A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

《不失者はここから始まった》灰野敬二+白石民夫/GAIAMAMOO/エレファントノイズカシマシ/姫乃たま@六本木SuperDeluxe 2018.7.6 (fri)

2018年07月09日 01時03分11秒 | 灰野敬二さんのこと


SuperDeluxe presents
不失者はここから始まった

開場 19:30 / 開演 19:30
料金 予約3000円 / 当日3300 (ドリンク別)

出演:
灰野敬二 × 白石民夫
GAIAMAMOO
エレファントノイズカシマシ
DJ:姫乃たま

1978年12月発行の吉祥寺マイナーのフリーペーパー「AMALGAM Vol.2」に「不失者始動」として灰野敬二による宣言文が掲載されている。

「不失者デビュー!」(AMALGAM Vol.2 発行日1978/12/01より)
「煮えたぎった私ョの血ヘドがテメエラの心をべとつかせる。罠にかかった私ョの息の意志の行方が全ての悪夢のすき間に忍び込み,犯罪の種をまき散し,宇宙の素粒子どもを震えおののかせてやるぜ。我が物顔した善意を私ョの気合いでバラバラにしてキリストの脳髄の中にでも封じ込めてやる それとも奴の顔を銀糸で切りさいて痙攣しているケツの穴の底に埋め込んでやろうか。閉じ込められた奇跡の排出物にそっと触わり,テメエラの動脈に私ョのサインをなぞってやる。そしたらテメエラにも さらす 事が宇宙のうぶ声だと気がつくはずだ。 私ョのえぐりとった浄化作用に情念の化身が逆立つ。」


インタビューで灰野は、この宣言文を書いたとき「メンバーが居たかどうかは微妙」と述べているが、『捧げる 灰野敬二の世界』(河出書房新社)によると1978年11月5日に早稲田大学のイベント「Free Music Company 汎」に白石民夫・灰野敬二デュオ名義で出演しており、これが事実上の不失者始動だったと思われる。先述のインタビューでは、それ以前から灰野の意識の中に「不失者」があったとされるが、具体的な形で世に出た、つまり「不失者デビュー」は1978年秋として間違いないだろう。
灰野敬二:デビュー・アルバム『わたしだけ?』を語る(JazzTokyoインタビュー)

白石民夫にとっては、サラリーマン生活に飽き足らずパフォーマーとして表現活動を始めた78年に、灰野と一緒に「音を使ったケンカ」のような練習をしていたことが、その後の演奏姿勢に影響をもたらした。つまり両者にとって「不失者始動」が大きなターニングポイントになったことは事実である。

それ以来灰野と白石はユニットを組むことはなかったが、何度も共演している。1990年のビデオ『PURE MUSIC TAMIO』に法政大学学生会館での共演ライヴ映像が収められている。直近では2013年4月ニューヨークのIssue ProjectでFushitsusha名義で共演した。

Pure Music Tamio - Tamio Shiraishi, Keiji Haino



Fushitsusha (Keiji Haino & Tamio Shiraishi) @ Issue Project Room 4-18-13 1/2


昨年ニューヨークを訪れ白石と共演したGAIAMAMOOの尽力で、不失者デビューから40年後の今年、灰野と白石の5年ぶりの共演ライヴが企画され、灰野自身により「不失者はここから始まった」と名付けられたことは、地下音楽の歴史の刷新であると同時に、表現行為の世代を超えた輪廻転生と言えるだろう。西日本を大雨が襲った梅雨空の週末に、奇跡の一夜を体験しようと集まった満員の観客の期待が開演前から渦巻いていた。

● 姫乃たま


地下アイドル/ライター姫乃たまはアイドル活動のみならず、T.美川(インキャパシタンツ)とコラボしたり、ケロッピー前田のオキュパイスクールでアート制作をしたりとアクロス・ザ・ボーダーな活動をしている。開演前/転換/終演後のDJはジャズ/モンド/エレクトロ/ノイズ/フレンチと幅広い音楽スタイルを披露。地下音楽に特化しないヴァラエティ豊かなスタンスは、アイドルらしいキュートさと共に、得てしてダウナーになりがちな前衛音楽イベントに華やかな色彩を加えた。


●エレファントノイズカシマシ


最近ではドッツ東京のイベントで観たノイズ+メタルパーカッションの不定型音楽グループ。バンド名から想像されるギャグ的要素はほぼ皆無。真摯な演奏スタイルは今の若手には珍しいかもしれない。今回のヒーローは暴虐ファズギターをひたすら掻き鳴らし続けたギタリストだった。ブルーチアー/MC5/ストゥージズからソニック・ユース/ダイナソーJrを思わせるガレージロック感は灰野を意識したのだろうか。


●GAIAMAMOO(ガイアマムー)


2012年結成、Shogo HaraguchiとMehata Sentimental Legendによるエクスペリメンタルミュージックデュオ。以前それぞれソロで別のミュージシャンとのコラボを観たことはあるが、デュオとしては初めて。Haraguchiがベース、Mehataがエレクトロニクスの編成だが、演奏が始まると、楽器(音源)が何であろうと関係ない。「能夢」と題された万華鏡をモチーフにした映像と、所々和の要素が混じる電子雑音が視覚と聴覚から脳細胞を刺激する。音楽でも映像でもない、言わばアトラクションに似た総合アート・エンターテインメントであった。

●灰野敬二 × 白石民夫


機材やアンプ類が片付けられ何もないスペースに黒い衣装の灰野が現れ、上記の「不失者宣言」を読み上げる。深みのある声は宣言文の過激な表現を和らげることで、聴き手の心の奥に浸透させる効果がある。白いスーツの白石のサックスの軋みと、灰野が踊るように叩くパーカッションの躍動感が重なり合い、酩酊と覚醒が同時に訪れるようなパフォーマンスが展開される。どちらも音階や音色は極めてシンプルだが、感じる脈動や色彩は豊潤の実り。「はじまりに還りたい」とは灰野による『Born To Be Wild』の訳だが、<はじまり>とは単なる初期衝動の復活ではなく、月日の経過と共に堆積した進化の徴を確かめ合うことに他ならない。灰野と白石の40年間の表現活動の深化の証が凝縮された30分だった。

四十年
七夕前夜の
出会い哉


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