36,人生の危機 | 緑高の楽屋

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「ごく普通の家庭」ってものがどんなものかは知らないが、ウチがそこから大きく外れてるってことだけはわかる。最近になってわかったことだけど、ウチのATM、半端ない。


父親の記憶はほとんどない。母曰く「そりゃそうよ。会ったことないもん。」。
父親がどんな人なのかも知らない。「そりゃそうよ。言わない約束だもん。」
そこは教えといてほしいな。慰謝料にしろ、養育費にしろ、自分の生活に関わる金の出所がわかんないと不安だ。いつまでどれくらいあるもんなのか。
よくよく考えてみりゃ、私立高校→一年浪人(予備校通い)→私立大学ってけっこう金かかるルートだよな。しかも予備校の頃から一人暮らし。十分家から通える距離だったのに、簡単にOKが出た。

どんな金持ちがどんないきさつで母さんと出会ってオレを製造したのか知らないけど……。怖え。規模がでかいと逆に怖えわ。金の話って。
そもそも何だよ「言わない約束」って。世間体?それとも本妻?的な?何でもいいけど、オレに何かふっかかって来たりとかしないだろうな。遺産相続とかなんとかで邪魔になって……とか。それは困る。別に遺産とかいらな……あ、でももうしばらくは生活費流してほしい。

今までそんなの考えたことなかった。それで正解だったんだと思う。考えたってオレにどうなるもんでもないし、どうせめんどくさいもんなんだろうし。おかしいと言われても、どうこうできる話でもないし。
自分がゆがんでるとか冷めてるとか言われても、…………そうなのか?まあ、これもどうにかしろと言われてもなあ……


「この間斎藤が言ってたぞ。」
「さな先輩?」
久しぶりに聞いたな、その名前。
「あんな男とは別れてしまえ、って。」

「天川に。」
「ハアアアアアアアア????!!!!!!!」
「オレもそう思う。」
ええええええええ……………


別れろって……
何つーこと言うんだ、あの人。
「あやうく天川も同意するとこだったぞ。」
「えっ……」
「あ、同意してたか。」
「は?」
「全力で。」
「何で!!」

だいたい何でさな先輩が…………
「さな先輩と会ったんですか?」
「おお。」
「……水城も?」
「この間ウチで三人で飯食ってな。」
「何でそんなことするんですか!」
「オマエも来たかった?」
そりゃ水城がいたんなら……そういうことじゃない!
「なんで水城とさな先輩を引き合わせたりするんですか。」
「何か不都合でも?」
「…………。」


さすがにもう関係ないか。……ないよな?
もう何年も前のことだし。高一の頃の話だし。
そもそもつきあう前のことだし。