名曲喫茶 ウイーン
クラシック音楽が聴ける 札幌市中央区 狸小路7丁目の
名曲喫茶 ウイーン が、今月30日で閉店する。
58年間、店を守ってきた店主の 横山信幸さん (83)は
「 店を続けてという声に励まされここまで来たが、決心した 」
残り少なくなった店での時間を大好きな音色に包まれ過ごしている。
ステンドグラスの照明に照らされた店内は、ベルベット生地の椅子が整然と並び、
店の奥には マッキントッシュXRT290 の巨大スピーカーが、圧倒的な存在感を放つ。
杖を支えに店内をゆっくりと歩く横山さんは
「 元はクリーム色だったのに、生地がすり切れて下地が見えてしまって 」
と椅子を優しくなでた。
横山さんは子どものころ体が弱く、
ラジオから流れるクラシック音楽を聴くのが唯一の楽しみだった。
特に衝撃を受けたのは、ベートーベンの 交響曲 第5番 「 運命 」
「 昔の人がこんなにすごい曲を作ったなんて 」 と夢中になった。
大学時代を過ごした東京では、当時流行していた名曲喫茶に入り浸った。
卒業後は札幌に戻り、
父親が購入したビルの地下で 1959年に 「 ウイーン 」 を開いた。
少しずつ買い集めていたレコードが役に立った。
店内のレコード室で客のリクエストに応じて選曲しながら、曲の解説も行った。
61年発足の札幌交響楽団の団員や大学生、会社員らで店はにぎわい、
クリスマスには行列ができた。
ただ70年代になると娯楽が増え、客足が少しずつ遠のき始める。
開店30年を節目に店を閉めようとしたが、
「 青春の思い出の場所なのでやめないで 」 など、客からの強い要望を受けて考え直した。
また 2009年の 開店50周年には常連客が祝賀会を開いてくれた。
昨年、店内で転び腰を痛めた。
手術を受けたが思うように体が動かず、店に出られない日が増え、
ついに年内で店を閉めることにした。
しかし 決心したものの、寂しさは日々募る。
横山さんは
「 正直なところ、お客さんが1人もいなくなっても、ずっとこの店で音楽を聴いていたい 」
と話す。
最終日の今月30日は午後5時に閉店する。 そして 店で最後にかける曲はもう決めてある。
「 交響曲 第9番 」
愛するベートーベンの最後の交響曲だ。 (ネットより)
運命 = ベートーヴェン