60年代末のアメリカン・ニュー・シネマの代表作と言えば『イージー☆ライダー』。ピーター・フォンだとデニス・ホッパーがバイクに乗ってアメリカを旅するロードムーヴィーでありながら、ロックやヒッピーのカウンターカルチャーとアメリカ保守層との対立構造を描いた社会派映画であった。『イージー☆ライダー』に先立って全米でバイク映画が多数製作されていた。ベトナム戦争への反戦運動、学園紛争、反社会的な青春の暴走に触発され、若者の反抗を描くニュー・シネマ運動はバイクの排気音に似たファズギターが鳴り響くノイジーなサウンドトラックに彩られた。
低予算のガキ向け映画だから、サントラも制作費は極端に抑えられた。ギャラの少ないセッション仕事に駆り出されたのは地元のティーンガレージバンドが多かったが、その手のプロと呼べるミュージシャンがいた。ギタリストのデイヴィ・アラン率いるジ・アローズであった。
ベンチャーズでお馴染みのモズライト製ダブルネックギターを新規開発されたファズやトレモロやWOWOWにつなぎ、ガレージロックとサイケとラウンジミュージックを行き来するアローズのサウンドは、モーターサイクル(オートバイ)に引っ掛けて「サイクルデリック」サウンドと呼ばれた。暴力とセックスの刺激を求めてバイク映画を観に来たティーンエイジャーは、否応無しにファズギターを聴かされ、フラストレーションの解消に効果があると暗示にかけられた。ジミ・ヘンドリックスの機関銃のようなファズは」、バイク映画にヒントを得たものかもしれない。
ジ・アロウズ『サイクルデリック・サウンド・オブ・デイヴィ・アラン&ジ・アローズ』
The Arrows『The Cycle-Delic Sounds of Davie Allan & The Arrows』(Tower – DT 5094)1968
¥100/1985.5.13/東大本郷生協
60年代半ばから数々の映画のサントラ用に楽曲を提供して来たアローズの集大成。『ワイルド・エンジェルズ』『デヴィルズ・エンジェル』『ボーン・ルーザー』など彼らが参加した映画用音源を中心に、新録音も含めて構成されたベスト・オブ・アローズ的アルバム。A-1「サイクルデリック」のサウンドエフェクト満載のギタープレイは、バイク事故で死んだ魂が天国へ向かって跳んで行くときに聴こえる音に違いない。
Davie Allan & The Arrows - Cycle Delic
暴走し
妄想したら
闘争だ