『1年は・・・365日・・・・365日は8760時間。
8760時間は525600分・・・』
『手が届かなくても・・・いつも一緒にいられなくても
しばらく挨拶を交わして
今日別れる間柄だとしても
1年・・・また、何年・・・
恋しい限り、待つことがある限り
あなたと私の仲・・・
そんな気持ちを愛だと言ってもいいなら
私もあなたを愛だと呼びたい
手が届かなくても・・・・
今日別れるそんな出会いでも・・・』
『待ってる・・・』
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ねぇ・・・
君が現れてからというもの、僕の心はずっと囚われていたんだね。
君という鎖に・・・・
でも、それはとっても心地よい鎖。
そんなバカなって人は言うかも知れないけど、僕の存在する意味を
君が教えてくれたから。
繋がっていて・・・いいんだよって。
君の笑顔を見れる日がきっといつか来るって、ただそれだけを
夢見て今日まで走ってきたから・・・・
勝手に君を鎖だと言ったら怒るかい?
自然と溢れる涙に、もう何度川や空へと還しただろうか。
届かない想いは、届けようとはしない誰にも言えない僕だけのもの。
君はどうやってここまで来たのか、聞いてみたい。
僕が消えてからあの部屋で、1度は全て溶けて蜂蜜になってしまったのだろうか?
もし、そうならどうやってここまで来たのか。
知りたい・・・・。
でも、僕はなかなか聞けないんだ。
本心を聞くことは、その人を全てを抱える事でその責任が負えると
自身が持てるまでは決して安易に聞いてはならないと思うから。
もちろん、世の中には何の気なしに、そして無責任に話を聞こうとする者も
いるだろう・・・・でもそれは世間話。
それは、自分勝手な心を満たすためのただのネタ。
1つの話しを10倍にして、10倍にした話を、地平線が見せるほどの
大地に轟かせて、満足するだけだ。
僕はそうしたくない。
大事な君だから・・・・
傷つかないといけない時だってあるけど、その傷は僕が埋めてあげるって
もうあの蜂蜜瓶に誓ったから。
僕は溶ける・・・・
僕は溶けてた。
一緒になら、・・・怖くないよね?
マリー・・・何故なら僕はね・・・・・?
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マリー、いよいよその時が来たね。
何があるんだろう?
何かあるのかな?
俺たち二人はそんな期待と不安で胸を躍らせながら、さっきまでいた部屋から
漏れる陽の光を眺めた後に、それを見つけた・・・・
そう・・・・それは俺達に隠されていた秘密。
俺も知らなかった自分の事まで、俺達は知ることになった・・・・
最初は、マリーへの愛情や両親が残した秘密みたいなものが
あるのかと思ってた。
秘密と言ったら、同じことなのかも知れないけど、
それは予想もしないことで・・・・
ウヒョン:「マリー・・・写真が・・・・。」
マリー:「えっ?どれどれ?ほんとだ・・・私?でも・・・もう一人は?」
ウヒョンとマリーは顔を見合わせる。
ウヒョンはそれから手に持った写真を裏返すと、手を震わせた。
ウヒョン:「これって・・・俺?・・・嘘・・・・だろ?」
マリー:「えっ待って・・・・ウヒョン?」
写真の裏に書かれた、日付と二つ並んだその名前は、確かに
ウヒョンとマリーだった。
ウヒョン・7ヶ月
------・7ヶ月
マリー:「何これ?・・・・何これっっっ!!!!」
ウヒョン:「マリー!!落ち着けっ!!落ち着けって!!」
マリー:「何よこれ・・・・私とウヒョンが・・・兄弟だって言うの?
嘘よ・・・そんなの信じないっっ!!」
ウヒョン:「まだそうだと決まったわけじゃないだろっ!?マリー!!俺を見ろっ!
俺を見ろってっ!!」
マリー:「!!」
マリーのあまりの動揺に、ウヒョンはマリーの顔を両手で掴み、
そのうるんだ瞳に目を合わせた。
大きな瞳に長いまつげ・・・そんな瞳だったか?と思うほどに目を細めて
今にもこぼれ落ちそうな透明な不安が、俺の心にも押し寄せて
先にこぼしたのはどちらかも分からないままにキスをした・・・・
一体、俺達は気持ちも打ち明けぬまま、何度キスをしただろう?
苦しさから逃れるために、俺はそうしてしまったのだろうかと、
自問自答して、マリーがそれを受け入れてくれる事で言葉なんか
いらなかったのに・・・・
その写真が物語る何かを知るのが怖いのは、引き裂かれようとするのかと
五感が感じているからか・・・
勇気を出さなきゃ・・・一歩前へ。
ウヒョンは手に持った写真を1番後ろにして、次の写真を目に入れた。
ウヒョン:「マリー・・・・。」
マリー:「やだよっ!!やだよっ!見たくないっ!!やめてっ!!」
ウヒョン:「マリー・・・・もうさ・・・前に進も?何があっても俺はマリーを
受け止めたいんだ。ううん・・・俺はもうどんなことがあってもそうするって
決めてるから。だから、一緒に見よう?」
マリー:「・・・・・・。」
ウヒョン:「フゥーッ・・・・。」
めくられていく度に、二人は成長した・・・・
そして最後には、マリーの両親が微笑む写真があった。
その腕に抱えられているのはウヒョンとマリー。
ウヒョンは、震える唇を懸命に閉じようとする・・・・
泣きじゃくるマリーの頭を片手で抱え、片方の腕には写真。
全ての写真を見終わると、ウヒョンの腕は脱力していった・・・・
天井を見上げて、何度も息を吐く。
最初の1枚目を見た時に入ったヒビが、最後の1枚を見た後に粉砕して
辺りに散らばったように、何も考えられなくなった。
俺は何の為にここまで来たんだろう?
こんなことってあるのか?
俺は・・・・俺の両親は・・・・・?
俺と、マリーが兄弟・・・・???
嘘だ。
何のつもりでこんな写真を・・・・
マリーの両親が例え事故に遭わなくとも、これじゃまた蜂蜜瓶じゃないか。
頭では分かってるのに、恨めしい気持ちが沸き起こって、オーナーに
いますぐ講義したくなる。
そうだ・・・・そうだよ。
オーナーは知ってたのかよ?
俺達がいつかこうなることを分かってて、ずっと見守ってきたってのか?
じゃぁ、どうして俺はマリーと離れて暮らしてたんだよ。
ふざけてる・・・・
何もかも大人たちに滅茶苦茶にされた気持ちだ。
そう思った時、マリーは氷のような表情で俺の胸からゆっくりと顔を起こした。
パキパキと音を立てながら、マリーは伏し目がちに俺のお腹を見ているようだ。
マリーはもう蜂蜜瓶にはならないんだ、と、感じた瞬間でもあった。
その時、マリーのポケットから振動音が聞こえてきた・・・・
マリーはポケットから携帯を取り出して着信相手を確かめるとすぐに
その電話に耳を充てた。
マリー:「もしもし・・・・今、家です・・・実家の隠し部屋にいます。」
受話器の向こう側では何か大きな声が聞こえる・・・・
何を叫んでいるのだろうか。
あぁ・・・・隠し部屋にいることか・・・?
『違う。』
この鍵は確かオーナーから預かったとマネージャーは言ってたんだし。
星が瞬く頃に、信号のないトンネルが、早く早くと急かしているようで焦る。
曲がりくねったそのトンネルの中には、ジェットエンジンの形とよく似た
空調が車を見送りながら澱んだ空気を追い出している。
そこは一本径で、降りるまでは何も車を止めることはなくて・・・
”そんな”気持ちとよく似ていた。
電話を切ったマリーがこちらに振り返ると、あのトンネルに似ている口調で言った。
マリー:「オーナーが・・・今から行くって。」
ウヒョン:「オーナーが・・・・?それで・・・なんて?」
マリーは首を振って分からないと意思表示をする。
俺はどうしたらいいんだ・・・・
急に突きつけられた真実に翻弄されて頭が回らなくて。
マリー:「なんだか焦ってたよ。もう、真実を知っちゃったし、
焦ったってどうにもならないのにね・・・私と・・・ウヒョンが兄弟ってさ。」
ウヒョン:「やめろっ!!やめろよマリー・・・・やめてくれっ・・・・頼むから・・・
だってそうだろ?ただの写真じゃないか。」
マリー:「そう・・・ただの写真だね。私とウヒョンがまたこうして出会うことも
決められていたことだった。だって私達・・・・・。」
ウヒョン:「やめろっ!!言うなっ!!それ以上言ったら・・・・俺っ・・・・。」
マリー:「ウヒョナ・・・・受け入れなきゃ。私達は両親や大人達が造った身勝手な
迷路の塔に閉じ込められていただけ・・・今それが崩壊して、
私達は本当の意味で自由になった・・・・それに、ウヒョンとこうして出会わなくても
真実は変わらないし、私に起きた過去が変わることもないんだから。」
ウヒョン:「待って。それじゃ俺の両親は?俺の両親は別にいるんだぞ?
マリー・・・写真だけで判断するには危険すぎるよ。まだ答えを自分で
出さないでくれ。ちゃんと・・・・ちゃんとオーナーに聞こう?これから
向かってるなら話してくれるんだろ?」
マリー:「そうかもね・・・でも、あんなに焦ってるオーナー・・・見たことないもの。
ウヒョンの両親?きっと・・・理由があってウヒョンと私は引き離されたのね。」
ウヒョン:「だから待てって!!そう言ってるだろ?またお前はそうやって殻に
閉じこもるつもりかっ!?」
マリー:「殻・・・・?そんな風に私を見てたの?まぁ、間違いではないけど・・・・
私を救ったつもり?それで自分の心が満たされた?
私は何も頼んじゃいないわ・・・。オーナーを待つまでもないわ。」
そう言ってマリーは俺に背を向けて出て行こうとする。
『くしゃくしゃの顔をしたのはどっちだったのかな・・・・?』
精一杯の腕を伸ばして、マリーの行く手を阻んだ。
ウヒョン:「行かせない・・・・・。」
マリー:「ウヒョン・・・放して。」
ウヒョン:「嫌だ・・・・行くな、マリー。」
マリー:「ここにいて、オーナーが来るのを待ってどうするの?
結果はもう出てるじゃない。」
ウヒョン:「結果?結果がなんだってんだよ。それに結果がどうあれ、それでマリーは
俺に対して何か変えるのかよ?違うだろっ??少なくとも俺は違うっ!!」
マリー:「ウヒョン・・・結果が全てよ。何にしたって、結果で判断されるものでしょ?」
ウヒョン:「違うっ!!結果も大事かもしれないけど、その後だっ!!
その後が大事なんだって・・・」
マリー:「そうとも言うわね・・・でも、出来ない事もあるよね。結果が出ても
その後にどうするかって考えたって、変わらない事実に私は・・・・。」
ウヒョン:「関係ないっ!!関係ないんだってっ!!少なくとも・・・俺には・・・
マリー・・・・お前が好きだ・・・マリー・・・俺からもう離れないでくれよ・・・
こんなの・・・辛すぎる・・・。」
マリー:「ウヒョン、何言ってるの?好きだなんて・・・・変な事言わないで。
キスしたからって、私が同じ気持ちだと思ってるの?」
ウヒョン:「なっ・・・・・。」
オーナー:「おいっ!いるのかっ!!?」
カタン・・・・
マリーはその小さなドアの前に立つことによって、
そこに居ることを見える範囲で伝えた。
オーナー:「・・・・二人共いるんだな?」
ウヒョン:「はい・・・います。」
背の高いオーナーには相当キツイであろうその扉。
それでも体をねじ込んで二人がいる部屋へと入ってきた。
マリー:「オーナー・・・フランスにいたんじゃないの?」
オーナー:「いや・・・まぁ色々あってな。実は日本にいたんだ。
それよりマリー・・・そんな目をするな。」
ウヒョン:「オーナーさん・・・これ・・・。」
ウヒョンはオーナーに二人が見た全ての写真を差し出した。
オーナー:「ん?これがどうしたんだ?はははっ二人共可愛いなぁ~
昔を思い出すよwウヒョン君、君も驚いただろう?」
ウヒョン:「はい・・・なんで俺が写ってるんですか?俺の両親って・・・・。
オーナーさん・・・違いますよね?マリーと俺が・・・・。」
オーナー:「ん?二人が何?それよりウヒョン君・・・今まで黙ってて
済まなかった・・・君の本当の両親から連絡があったのはつい最近でね・・・・。」
ウヒョン:「えっ・・・・本当の・・・両親って・・・・?」
マリー:「えっ・・・・最近連絡があったって・・・どういう事???」
オーナー:「どうした、そんな顔をして・・・確かにウヒョン君に直ぐに伝えられなかった
事は悪かったと思ってる・・・仕事が忙しくてね。私もマリーの両親とウヒョン君の両親が
知り合いだったなんて知らなかったからねぇ・・・。」
マリー:「えっ??えっ???どういう事・・・ちゃんと説明してくださいっ!」
ウヒョン:「俺の・・・本当の両親・・・・?」
オーナー:「そうだなぁ・・・何から話せばいいんだか・・・・。」
ウヒョン:「順番はどうでもいいですから、早く教えてくださいっ!!」
マリー:「えっ?待って。私とウヒョンは兄弟なんじゃないの???」
オーナー:「えっ?なんでそう思ったんだ?そんなワケないだろう・・・。」
それをオーナーの口から聞いた俺とマリーは、
ポカンと口を開けたまま顔を見合わせた。
拍子抜けした。
さっきまでの悲劇の舞台はまさに、舞台上でのことだった。
想像力に長けているとしか言い様がない。
逃れられない恥ずかしさに俺たちは互いにそっぽを向く。
視線の先にはマリーの思い出たちがにわかに笑っているように見えて
俺たちは急に吹き出した。
マリー:「プッ・・・あたしって・・・。」
ウヒョン:「マリーって・・・・・。」
マリー:「あはははははっwwwwww」
ウヒョン:「バッカじゃないのぉ~っ?wwwww」
マリー:「うっさいよ!!wwwww」
オーナー:「はぁ~?なんだお前ら・・・・。というかいつの間に
そんなに仲良くなったんだ?暫くぶりでも顔を合わせてた二人だからそうなのかねぇ・・・。」
そんなオーナーの疑問する声も届かない二人の笑い声は、
部屋中に広がり、跳ね返ってはまた響いた・・・・