税制等政府による所得の再分配機能は一定効いている。ということは。。。 | 真の国益を実現するブログ

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グローバリゼーションや規制緩和の進展、公共事業削減等の緊縮財政が格差拡大の原因だと言われています。

実際にどの程度所得格差が拡大しているのかを厚生労働省がおおむね3年ごとに実施している「所得再分配調査」結果から見てみます。

直近は平成28年9月公表の平成26年所得再分配調査となります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000131775.html


世間一般で言われているように、世帯単位、世帯員単位ともに、所得の均等度を表すジニ係数(0に小さいほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きい)は、平成23年調査結果より増加しています(世帯単位で0.5536→0.5704)。掲載されている推移グラフは平成14年調査以降ですが、ずっと拡大傾向ですね。

<出典:「平成26年所得再分配調査報告書」>


一方、当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給付を加えたものである再分配所得に関しては、平成23年調査結果より若干減少しています(世帯単位で0.3791→0.3759)。平成14年と比べても、0.3812から0.3759へと減少しています。

まとめると、稼ぐ段階での所得格差は拡大してきていますが、税制や社会保障施策による再分配機能は強化されています。平成26年調査結果においては、再分配による改善度は過去最高の34.1%(前回比:+2.6ポイント)となっています。

ダニ・ロドリックが述べているように、グローバリゼーションが進展すればするほど、格差拡大を補うため大きな政府が必要とされる、ということでしょうか。

再分配機能が強化されているとは、意外に思われる方も多いかと思いますが、特に税制に関しては、ここ数年、富裕層の課税が強化されてきています。

①株式譲渡や配当所得に関する税率(所得税+住民税)
 平成15年からの軽減税率10%が平成26年1月に元の20%に戻されました。

②相続税・贈与税の最高税率
 平成27年1月に50%から55%に引き上げられました。同時に相続税の基礎控除が4割引き下げ。

③給与所得控除の上限設定
 平成25年1月から給与収入1,500万円超は上限245万円となり、平成28年1月には給与収入1,200万円超、230万円に引き下げ。平成29年1月には1,000万円超、220万円になりました。

④所得税の最高税率
 平成27年1月に40%から45%に引き上げられました。

⑤高額所得者の配偶者控除
 平成30年1月から合計所得1,000万円超世帯は非適用になります。

ただし、消費税に関しては、逆進性(低所得者ほど負担が増す)が強い税ですので、消費税増税はこれらとは逆の動きになります。とは言っても、先の消費税増税時においては、低所得者には臨時福祉給付金(一人当たり15,000円)が支給されています。

ともかくも、プライマリーバランス改善目標という厳しい予算制約に縛られている中で、政府は所得再分配機能を低下させることなく、よく踏ん張っている方だと思います。影響力は小さくなりましたが、税制に詳しい党税務調査会の議員や医師会等と繋がりが強い議員の力に因るところが大きいかと思います。

まあ、税制に関しては累進課税のさらなる強化、年金制度に関しては支給額のアップ等必要だと思いますが、先の再配分後のジニ係数の推移や税制の富裕層への強化から鑑みると、稼ぐ段階での格差拡大をより問題視すべきなのでしょう。
賃金抑制と株式配当増加による賃金労働者と金融資産保有者との格差、非正規と正規社員の賃金格差、単身高齢者や若年層の生活保護世帯増加等々。

つまるところ、安倍政権が進める国際戦略特区での労働規制等の自由化や高収入専門職の労働時間規制対象からの除外等の規制緩和、EPAやTPP等過激な自由貿易協定の締結等のグローバル化推進を特に非難すべきであり、税制や社会保障制度はそれなりには肯定してよいかと考えます。

筆者の個人的意見としては、所得再配分後のジニ係数が低下していることから、格差拡大による治安悪化や民主主義が機能不全となるというような懸念は、我が国に関しては、あまり当てはまらないように思います。


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