病気を告知された時の気持ち | ぶーぶーとダディ


「ダディが中皮腫を告知された時、ママは泣いたの?どんな気持ちだったの?いっぱい泣いた?」


ぶーぶーは一歳半の時だったので、覚えているはずもなく、唐突にこんな質問が飛んできました。


ママもパパも泣いたよ。ものすごく泣いた。風邪にかかったり、他の治る病気に罹るのと違うからね。物凄く辛かったよ。パパの辛さは想像もつかないぐらいすごかったと思うし、ママもすごく辛かった。「治せません」って言われたし、本当に怖い病気だから震え上がったよ。


「でも、どんな感じ?どれぐらい怖いの?」

想像はついていると思うんだけど、こんな風に食い下がるので、


例えば、お医者さんが、ぶーぶーのママは、ぶーぶーの8歳のお誕生日まで生きられないかもしれない。8歳になる前にママはいなくなるんだよって言われたらどんな気持ちになる?


ぶーぶーは下唇を突き出して目に涙をいっぱいためて「めちゃくちゃ悲しい。僕生きていけない。怖いよ、ママ。死なないで。パパみたいに死なないで。」と、私の首にしがみついて泣き出しました。ぶーぶーは、不安が強くて、カウンセリングに通っています。だから、こういう質問をする時は、何かを表出したい時だったりもします。だから、わざとオブラート包んだ言い方はしません。一通り泣いて、パパが守ってくれるから大丈夫だろうと励ましあって笑顔になりました。不安は溜め込まないで、口に出して、「怖い」とか「辛い」「悲しい」と言える方が楽だろうと思います。言えないとき、泣けない時の方がずっと苦しい気がします。24時間365日幸せでいてほしいとは思いません。でも、悲しい事や辛い事があっても、苦しみの中にあっても、ダディの様に、ユーモアを忘れずに、笑える人、幸せを忘れない人であってほしいとは思います。これまた、口で言うのが簡単なのですが。ダディはそういう人だったよといつも話しています。だから、時々、ぶーぶーも言います。「こんなときは笑えばいいってダディが言ってたでしょ。」


ダディは、こんなに頼りない私と、幼いぶーぶーを遺していくこと、ものすごく辛くて悲しかっただろうと思います。悲しすぎて、辛すぎて泣けないと話していたこともあります。心が麻痺してしまうぐらい怖いと。そういう時はただ眠りたいと眠っていた事もあります。


ぶーぶーを一人遺すことを考えるだけで、不安と恐怖に駆られます。病気を告知された時のダディの表情、声、一瞬で凍りついた部屋の空気、一生忘れられない、死を除いては、人生で最も辛い瞬間でした。遠くに微かに見え隠れしていた「死」という現実を、目の前にどーんと突き付けられた瞬間でした。どん底から立ち上がって、笑顔になるために流した涙の量は、多分それまでの人生で流した涙の量よりも多かったんじゃないかと思います。それにしても、ダディは強かった。涙も流したけど、笑顔とユーモアを最後まで忘れませんでした。手前味噌ですが、本当に素晴らしい勇気と優しさに溢れた人でした。わたしにはとても真似できません。忘れてしまわない様に、誇りに思えるように、ぶーぶーに、ちゃんと伝えてあげたいと思います。