「紹介してくれませんか?」のワナ | ミュージックバンカー公式ブログ★アーティスト/声優/タレントの活動に役立つ評判の育成メモ

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ミュージックバンカーの代表、水谷智明の社長ブログ。業界歴20年なりに集積してきたアーティスト/声優/タレントのマネジメント論を公開。株式会社ミュージックバンカーの考え方や価値観をつづるコラムです。

■ 意外と難しい顔つなぎ

「○○さんと知り合いなんですか!紹介してくれませんか?」

「水谷さんのコネで、○○さん、安くやってくれませんかね?」
「○○さん、俺のライブに来てくれませんかね?せめてデモだけでも渡してくれませんか?」

昔からこういうシーンは多々直面してきましたが、その実現はなかなか難しいものです。


その○○さんをAさんとしましょう。
【Aさん】は、例えば有名ミュージシャンや、キャスティング権のあるディレクターだったりしましょう。
【Bさん】が、紹介を望む人、例えば弊社所属タレントだったりしましょう。
そして、AさんとBさんの両方を知っている【私】がいるとする。

 

私とAさんが毎月のように飲みに行く仲であっても、Bさんの事をAさんに容易く顔つなぎすることは躊躇します。
なぜなら、人を人に紹介する、という行為は大きなリスクがあるから。
「別に減るもんじゃあるまいし」と思ってませんか?違うんです。
下手に紹介すると、少なくとも私は一番失ってはならないものを失う可能性があります。
それは、信頼度です。

 

例えば、私がBさんのことを「心から人にオススメできない」のに、曲げてAさんに紹介する席を設けたとしましょう。
私が言えるのは、「こちらはBです。こちらはAさんです。あとはどうぞよろしくお願いします」
これだけです。そこから何が生まれるのでしょうか?
Aさんからしてみれば、「ああ、はい、そうですか(めんどくさいな・・)」ですよね。
そんな空気の中、Bが張り切ってAさんにプレゼンテーションやら、お願い事なんて始めてしまったら、もう最悪です。
「機会があれば、是非」…と濁されて、終わり。


更には後日、私の手が離れてしまったところで、BさんがAさんに失礼を働いてしまったことが発覚した日にはどうしましょう…
Bさんに対するAさんのネガティブな印象は、当然紹介者の私に向いてしまいます。「水谷から誰か紹介したい、と言われたら注意だな」と。

これを「顔を潰された」と表現します。
すると、それ以降、私はAさんに誰も繋げられなくなってしまうのです。

 

「ライブ見に来てほしいです!」これも安易に協力できません。
私の中でBさんの売りポイントも狙いも定まってないのに、レコード会社のお偉いさん(Aさん)を連れて行ったとして、どうなるでしょうか?
例え「彼、良いね」とコメントが出たとしても、ただそれだけです。
続く言葉は「頑張ってください」…以上。

 

もし私がAさんの立場で、誰かからBさんに相当する人を紹介受けるなら、会う目的や議題をあらかじめ確認します。
そこが曖昧なら、基本的には会いません。時間がもったいないからです。
(・・・と言っても、その「誰か」と私との間にも人間関係があるので、頑なに会わない、というわけではありませんが)


■ どんなケースなら繋げられるのか?

例えば、私とAさんがプロジェクトの話をしていたとしましょう。
「水谷君、こんな人いない?」→ 「いますよ!うちにBというのが。会ってみます?」→ 「是非!」
・・であれば、紹介できます。つまりAさんから求めてきた場合のみ、実りあるマッチングができるのです。
これが「売り込み」です。決して「ニーズのないところ」に捻じ込むのが「売り込み」ではないことを知ってください。
それを無理やり行ってしまうと、私(事務所)とAさんの間に亀裂が入ります。
よく「私を売り込んでほしい」と言ってミュージックバンカーの門を叩いてくる人がいますが、例え事務所に入ったところで、ニーズやマーケットが無いなら売り込みようがないのです。

 

また、こんなケースはアリでしょう。
Bさんは可愛がっている私の後輩。よく慕って付いてきてくれるし、TPOもあり、オモロイ奴。
たまたまAさんと飲みに行く機会になったので、私は「Bも連れて行って良いか?」と聞いたら快諾。
期待通りBさんのおかげで盛り上がり、Aさんも喜んでくれた。
こんな関係作りが先にあるなら、Bさんの「来月のライブ」にも、Aさんは足を運んでくれるかもしれません。
チャンスって、こんな流れから生まれてくることも多いのです。
そもそも、私とBさんとの関係が大して深くないものであったとしたら、飲みに連れていくこともないでしょうねw


■ 紹介できるポイント

私がBさんをAさんに紹介できるかどうかは、「私とAさんのコネクション度」では無く、「私のBさんに対する信頼度」なわけです。
もう一つ重要なのは、「AさんのBさんに対するニーズ」です。


言い換えると所属タレントBさんが、例えば私経由でチャンスを得るためには、下記二つのポイントを押さえる必要があります。

【1】 私からの信頼を、普段から貯蓄信頼貯蓄についてはコチラを参照
【2】 脈絡のない売り込みではなく、先にAさんのニーズを生み出すこと

 

Aさんのニーズを先に生み出す・・なんとも難しいことですね。
でも、少なくとも【1】さえあれば、【2】は一緒に考えていこう、となるかもしれません。

 

まず、私がBさんを推していなければ、そもそもアウトですよね。
逆に推しているBさんであれば、堂々とAさんに繋げたいと思うし、仮にAさんの反応が鈍くても後悔しないでしょう。

 

特にこういう業界では、「人が人をフックアップして」初めてチャンスを得られるわけです。
どんなに技術があろうが、「コイツをフックアップしたい」と相手に心から思わせなければ、道は拓けない。
そう思わせる確証がなければ、BさんにAさんを引き合わすことは出来ません。
人が人を紹介するのって、ホント難しいんですよね。

 


あと最後に付け加えておきます。
「私は○○と繋がってる」とか「○○は私の友達の友達」とか「私は○○に顔が利く」といった、二言目には「知り合い自慢」をする人を私は信用しません。
話題の中の多少のことであれば、「そんなんだ、すごいねぇ」と素直に思いますが、会話すると直ぐそうなる人いますよね?
嫌いです。


ミュージックバンカー代表取締役 水谷智明