休職しており、刑事告訴を含めて検討中。同社の松本利巧総務局長は「一部事実と異なる文書が出回り、臆測も出始めたことから報道に踏み切った。謝罪と誠実な対応を求めていく」と話した。

 岩手日報社は6日、同社の女性記者が岩手県岩泉町の伊達勝身町長(74)からわいせつ行為を受けたとして、厳重抗議したと同日付の紙面で報じた。伊達町長は同日会見し、記者に抱きついたことを認めながらも、わいせつ目的を否定した。

 

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 小職は社労士ですので、なにも自治体の長のスキャンダルをとりあげて、なにかしたいというものではありません。疑問はそこではないのです。

 

一般に、企業と労働者の関係において、労働者がセクハラを受けたと声を上げると、企業側は、「証拠がないから」「加害者とされる者が否定しているので確認のしようがない」「あまり騒ぐと勤務できなくなるよ」などの対応をするケースが散見されます。

 

もちろん、企業側のこうした対応には問題があります。労務や雇用関係の世界では、証拠ありきではなく、被害者の状況を確認し、調査、今後の対策など適切な対応を求められてしかるべきだからです。法的には、均等法11条のあてはめにより違法性の可能性も出てきますからなおさらです。

 

政治家においては、均等法の問題は除くとしまして、一般的なこの景色が一変して、被害者が声をあげると全面的に加害行為者が悪者にされ、避難を浴びることになります。マスコミの取材からは、「証拠云々」という言葉は全く出てきません。報道になった内容をみる限りでは、被害者女性から証拠について主張するコメントもみえてきません。

 

企業と労働者の間の問題ですと、弁護士が登場し、どうせ画像など証拠などないから否定すればいいという策になるところですが、政治家相手だと証拠なんか関係ないような景色になるのは毎回毎回、とても同じセクハラ問題とは思えないと感じます。

 

声を上げたもの勝ちとなれば、一般の企業の世界でも大変なことになります。しかし、民間企業の領域ではそうはいきません。企業も職場環境の中でセクハラが起きたことを否定する態度をとり、加害行為者も全面否定の態度をとりますので、セクハラを認めることはまずありません。

 

メールでセクハラ行為に及んだ損害賠償請求の事案に対応したことがありますが、メールの内容を送信したことを認めても、「送信した内容はセクハラ目的ではない」などと、今回の町長と同様のような主張をし、あげくの果てに、「そんなに後でいうくらいいやだったのであれば、抵抗したりすればよかったのに」という始末です。

 

こうしたことが現実である以上、加害者、加害者の属する組織、被害者、それぞれの主張などをじっくり聞いて、加害者とされ得る人物がセクハラをやったと報道すべきではないかと思います。まだ、セクハラ行為が事実であったと確定してはいませんし、証拠の話もでていないわけですから・・・。今回の町長を擁護するわけではありませんが、客観的にそう取り扱うべきかと思います。

 

もっとも、火のないところに煙はたたない式に考えれば、町長になんらかの問題行為があったことを否定しにくいところではあります。幻覚云々のコメントはにわかに信用しにくいとうのが世間一般かもしれません。だからといって、現段階でセクハラ行為をしたと断定することも早計のように思います。

 

今回の町長のセクハラ疑惑の報道を受けて、労働者の方は、声を上げたもの勝ちと単純に考えるべきではありませんし、企業の方も公になったらまずいと一概に言えるものではないと考えるべきです。ただ、企業のダメージは真実がどうかではなく、公に広まることでセクハラが起きる企業との評価になることが最大の損失になることです。

 

労働問題になりますと、企業があくまでも保身の姿勢で事実を否定する態度をとるのは、この辺を重視してかと考えます。しかし、否定する態度をとるのみでは、認めなければいいという印象しか伝わらず、問題が終結することが遅くなりますし、労働者がよりエキサイトする原因にもなります。やはり、適切な対応をいついかように行ったかに焦点した思考を持つことも肝要かと考えます。

 

ちなみに、少し前に書きましたセクハラに関するコラム記事で、セクハラの法的問題などを簡単に整理していますので、今回併せて掲載し、かつ、リンクしておきます。参考にしていただければと思います。

 

 ☛ セクハラの法的問題と防止対策