ソンギュ編第20話~指切り~ | K-POP恋愛小説(INFINITE/防弾少年団/etc...

K-POP恋愛小説(INFINITE/防弾少年団/etc...

amblo.jp/vanilla7creamより
引っ越しました。

今までINFINITE ONLYでしたが
これからは他のグループにも
挑戦致します★
暖かく見てくださると嬉しいです^^

Fantasy/恋愛/日常
短編集・・・など。



楽しくて・・・愉しくて。
いつの間にか時間が経っていた。

そろそろ帰ろうか・・・

そう思ってふと顔を上げると、人の気配もなく
周囲は寂しさに包まれていた。

~逢魔が時~

人がそう呼ぶ時間帯だった。

『鬼に捕まらないように早くお帰り?』
子供の頃にお婆ちゃんに言われたのを思い出した・・・

鬼?鬼ってなぁに?

大人になればそれが分かった。
分かったけど、普段はそれを忘れてるんだ・・・
当たり前にその時間はあっという間に過ぎるから。

みんな・・・みんな忘れてるんだ・・・
夕暮れの美しさや昼と夜の隙間に目も眩み、
瞬きをしている程の間に自分が今、
何処にいるかも分からなくなっているんだ。
次に目を開けば、辺りは闇に包まれているって事も・・・。

君の瞳が今、確かに俺を見てるかどうか・・・
それは君も同じで。



これは・・・幸せな二人とは
また別のお話・・・・



-----------------------------------------------------


それにしても、アッパがユカを連れて失踪したと
オンマから連絡が来てから、その後なんの連絡も
なかったせいで、私やドンウ達全員が
混乱しているままだった。

あんなに死にそうな声で電話を掛けてきたアッパは
目が覚めたユカリを最初は喜んでいたが次第に可哀相だと悲観して
考えが過ぎた行動をとってしまった。
ユカを連れ出し山を選んだが、感動する程綺麗な景色に気持ちが揺らぎだしたり、
ユカとこれまでの色んな思い出を語り合っているうちに
悪い考えがいつの間にか変わっていった・・・

それから目が覚めたのよっ?!それだけでも奇跡なんだからっ!
と、オンマにも説得されてアッパは思い留まることができ、
自宅にそのまま帰ったらしい・・・

それからドンウ君が今までユカの為にしてきてくれた事や、
思いを私達家族だけの勝手な考えで
ユカの人生や、ドンウ君の人生を悲しみに染めてはいけないと
話し合ったのが本当のところだ。


私は今の状況をオンマに直接会って話を聞こうと実家へ帰ることにした。
帰り道で、他に変わったことはないかと、
家に連絡を入れてみると、オンマが電話に出て、”もう解決した”と
あっけらかんと言われたところだ。
私を抜かした3人だけで、ユカの意識も戻ったし、
こうして無事に帰って来て良かった良かったと、
ワイワイ楽しそうにしていた・・・。


「アッパ・・・何してんの・・?家にいるんじゃないの・・・・。
あのさ、あんた達親子は一体、何がしたいわけ?
ほんっと呆れる・・・皆んなを振り回してさっ?」

「あ、オンニごめんなさい・・・。私・・・。」

「まぁ、分かるよ?分かるけどこれはやりすぎでしょ?
いくらハッキリしないドンウのせいだと言っても・・・
大体、アッパはユカに甘いのよ。ユカ、あんたも
自分で巻いた種でしょ?まぁ・・・でもさ、私と喧嘩したから・・・
それで飛び出したんだったね・・・。」

「ううん・・・オンニのせいだなんて思ってないよ?
それに、分かってる・・・私がハッキリしなかったから
こうなったんだって。でも、今となっては本当にリハビリしても
歩けなかったりさ、後遺症が残るんだったら
私はドンウちゃんを諦めようって思ってたのはホントだよ?
アッパは・・・私のそんな気持ちを聞いて凄く・・・
死ぬ程思い悩んだから、あんなことしたんだと思うのね?」

「だからって何?命って何なの?そんな簡単なものじゃないでしょ?
私の前でよくもそんなことができたわね?
人を試すようなことしてさっ!アッパっ!?」

「ごっごめんって・・・ははっカオリは怖いなぁ~・・
でも、アッパは演技上手じゃないか?
少しシリアス過ぎたかな?w俳優になれるくらいだったよね?」

「はっ?演技してたの??遺書とかそういうのも全部嘘だったって?」

「やぁ~あれはほんとに見事だったよなっ?!ウリオンマはっ!」

「アッパ、いい加減起きてくれる?そういう話、してないの。
これ以上、私やドンウの気持ちを試すようなことするなら
あたしが許さないわよ?分かってるわよねぇ?大事な時だって事。」

「カオリ・・・本当に済まない・・・。でも、本当にユカを不憫に
思ったんだ。これから辛い思いをするのかって・・・
意識が戻っても、まだ以前のように暮らせるかも分からなかったし、
もしかしたら絶望するかもしれないって思ったらさ、アッパも辛かったんだよ・・。」

「オンニぃ~・・ごめんなさい・・・。」

「まぁ、そうね・・・。それに煮え切らないドンウも悪い・・・」

「え・・・?」

「だから、私も力及ばずながら色々吹き込んで追い込むか・・・。」

「えぇっ~~~?!!!今・・・
追い込むなっ!とか・・・さっきも人を試すなっ!
みたいな事言ったよね?・・・ねっ?オンニっ??」

「・・・カオリって・・そういう人だっけ・・・?
我が娘ながら読めなくて・・・」

「アッパ、何、今更な事を・・・まぁ、かなり落ち込んで
今にも死んじゃいそうになってるからチャンスよっ!ユカ、頑張って?
って言うかヒカが後は何とかしてくれてるみたいだけど。
少しはユカも努力しなさいよ?」

「はっ・・はぁ・・・・」
と、ユカはカオリに圧倒されてしまった。

「んじゃぁ・・取り敢えずアッパは
ドンウ君に呼ばれたら行けば良いんだよね?」
アッパは何故かワクワクしているように見える・・・。

「うん・・・多分だけどこっちに向かってるんだと思う。」

「そっか・・・じゃぁ、後はヒカリちゃんに任せておけばいいのかな?
何するんだろう・・・?」

「それは・・・私も聞いてないから知らないけど・・・。」

「オンニ・・・それ、大丈夫なの?なんだか心配・・・。」

「大丈夫よ、私の妹みたいなもんだし・・・。
ん?大丈夫。馬鹿じゃないわよ?」

「何その言い方・・・余計不安なんですけど・・・?
妹みたいってじゃぁ、私みたいってこと?わぁ~・・・」

「何、あんた自分に自信にないの?しっかりしてよ。」

(そうだね・・・オンニ、時々私はオンニにそう思うけど・・・
大きな声じゃ言えないわ・・・。)

(そうだよねぇ・・・?ユカちゃん・・・。)
と、ユカとアッパは小声で話した。

「ほんの一瞬・・・ほんの一瞬だけ明るくなった気がした。
バラバラになった家族との溝が少しだけ埋まったような・・・

私がまた歩き出せるように、見守られながら・・・
妹の事や以前の彼氏の事で身動きがとれなくなった私達家族が
一つになろうとしている・・・
それでも私は相変わらずなんだろう。
それでも私は・・・
誰も心に入らないか・・・もしくは入れないのだろう・・・。

でも、今は・・・ドンウ、あんたが妹の光になってくれる事を望むよ。
強く・・・強くね。
私に出来ることは・・・やったよね・・・?


ドンウは絶望して一人あちこちを彷徨い歩いているようだった。


私の中で何かが弾けた音がした。

あまりにも滑稽な話で・・・
アッパの思いつめた声も涙も一瞬で乾いて
連れて帰ったって?
私は呆れるしかなかった・・・
だけど、呆れてる時間もない。
だってあの子達が・・・
大騒ぎして、今頃どうなってるんだろう。

考えるだけでも頭が痛い・・・

ドンウ・・・大丈夫かな。今にも死にそうな顔だったし。

あ・・・ヒカリはどうするつもりなんだろう?

楽しそうに騒いでいる家族に背を向けて
私は色々考えた。
煮え切らないドンウとユカ・・・
いい機会なんじゃないの?

ここでドーンと背中を押してやって・・・
ユカもモジモジしてるからこうなったんだし。
女優でもないのにいっちょ前に一人二役なんてするからよ!
そうそう・・・そうなんだよね。
騙されるドンウもどんだけ純粋なんだって話だし、
そういうのは絶対許さない!!
ってタイプな癖にどっぷりユカにハマり込んでこんな事に・・・
ホントいい加減にして欲しい。

そういうの顔に出てたし、念願のHのステージだってのに、
ステージ捌けるの早いのよ!
あたしの懇親の衣装を着て、サッサと終わらすってどういう事っ??

あぁ~~・・・なんか私まで変ね。

心の中でしゃべりすぎ・・・いや、考えてるのよ。
だって・・・なんて言おう。
死んでなかった~!
ユカも無事だし、ドンウが好きだってー
やったね両思い~!
って!!あたしは馬鹿かっ!!

はぁ~・・・キャラじゃない・・・。

あたし普段どんな風に会話してたっけ・・・?
ソンギュ・・・会いたいな・・・
いやいやいやっ!!何、言ってんだ、あたし。


その頃皆はドンウの失踪で混乱しているままだった・・・。

「おぉ~い!ソンヨラッ!
ミョンスッ!ウヒョナッ!!行くぞっ!!」

「分かった・・・あ、ソンギンュヒョン、俺ソンジョンに電話してみるよ。
今どの辺かとか、ドンウヒョンが見つかったかとかさ。」
丁度外出しているソンジョンに連絡を取ろうと、
すぐにミョンスは電話を掛けた。

「うん、頼む。」

電話が繋がってミョンスが声を出そうとした瞬間、
ソンギュが携帯を奪ってしまった。

「あっ!?」

「もしもしっ?ソンジョンか?俺だ。
おい、俺だってのソンギュヤ、ソンギュゥ~・・・うん・・・うん・・・。
分かったそのまま追ってくれ。俺たちも行くから。じゃぁな。」

それから、メンバーはドンウを追いかけて、
あの事が起こった。

なんだかんだと笑うしかなかった・・・

アッパがこうなったらドンウとユカが上手くいくように
サプライズしようって
言ってきた・・・。

馬鹿らしい・・・

正直そうとしか思えなかった。
お花畑か?うちの家族は・・・
そう思ったけど、いつの間にかそれに乗っている自分に
私は気がつかなかった。



-----------------------------------------



「よしっ!早く行こう!!」

「ヒョン・・・俺が電話したのに・・・」

「ミョンスゥ~まだ言うの?そんな小さいこと言ってちゃ
大きくなれないぞ?ぅんっ?」

「チィ~ッ・・・」
舌打ちをするミョンスにソンギュは少しだけフハハと笑ってからは
笑えなくなった。
なんとかみんなを元気にしたかった。
元気にというと少し変だけど・・・
事がうまくいくようにとそう願うつもりで。

「お~いソンギュヒョン。行くよ~・・」
ウヒョンは早々と靴を履いて玄関を出た。

みんなが外に出て暫く歩いていると、
ヒカが急に忘れ物をしたと言って家に戻った。

「俺も一緒に行くよ。」

「ううんっ!ホヤちゃん大丈夫よ!すぐ行くから
先に行ってて!!」
そう言ってヒカは振り向きもしないで家に戻って行った。

急がなくちゃ・・・
ヒカは汗をかく程急いだ。
ドンウオッパがどうか無事でありますように・・・
そう考えながら走っていると、曲がった角でバイクと接触しそうになり、
転倒してしまった。

「きゃっ!!」

キキーーーーーーーーッ!!

「ぁいたた・・・」

「君っ!!大丈夫っ!?」

「あぁ~・・・頭がフラフラする・・・」

「びょ・・病院へ行こう!!ねっ?」

「大丈夫です・・・気にしないでください。
怪我もしてないですし・・・。」

「でもっ・・・行ったほうがいいよっ!さっ、行こう?」

「ほんっとに大丈夫です。すみません・・・
急いでるんで・・・。」

「えぇっ・・・?本当に大丈夫?これ、ウチの連絡先だから。
もし、何かあったら連絡してね?」

「はい・・・ありがとうございます^^」

そう言って別れたものの、立ち上がった瞬間に眩暈が起きた。

「うぅ~~~・・・・」

また座り込んだヒカは頭を抑えた・・・



『ヒカ・・・ちゃん・・・これ・・・お土産の髪飾りだよ・・・』

誰・・・?

『ほらっ座って?今日も髪を梳かしてあげるよ・・・』

ホヤちゃん・・・?

『ヒカ・・・現・・の私・・・今度こそ幸せに・・・。』

知らない・・・知らないってば!こんなの
私じゃない!!

だけど・・・これは私・・なんだね・・・?
以前の記憶?

それからすぐに何故かドンウの姿を感じた。
ヒカが見たものはナイフと・・・それからドンウ・・・

そして大量の真っ赤な真っ赤な血だった。

そんな・・・もう少し・・・もう少しだけ見せてっ!!

あぁ・・そっか。
分かったよ。

それから、ヒカは立ち上がってホヤ達の家に走った。

ドンッ!!

「いったぁ~~~!!もぉっ!!またぁ~???」

「あっ・・・ごめんなさい。」

「ん・・?あ、リナオンニっ!!」

「あれ?ヒカリちゃん?どうしたの?」

「ちょっと忘れ物しちゃって・・・って、オンニはまだいたの?
帰らないとソンヨルオッパに怒られるよ?」

「アハハ・・・でも黙って帰る私じゃないのは知ってるよね?」

「そうでしたw分かってるよ。どーせ行くんでしょ?」

「うんっ^^」

「じゃぁ、お願いがあるの・・・」

そう言ってヒカは部屋にあるものでお腹をガードできるものを
作り、オンニに託した・・・。
これから先の幸せな二人の未来を・・・。

これで、ドンウオッパとユカリンさんはダイジョーブっと!

え~~~っと・・・え~~~っと

あ!そうだっ!カオリオンニにもメールしとこぉ~っと♪


こうしてヒカが何を思い出したのかは
誰にも分からない事で・・・
だけど、誰かは幸せになる権利もあって。
静かに静かにヒカは上手くいくことだけ考えた。

それは、誰にも褒めてもらうこともなく、知られることもない。

誰かが笑ってくれればいいだけの事。
その思いだけが知らずに人を救っている事もある・・・。

オンニより先に家を出て、オンニは後から来るようにと予定通りに
念を押して頼んだ。


ヒカがみんなに追いつくと、やっぱりドンウとユカリンのアッパは
対峙していた・・・。

上手くいくか、監視しようと思ったのにソンヨルオッパに止められて
思わず睨んだ。
へへっ・・・私も意外と怖い子なのかな?w
そう思いながらもハラハラした・・・
上手くいくかな・・・
カオリオンニはまだ?
リナオンニも・・・遅れてる・・?

色々考えてるうちに、間に合わないと思ったヒカは飛び出した。
すると、ソンヨルオッパの叫ぶ声が聞こえる・・・
どうして?
まさか・・・
オンニ私の上に?

リナオンニがヒカの上に覆いかぶさるように
飛び出し倒れ込んだ。
ヒカがもう少し我慢すれば良かった?
でも・・・少しの誤差でユカリンさんのアッパが怪我しちゃう・・・から・・。

(イタタタ・・・・)
(ホヤオッパ・・・?私の為に泣いてるの?
ごめんね・・・今頃気がついて・・・・)

さっきのバイクとの接触事故もあってか、ヒカは頭が痛くて
思うように起き上がれなかった。
そしてそんなヒカを見ていたらホヤは全てを思い出し、
曖昧だった記憶が鮮明に浮かんだ。
もう一人のヒカは、ここにいるヒカだと確信した瞬間だった。

「ヒカ・・・ヒカ・・・ごめん。ずっと曖昧だったから
なかなか言えなくて・・・」

「ううん・・・ヒカもさっきちゃんとハッキリ思い出したばかりなの・・・
だからおあいこだね・・・?それより、二人が・・・」

「うん。分かってる・・・。」

ソンヨルオッパはドンウオッパを殴り続けて手が真っ赤・・・
でも、違うの・・・ソンヨルオッパ違うんだってば。

いくつかの悲鳴。
オンニは約束通りに来てくれた。
でも、何故ヒカを庇うようにしたの・・・?
そして、その場からすぐに何処かへ行ってしまった。
だって、救急車来ちゃうから・・・?

泣き虫なのは誰?
ソンヨルオッパかなぁ?
それともドンウオッパ?
おかしいな・・・
あぁ・・心の中で聞こえるのは・・・ソンギュオッパ・・・
どうして?解らないけど。

ユカリンのアッパもようやく事情を話すことが出来た。
ソンヨルもドンウが興奮している為に、状況を判断するのに時間が
掛かっているようだ。
結局リナオンニも無事で笑い事になってるし、アッパがいくら
ユカリンは無事だと言ってもドンウは納得していない。

仕方なく家の中から様子を見ていたカオリはユカを連れ出すことにした。

「はぁ~ぁ・・・ったくしょうがないわね・・・
あたしがいないとなぁ~んであの子達ってこう・・・事を大きくしちゃうのかしら?
大袈裟なのよねぇ・・・仕方ないっ!ユカ!行くよ?」

「うふふっ・・・オンニってば相変わらずキツイなぁ~w」

「どこがよ?こんなに優しいオンニいないでしょ?」

「うんっw自分を犠牲にするような人は希だわねぇ~あははっ」

「なぁ~に言ってるのよ!そんな事ないよ。あたしは出来る事を
やってるだけよ。」

「無理ばっかしてるけどね・・・損してもそう思わないようにしてる・・・
いつもいつもオンニは我慢してた・・・前の彼氏との時もそう。
見てるこっちまで辛かったんだからね?」

「ははっ・・・悪かったねっ!」

「ねぇ・・・オンニ。私達はオンニからしてみれば、
頼りない家族かもしれないけどさ・・・
もう少し頼って欲しいな・・・一人で抱え込まないでよ。
オンニは迷惑掛けまいとしてるみたいだけど、あたしもオンマもアッパも
それが凄く寂しかったんだから・・・ねっ?」

「うん・・・分かったよ。ごめんね?
これからは相談するよ。」

「うんっ!」

「さぁ~ってソンギュでも呼びますかぁ~!」

「っていうかソンギュオッパがいいんでしょっ!?w」

「・・・・ユカ?シャラ~~~プッ!!」

「でたっ!!オンニのシャラップwwww」

「なっ何っ・・・」

「オンニがそれ出る時ってさ、心開いてる人にしか言わないよねぇ~?♪」

「はぁっ~?何それ?まぁ、いいや・・・」

カオリが家の中からソンギュを呼ぶ。

「ソンギューソンギュやぁーっ!!いるんでしょっー!?
ちょっっと手伝ってよぉ~っ!早く来てぇ~!」

ユカさんを見た・・・
俺は信じられなかった。ここにいる誰もがそうだ。
とんだ茶番を見せられたもんだっ!!
そう思ったけど、俺は吹き出しそうな笑顔でユカリンに
肩を貸した。

「ドンウちゃんっ!!」

玄関を出てすぐにドンウにユカさんの体を預けた。
ドンウはユカさんに飛びついた。
不抜けたドンウに支えられるわけもなく、二人は転んで・・・
見てるだけでなんだかあったかくなって、羨ましくもなった。

良かった・・・良かった・・・誰も死ななくて良かった。

俺はカオリと目を合わせて、微笑んだ。
視線を逸らされたけど、今はそれでもいいって思った。
だって・・・だって今俺は・・・カオリと一つになった手を
感じているから・・・


君の香りに触れていられるのは
あと・・・何日だろう・・・

3日?4日?5日?

それとも・・・・明日まで?


なんの勘が働いたのか解らないけど、
もう少しだけ一緒にいたいと言った。

ハッキリとそう言わないけど・・・

ただ・・・

”送っていくよ”

と、だけ言った。

二人で歩く帰り道・・・少しだけ俺は遠回りの道を選んだ。
気づかれないように。
きっと気づいてても、あいつは何も言わないだろう。
今日・・・俺はあの白い時計をしている。
だけど、今日はきっと何も嫌なことなんて起こらないって信じてる。
だって、こんなにも夕日が綺麗だから・・・。

「カオリ・・・あのさ、もうすぐ出来るんだ。曲・・・」

「ふ~ん・・・そうなんだ?長かったね。」

「うん・・・それで・・さ。1曲は俺が歌詞付けるの。」
ソンギュは人差し指を鼻の下に付けながら
照れた顔を誤魔化した。

「そりゃ楽しみだね。」

「えっそれだけっ?もうちょっと感動的に
祝ってよ。」

「まだ聞いてもいないし、
そんな取ってつけたような祝い言葉で嬉しいのか?」

「・・・嬉しくないです。」

「だろうね・・・。」
やっぱりソンギュはカオリに巻かれる。

ぎこちない空気というより、俺は二人で歩くこの時間を
噛み締めながら一歩一歩、歩いた。

「なぁ、この時計さ、やっぱり・・・聞こえてたんだろ?
俺がこれいいなぁって言ってたの。」

「うん?」
カオリはそう言って俺を見てすぐにまた顔を元に戻した。

(やっぱり教えてくれない・・・か。)

「・・・・まぁね。」

「っ!ほんとっ?だろっ?やっぱりっ???
俺が欲しがっての分かってて
買いに行ってくれたの?」

「どっちなんだよ・・・私に聞いてるのかそれとも
勝手に断定してるのかハッキリしなさいよ。」

「あ、じゃぁ~聞くっ!あのさっ、
俺が気に入ったの分かってたんだろっ?!」

「そうだよ・・・・。」

「あっ!やっぱりっ?だよねっ?やぁ~っぱ俺の誕生日を
忘れてなかったんだな?案外カオリも憎いことするよなっw
でも、ほんとにほんとなの?騙してるんじゃないよな?」

「だから、そうだってば・・・。」

「へへっ・・・そっかぁ~・・・ありがとなっ」

「いいえっ。ソンギュは昔から白が好きじゃない。
あんなの聞かなくたってあんたの好みなんて全部知ってるわよ。
何年衣装やってると思ってるの?」

「あっ・・・・そうだった・・・。一瞬忘れてたわw」

「ほんと・・・馬鹿ねぇ・・・」

(あ・・・また言った・・・)



ふと、立ち止まったカオリはコンビニで飲み物を買って
あの噴水のある公園に入って行った。

俺はずっとコンビニの外で、飲み物を買うカオリを見つめてた。
それから出てきて公園へ入っていくカオリの後を、少し遅れて
ついていく。

薄暗くなって昼と夜が重なる時刻・・・
人の気配がいつの間にか消えて、寂しさを感じた。
鬼ごっこをしていた筈なのに、気が付けば一人だった・・・
そんな・・・。

カオリは俺に買って来たペプシを渡した。

プシュッ!

ゴクゴクとカオリは喉を鳴らして飲んでいる。
まるで猫のようにゴロゴロと甘えた声を出すみたいだ。
車道を走る車のライトも付け始めて、カオリの目が光った。
背後から照らされた君は・・・まるで笑わない天使だった。
白と黒の2つの羽を持った笑わない・・・天使。
そう思いながら風景を眺めるようにカオリを見て、俺も缶を開けた。



プシャーーーーーーッ!!!!!

「うわっ!!!!!」

「あはははははははっ!あ~っはっはっはっは!!!!

「えっ・・・?」

カオリが・・・お腹を抱えて笑ってる・・・?
嘘だろ?
そんな顔して笑うの?
胸の高鳴りを抑えられないよ・・・ねぇ・・・

このまま二人で誰も知らない何処かへ行きたい・・・。
君の中にいる人も一緒でいいから、俺を受け入れて欲しい。
噴水の水に眩しく反射する光・・・
どうかこのまま消えないで。

頭から炭酸を浴びた俺も、びっくりした後に
可笑しくなって笑った。

「はっ!・・・ははっ!!はははははははっ!!!」

「あははははっ!!!ソンギュの顔ってばっ!
あははっ!!あははははっ!!」

「お~前ぇ~~~っ!!缶、振ったなぁ~?」

「やぁ~い!騙された人が悪いんです~だっw」

「ちっくしょぉ~・・ぜぇ~ってぇ仕返ししてやるからなっ!」

「無理無理無理っ!あはははっ」

「ぅわーー~~!!・・・言い切ったっ!
言い切ったよこの人はっ!!わぁ~・・信じらんねぇよ。」

「信じなくてもいいです。事実ですけどね。」

「何っ?!ほんっとお前は可愛くないっ!!」

「知ってる。」
そう言っていつも見ないカオリの顔を見ると、
苦笑していた・・・

ショックだった・・・
俺が。
いや、カオリなんだろうけど・・・。
訳分かんねぇ・・・

俺はさ・・・カオリをなんだと思ってたんだ?って
さっきまでの俺に言ってやりたい。
カオリは傷ついてたんだ。
俺が可愛くないとか、ブスだって言った時・・・
本当は傷ついてたんだ。
知らなかった・・・ほんとに知らなかったんだよ。
そんな顔をするだなんて・・・。


噴水が最後のダンスを踊りだした。
高く舞い上がる水しぶきとライトアップされたその踊りは
カオリの髪にも映ってとても綺麗だった。
スローモーションのように、君の髪がなびく。
その髪をそっと手のひらに掴み、この目にその美しい姿を焼き写した。

髪を風になびかせた君は、
びしょ濡れになった俺を笑う。

それから、ベンチでもない所で寄りかかるように座った。
カオリは黙ったまま俺を真っ直ぐに見つめた後、
ゆっくりと近寄って来て、クルリと背中を回して俺に寄りかかった。

俺は自然に腕をお腹に回して、カオリの肩に顎を乗せる・・・
少しだけ口の端を上げたように見えた。

「ねぇ・・・。」
俺はどうにか声を掛けた。

「・・・」
そして君は、カラフルに変わってゆく噴水を眺めたままで・・・

「カオリ・・・」

カオリは聞こえていないのか、俺の手を握ったまま
空を見上げた・・・
それから軽く息を吸い込んで、頬の色と同じようなピンクの噴水に
話しかけるように呟いた。

「ねぇ・・・一つだけ私の秘密を教えようか・・・。」

「秘密?」

「うん・・・まだ、誰にも言ってないんだけどさ・・・
でも、誰でも知ってるかもしれないの。」

「うん?なんかややこしいなっw」

「うん。まるで私みたいでしょ?」

「ははっそう言えばほんとそんな気がする。」

「・・・・冗談で言ったのに・・・酷いね。」

「えっ!?ごっ・・・ごめん・・・。」

「う~そっ。」

「あ゛っ?なんだよっ・・・。
俺をからかってるのか?」

「ううん・・・違うよ。私今ね?
ソンギュに近づいて行ってるんだよ。」

ドキッとした・・・
カオリがそんなことを言うなんて。
言葉を失った俺にカオリは振り返って両手を掴んだ。
それから、寄りかかっていた俺を引っ張って
『もっと近くで噴水が見たい』と言った。

後ろ向きで歩くカオリは、俺の顔を見つめながら噴水まで
歩こうとしている・・・。
危ないのに、わざわざそんな事するなんて
俺には理解できなかったけど、そういうのって
理解しようとしなくてもいいのかな・・・?ってちょっと思った。

多分カオリは俺を試してる・・・。
まるで初めてゲームを覚えた子供のように目をキラキラさせて
夢中だ。失敗するかしないか・・・ハラハラドキドキを今きっと
味わっているんだろう。この場合で言うと転ぶか転ばないか?
転ばないで噴水までたどり着けるかとか?
カオリは本当に嬉しそうに俺の両手を掴んだまま、
後ろ向きに歩いて行く。
暗がりに良く見れば、目まで瞑っていた・・・。

俺の目は少しキョロキョロと挙動不審になった。
見たこともないカオリの笑顔に翻弄されっぱなしで、
今だってこうして笑顔でゲームしてるんだ。

「カオリ・・・ゆっくりだよ。もう少し・・・」

「うん・・・水の音はさっきよりは大きくなったよね。」

「あ・・・カオリ、小さな段があるよ?
あと、5歩位下がったらね・・・。」

「あ・・ここだね。」

「わっ凄いっw勘がいいなぁ~・・・。」

「もうすぐね・・・水の音かなり大きくなって
ソンギュの声も私の声も半分消されてしまうもの。」

「うん。もう着くよ。」

トンッ・・・

「あ、着いた。」
そう言うとすぐに俺の手を放して噴水を見上げている。
俺の手から離れたら、なんだかとても寂しくなってしまった・・・
こんなちょっとしたことで残念がる俺はとんでもないくらい
カオリにハマっているんだろう。

そんなことばかり考えてほんと自分でも情けなくなる・・・
だけど、ずっとそうしていたいんだからしょうがいないだろ?
カオリとは違う、そんな薄っぺらい事を考えていると、
カオリは噴水を見上げながら、手を後ろに差し出した。

「手・・・。」

「あっ・・・・。」

俺はそれしか言えなくて、カオリの言うとおりに
手を差し出して指に触れた。
するとカオリは噴水にたどり着いてから、
まだこっちを1度も振り返りもしないで俺の手を握った。

「ねぇ、さっきの話なんだけど。」

「うん・・・秘密の話?」

「そう・・・。」

「うん。何?」

「あのさ・・・ここの噴水もとても綺麗なんだけどね?
私、いつも一人で考えたい時とか、気持ちが沈んじゃう時に
行く場所があるんだけどさ・・・漢江なんだけど。」

「あぁ~うん。確かにみんな知ってるよね。w」

「うん。でね?ハンナムデキョ(漢南大橋)と、
下流のドンジャッデギョ(銅雀大橋)の間にある
バンポデギョ(盤浦大橋)ってのがあるんだけどさ。知ってる?」

「あぁ~・・知ってる!あそこの公園は有名だよね。
行ったことはないけどさっ?」

「ふ~ん・・・そうなんだ。」

「うん・・・。それで?そこによく行くの?」

「そう。そこのバンポデギョの両側に380個のノズルが付いてて、
そこから水中ポンプで汲み上げた漢江の水を20m下に落下させるの。」

「380っ!?まぁあそこの橋長いしな・・・それにしても
すごい数だね。」

「うん・・・。夜になったら音楽も流れるんだよ。カップルとか多いけど、
ライトアップとかもされて、本当に綺麗な色と動きを
見せてくれるの。」

「動く?動くんだ?どんなだろ・・・?
落下しながらだからかなり制約はありそうだな。」

「そういう風に難しく考えるのは止めて・・・。
素直に見ればいいじゃない。あ、そうだっ!
200個もあるんだって、照明っ!」

「うわっ200っ個??!へぇ~そんなにあるのかっwそりゃすごいわ。」

「でしょでしょ?それでね?夜空に虹のように様々な光を放つ
ってとこから、タルピッムジゲブンス(月光虹噴水)って
名前になったんだってさっ!!素敵じゃない?」

「あはは、カオリは意外とロマンチストなんだな。
そういうの好きなんだ?」

「・・・何ぃ~?私がそういうの好きだとなんか
おかしいワケ?私も一応女子ですからっ!」

「誰もそんな事いってないだろぉ?wwww
本気にしちゃって、まぁ~らしくないったらw」

「気を許してる証拠じゃないのっ?」

「うっ・・・そう言われると返って照れるだろっ!!」

「ブブッwwwほんとに照れてる・・・顔真っ赤・・・。」

「あんだよぉ~あぁ~・・・。」

「あははっなんで頭に手をやるの?それ、好きだけどさw」

「俺もわっかんない・・・気づいたらやってる・・・癖だな。」

「うんうん。そうだね。あ、それでさ、
そのタルピッムジゲブンスが好きだっていうのも秘密だったし、
そこにこっそり行ってるのも秘密っ!でねっ?
虹って元々好きだったけどさ、ソンギュ達に会って
益々好きになったよ。
まるで7人みたいでさ、綺麗な色を放って、
どれも一つ一つが個性的で・・・。
だけど集まって虹になった方がやっぱり1番綺麗でさ・・・
それから、月光・・・こんな名前が付いたのも気に入ったんだ。
私がそれになれたらなって思ったの。」

「へぇ~・・・そっかぁ・・・。そのライトアップされた虹が俺たちで、
月光がカオリか・・・うん。
なんかお互いに惹かれ合うみたいでいいね。
なぁ~んちゃって、ぬははっw」

「プッw・・だけどさ、辛くなってその噴水を見に行く度に
段々、なんとなく物足りなくなったんだよね。」

「何で?」

「う~ん・・・やっぱり一人で見る物足りなさかな・・・?
さっ・・・寂しいって言うか・・・さ・・・。」

「ふぅ~ん・・・じゃぁさ、今度一緒に
見に行こうよっ!俺も行ったことないから行ってみたいっ。」

「うん。そうだね・・・ソンギュとなら一緒に見たいかも。」

まただ・・・カオリは俺を翻弄させる。
気を持たせるくせに、まだ気持ちがわからないとかさ・・・
カオリがどういうつもりで言ったのか、
俺には分からない・・・。
だけど、俺は確かに聞いたんだ。
”俺となら一緒に見たい”って・・・
これが夢なんかで終わらないように、俺は小指を出した。

「カオリ・・・約束しよう?」

「うん・・・約束・・・。」

「約束・・・コピー・・・。」

「サインまで?」

「うん・・・俺だけでもサインしたい。
だから、絶対ね?」

「そんなに固く約束しなくても直ぐに行けるよ。
遠くないし、夜だから行きやすいしね。」

俺とカオリは小指を繋いで親指で判を押す。
それから、掌を合わせて引き合ってコピーをし、
俺は最後にその手のひらにサインまでした。
これが俺達の国での指きりだから・・・
その指切りの仕方が段々長くなっていくのは
それ程強い気持ちだって証・・・
だから、俺もサインまでしたんだ。


ずっと繋いでいたいその小指を放し、掌を合わせるけど、
俺は惜しむようにゆっくりとカオリが掌を引き終わるまでは、
あまり動かないようにしていた。

それでも数秒後にはスルリと掌は離れていくんだ。
当たり前なんだけど・・・
その瞬間にカオリは、何故か足を滑らせて
ハの字に足を開いてしまった。

ズルッ!

結局引きあった掌をもう一度掴むことになった。
なんだかその偶然が嬉しかった。
1度離れた気持ちがまた結ばれるようで・・・・。

「プッ!案外そそっかしいんだなっw」

「あぁ~・・・ごめんっ・・・時々そうみたい・・・。
私も最近知ったのよ・・・。」

「ドジだって?時々変な事も言うし?」

「うっ・・・うん・・・。ははっ・・・」

「あははははっwww信じらんねぇ~っ!今更っ!?」

「うっさい・・・」

「でもさ・・・それでもいいよ。
怖くなって・・・俺から離れようとしたっていい・・・。
そしたら俺がカオリの傍に行くから・・・ずっと・・・ずっと
カオリの傍にいるよ?だから・・・」

その先が喉まで出かかってまた言えなかった・・・

さっきまでの夕焼けが嘘のように雨が降りだした・・・。
噴水のLast Danceが、雨の演出で美しさが半減する。
だけど・・・あの時の夕立よりは美しい・・・
あまりにも美しくて、俺は雨に紛れてKissをした。
それは噴水が美しかったせいなのか、それとも
カオリが美しかったからなのか・・・。

誰にも知られないように、夕立の中でひっそりとひっそりと霧と雨に紛れて・・・。


彼女は俺の気持ちにKissで答える・・・
そう思った。

嬉しかった・・・。
言葉では・・・言えなかったけど。
俺は行動で伝えた。
カオリもきっとあの時の夕立の日とは違う筈だ。
そう信じたい・・・。

「ソンギュ・・・ごめん。」

「なんで・・・?なんで謝るの?」
ズキズキとまたあの時の傷が疼く。

「・・・・ごめん。」

「だからなんでっ!」

「まだ分からないの・・・。」

「分からない?」

「うん・・・自分の事も分からないんだよ。」

「じゃぁ、尚更俺の事をどう思ってるとかも・・・」

「そう。分からない。」

「そうか・・・でも・・・kissは出来るんだな・・・。」

「・・・・・。」

「ははっ・・なんか笑える。」

「ソンギュ・・・誰でもいいわけじゃない。」

「それを信じろって?ははっ・・難しい事をおっしゃる・・・。」

「何、その言い方。」

「別に?ただそう思っただけだよ。」

「ソンギュ、私は喧嘩したくてこんな時間まで一緒にいるわけじゃない。
それはソンギュも同じだと思ってた・・・
どうやら勘違いだったようだね。帰ろう・・・。」

「いやっ・・・それは・・・。」

カオリは髪を翻して背を向けた。
風がカオリの体にまとわりついて、俺の手を払った。
まるで風の精にでもなったように
カオリは小さな竜巻の中にいるようだった。
そして、その後1度たりとも振り返らなかった。


やっと・・・やっと俺が君のLast Romeoになれるって・・・。
さっきまでは、そう・・・思ってたのに・・・。
それでも良かった。
それでも信じたかったと言おうか。
だって誰でもいいわけじゃないって言っただろ?
だから・・・


俺達は知らない・・・
何処かで1羽の鳥が飛び立ったことを。

俺達は知らない・・・・
何食わぬ顔で舞い降りてきた黒鳥が
いつのまにか紛れ込んでいることを・・・

俺達は・・・知る由もなかったんだ。
その鳥が羽音も立てずに背後に立ち
誰かの羽を折ろうとしていることに・・・



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「ふぁ~~あっ・・・おはよーぅ!おっ!
ホヤ君、今日もいい天気だねっ!っはっはっはー。」
ソンギュは夕べのいいとこだけを思い出したながら
ニヤついて弟たちを怖がらせた。

「ぅ~わっ・・・ヒョン、何・・怖っ・・・・・・」

「ソォ~ンジョーンアァ~?っはよぉー^^」

「わっ・・・何?ドア越しに顔だけ覗くなんてやめてよ。」

「用意出来た?」

「う・・・うんっ・・一応・・・。」

「わぁ~大したマンネだなっ!さすがとでも言おうかっ!?」

(ちょっと・・・どうしたんだよソンギュヒョン・・・)
ソンヨルがミョンスの部屋へ避難しコソコソと
話をしている。

(何アレ・・・気持ち悪い位機嫌いいじゃん・・・・。)
ミョンスも呆気に取られながら、ドアの隙間からソンギュの様子を
伺っている。

(何~?どったの?wソンギュヒョンの様子が変だって?)

(う・・・ドンウヒョンも割と・・ね・・・。)
ソンジョンがドンウに堂々と突っ込む。

体の向きを替えたソンジョンがソンヨルとミョンスの耳元で
口に手を添えながら囁いた。
(ねぇねぇ・・ドンウヒョンも似たようなもんだよねぇ?
もう、ホントやだ。逆に気持ち悪い位優しくて気分悪いよね。)

(やぁ、ソンジョン、それ程間違ってはいないが、それが
ヒョンに対して言う言葉か?)
と、ソンヨルに怒られてしまう。

(まぁまぁいいじゃないの・・・ほんとのことだし。)
とミョンスは何やら間違った返事をする。

(でしょっ?ホントに我がヒョンながらに気持ち悪い・・・
みんなああなるもん?)
更に、”はい、そのとおりですね。”と、胸を張って
間違った答えを言う末っ子ソンジョン。

どうにもならない、まとまらないもの達がさっさと
仕度を済ませて、歌番組収録へ向かう為に車に乗り込んだ。

ご機嫌なソンギュとドンウは肩を組んで
楽しそうに話をしている。
本当に昨日は大変だったけど良かったよな?
とかなんとか言いながらお互いをねぎらう言葉を
投げかけながら車に乗り込んだ。

いつものようにいつもの道を車は走る。
スタジオがあるビルへ入る入口にはいつものように
入り待ちや出待ちの女の子で一杯だ・・・
ウヒョンの愛嬌もドンウの挨拶もいつも通りで。
ただ、少しだけいつもと違うとするならば、
収録が終わって帰る時に、ソンギュがファンサをしたくらいだろう・・・。

『気をつけて帰れよ?もう遅いから早く帰るんだぞ?』
そう言ってタクシー代を渡していた。







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「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」









「!!?」
















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