親族一家がインフルエンザにかかり大変なようだったので、ただ一人発症しなかった2歳の子を我が家で預かっていました。


この子は家族が40℃の熱を出し、その中で過ごしていてもすこぶる元気という不思議な子です。体質までマイペースです。


私は家で仕事があったのですが、この子は問題なく預かる事ができます。全く手がかからない、むしろ手をかけると嫌がる「生まれた時から精神は自立している」タイプの子なのです。手をかけようとすると「自分流」が貫けなくなりますので癇癪を起こしたり泣き叫ぶことになるので、ちょっとしたコツさえあれば自分でどんどん、色んなことを身につけて行ってくれます。



精神が我流で自立しているからと言って身辺自立がよくできるわけではなく、器用でもありません。そこは乳幼児の器なので、一見「何もできなく」見えるのが特徴です。だから他の子どもよりも育てるのが難しいように思われがちですが、この子の特性にあったやり方をするとものすごく大人は楽ができますし、子どももストレスなくすくすく育ちます。


食事の例なのですが、こんな風にすると全く手間がかかりません。以下説明してみます。


この子はプレートにいろいろと載せて出すと


遊び食べ

食べ物をぐちゃぐちゃにする

気がそぞろになって立とうとする

食事に興味を示さず、食べない


ような傾向を見せます。ですので、この子のお母さんがするように、私も以下のようなご飯の出し方をします。すると、1人でイキイキと楽しく食べてくれます。


一皿一品だけを出す

一皿を食べ終わる頃に次を出す

食材に合ったカトラリーを都度用意する

量を少なめにする


例えば、前菜に枝豆を出しました。

枝豆5つのうち、1つはパカッと殻を開けておき、カラトリーは綺麗な宝石のようなピックを用意しました。そして目の前にこの皿だけだします。他のおかずはまだ出しません。


出した時に「これは枝豆です。こうして、からをパカッとわると豆が並んでるよ。このピックでこうして刺してぱくっと食べてね。」


私用に用意した枝豆で殻を割ったり、豆をピックでぽちっとさしたり、ぱくっと私の口に入れて食べて、を実演してみせると、あとは放っておいてもしばらくいじって、殻をわってみたり、刺すことに夢中になったりして結局食べてくれます。


注意点ですが、子どもに一度「どうぞ」と出したらその子の皿にはさわらないことです。

枝豆の実演も、子どもの豆を取ってやって見せては食べてくれないことが多いです。大人が触ったものは、大人のご飯で「自分のもの」とは思わない子が結構います。もしくは他人がいじったものを食べたくない子もいます。ですので、お手本をやって見せるには大人の皿にある食べ物を使います。


そして、子どもの口に「パクっと食べてみて」と入れたりしない事です。子どもが自閉で反応していないように見えるからといって、親のタイミングで親切で(勝手に)食べ物を口につっこまないことです。これをされた食材はしつこく覚えていて、「大嫌いな食べ物」になることもあります。


この「他人から親切に(強要)される行為」を嫌がる発達障害の子どもは一定数います。親の厚意や親切が大きなお世話になってしまう例はたくさんあります。親切に手を貸したい時は、子どもにとってそれは親切かおしつけ、もしくは強要になっていないか見極めが大事です。

精神的に自立している、というのはこういう意味です。

たとえあまり反応がわからないぼけっとした子に見えても、知能感覚といいますか、自分のテリトリー、自分のタイミング、自分でやる、という意思部分だけ「一人の人間、まるで大人」のように発達していることがあるので、子どもの感覚(意思)を無視して赤ん坊扱いしないことは子どもを伸ばす点で大事です。


放っておくといつまでも食べない、というのもありがちですが、大人が枝豆を食べてしまったら、「ほら、もうみんな大人は枝豆食べたよ。次のおかずを食べるから○○ちゃんも食べ終わりなさい。おかずの準備してくるね」と大人の食べ終わった枝豆の皿を片付けると、なんとなく食べ始めたりします。


それでも次のおかずを出すタイミングでも食べていない場合は、「つぎのおかずが来たので、これは下げます」と子どものテーブルからどけます。こうなると例え強要しても食べないことが多いです。ですのであっさりあきらめて、親の方のテーブルに移しておくと、「やっぱり気になる」と言う時は途中でよこせ、と意思表示して来たりしますので「今のタイミングではこれは食べたくないのだ」とでも考えておけばいいと思います。


魚の切り身も、ほぐすと食べてくれなくなる子がいます。口に入れてやっても、ちょっとは食べますが食がすすまない。魚は骨のない切り身をみりんしょうゆで味付けして焼いてあげると、甘くて香ばしくなるので食が進むようです。食感がまた大事で、パサパサ系が嫌いな子はどんなに高価な鯛であっても嫌だという感じです。


パサパサ系がきらいな子はカレイの切り身などをみりんしょうゆで焼くと、外側はこ香ばしく中はトロトロなので、あっという間に大人用の切り身一切れぐらいなら食べつくしてしまったりします。


三角食べをしないといけないのでは?と気になるかもしれませんが、自閉度が幼少期に高い子は、そもそも三角食べ以前に


「食べ物と1対1でじっくり向き合って味を知る、食べ物は美味しい」


という基本的な事を知るのに時間をかけたほうがいいです。一般の子のように、プレートに色々と食品を並べると見分けを付けるとか、味の違いをみわけるとか、そういう技能が自分ではつけられないのが乳幼児期の特徴なので、「食事はわけがわからない」「(いろんな食べ物の味が混ざって)まずい」と食そのものをネガティブに取り誤解してしまう事があります。

(注:幼少期は偏食家という子もいますのでそのケースはこの記事では除きます)


一つ一つと学んでいく才能は飛びぬけているのに、3つ4つをいっしょくたにされると全くできなくなる、というのは食においても言える事です。2歳の宇宙語しか話さない落ち着きのないように見える自閉の子が、イキイキとカレイの焼いたのを自分であっという間に食べてしまうなんて、世間では知られていないだろうと思います。


補足しますと、この時渡したカラトリーはままごとに使うようなプラスチックのナイフとステンレスのフォークです。ナイフは安全面も考えてプラスチックを用意しましたが、この子はフォークは必ずステンレスでないと口に入れません。プラスチックのフォークだと食事そのものをしないです。おそらく口に入れる感触がステンレスが一番よくて、プラスチックだとオエッとなるのだと思います。


大人もこの子に合わせて、カレイをナイフでぶちっと食べやすいサイズに切ってフォークで食べて見せました。不器用ですが、自分ぶった切ってはバクッと口に入れて美味しそうに食べてくれました。


その後にお味噌汁やご飯が続きます。

この子はお味噌汁とご飯はセットでほしい人です。ご飯はお椀に盛って出すと、自分でスプーンでご飯をのりの上にのせて、ぐちゃぐちゃながら小さいおにぎりにしてから、手で口に入れます。お味噌汁は途中で何回か飲みます。具は最後にスプーンですくって食べていました。


お味噌汁は両手ハンドル付きのコップに入れてあげています。味噌汁をお椀にいれると上手に飲めず癇癪で泣きます。大好きなので気がせくのもありますし、大事なお味噌汁をこぼさず全部飲みたい気持ちは

強いんじゃないかと思います。両手でしっかり握ってから、ずぞぞぞ~っと飲んでいます。温度は少し温かいぐらいで、ぬるいのは苦手です。


食事についてはこんな感じです。


あと、我が家のトイレが子供用に変身しています。この子を預かるときに、補助便座も預かりました。自宅と同じ仕様にしています。


使っているのはこの補助便座です。





我が家には和式、洋式両方のトイレがあるのですが、この子は親族では珍しく洋式派です。大人が一緒にトイレに入るとやらないので、一人でできるように梯子つきのこの補助便座がどうしても必要になります。


ただ、これを設置しただけではできません。もよおしても、おそらくトイレで一人もじもじして失敗します。入口から座るまでの段取りを、毎回覚えているわけではないので(トイレに入ると気がそぞろになるのもあり)指示のための手立てがいります。


ここで注意点なのですが、この指示のための手立てが人間だと、さっぱりサポートになりません。自分の閉じた自閉世界でおそらく今は自立していたいので、他人が関わると「邪魔された」となり、怒るか無視をしてトイレどころではなくなります。


ですので、立ち位置を床にシールを貼って「どこで何をするか」を決めています。この子が立って中に入れるぐらいの円形にフェルトシールを切って床に貼り、そこにわたしの下手なパンツの切り絵をこれもフェルトシールで作り重ねて貼っています。これでこの子は、トイレにはいったら自動的にこの位置に立ってパンツを脱ぐんですね。そしてパンツが脱げればスムーズにはしごをのぼって用を足します。


いつでも勝手にトイレに行けるように、トイレの戸は閉め切らずに少し開けてあります。補助便座は常時設置状態なので、洋式が好きな家族は自分がトイレを使う時はそれをはずして、また設置してから出てきます。つまりいつもこの洋式トイレはメインとして子供用になっています。


タイムリーなコメントをいただいたこともあり、自閉の世界にまだいる2歳の子の食事やトイレについて書いてみました。


このタイプの子は乳幼児期は本当に独特なのですが、この子だけのオリジナルな対応ができれば本当に大人は楽です。一人でどんどん伸びてくれます。成長して器用さが少しずつ上がってくると、お箸も使えるようになりますし、視野が外に向くようになると混乱が治まってきますので、5歳ぐらいでおかずを一気にテーブル上に出しても混乱せず普通に食べれるようになります。ですので、幼稚園のお弁当も一人でお箸で食べれるようになるのです。


こうしたじっくり方の「自分でやれる」方法の提供は、感覚過敏が激しい(意思がしっかりある)発達障害の子どもには向く支援方法です。親子で楽しくすごせる余裕も十分とれる支援法です。

参考になればいいなと思います。



<その他 補助ツール紹介>


私が使ったフェルトシールはこういうタイプです。百均ショップにも売っています。色々視覚支援をする時に使うのにいいツールです。




うちの一族で貸し借りが多い補助便座はこれです。

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