ミョンス ~君の足跡~act.3 (月夜とキョロリ) | K-POP恋愛小説(INFINITE/防弾少年団/etc...

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amblo.jp/vanilla7creamより
引っ越しました。

今までINFINITE ONLYでしたが
これからは他のグループにも
挑戦致します★
暖かく見てくださると嬉しいです^^

Fantasy/恋愛/日常
短編集・・・など。

 

 

 

オッパ・・・ごめんね。

オッパ・・・許してね?

 

 

ミョンス:「はっ!!・・・・・・なんだ・・・夢か・・・。」

 

そう思った瞬間、汗だくになって飛び起きたものの、

もう、さっきまで見ていた夢のことなんて既に何も覚えてはいなかった。

 

ボリボリボリ・・・・ワサワサッッ!

 

ミョンスはどこから落ちたような感覚を思い出そうと頭を掻き毟るが、

何も思い出せなくて気分が悪くなった。

 

ミョンス:「んぁーーっ!!・・・・・はぁ。」

 

どうにか思い出せることは、体が感じた身震いするような恐怖感や、脱力感のみ・・・。

それに加えて、最後に落ちた感覚で飛び起きたもんだから、確実に今日は

悪いことが起きるんじゃないかと朝から不安を過ぎらせてしまった。

 

初日のバイトがきつくてそうだったのか、思わず寝起きに自分の匂いを確かめてしまう。

そうは言っても、そんなに体力勝負でもない仕事ではあるが、覚えなきゃってのと

初めて会う人への緊張感で疲れたんだろう。

そう、思うことにして・・・・。

 

 

 

そう言えば昨日・・・・

なんだか初めて会ったにしては凄く自然でいられる子に会ったな。

ずっと前から知ってるような、とても不思議な感覚だった・・・。

 

バイトの初日で緊張してたけど、少しはその子のお陰で気が

紛れたかもしれない。

交わした言葉は、そう多くはなかった。

 

行きつけのカフェをバイト先に決めたからなのかもしれないけど、

レジを覚えるのに彼女の隣に立って、俺はそれを眺めているっていう

仕事だったんだよね。

もちろん、真剣に覚えようと覗き込んだり、教えてもらったりしたけど、

お客さんの出入りが少なくなる時間になると、軽いおしゃべりもできた。

 

店員:「おはようございまーすっ。」

 

店長:「あ、リリィ、おはよう。こちら新人さんね。よく見てやって?」

 

ミョンス:「ぁっ・・・初めまして。キム・ミョンスです。宜しくお願いします・・・。」

 

店員:「私はハン・リリィです。宜しくお願いします^^」

 

店長:「あぁ~~・・・リリィ、今日は初日だからずっとレジについて

    色々教えてやってくれる?」

 

リリィ:「はい、分かりましたぁ。」

 

店長:「ミョンス君、慣れたら一人でやってもらうからね?リリィになんでも聞いて

    覚えながら、接客の仕方とかも簡単に聞くといい。」

 

ミョンス:「あ、はい。分かりました。」

 

誰にでもあるような初日を迎え、少し肩に力が入る経験をまたした。

数度に渡る受験の時だったかな・・・

それか、クラス発表の時だったかな?

 

取り敢えず、俺はリリィさんの横に立って、レジをじーっと見ながら

店内の様子をグルリと見渡したりした。

流石にこの日ばかりは人間観察とまではいかなかったけど、

リリィさんの真剣な横顔を見てると、凄く大人に見えた。

 

リリィ:「ミョンス君は何年?」

 

ミョンス:「9...92年生です。」

 

リリィ:「あ。一緒!!」

 

ミョンス:「おっ!ほんとですか?」

 

リリィ:「うんうんっ!じゃぁ敬語はいらないね!ミョンスって呼ぶよ。

    私のこともリリィって呼んでね?」

 

ミョンス:「うんっ、ぁっ・・・でもこれから色々教えてもらうのにいいの?」

 

リリィ:「いいよいいよぉ~そんなの気にしてたらキリがないじゃない。

    それにタメ口の方が自然だし、早く覚えられるかもよ?w」

 

ミョンス:「ん・・・じゃぁそうするっ。」

 

リリィ:「よしよしっ^^」

 

ミョンス:「えっ・・・ははっ、子供扱い?」

 

リリィ:「いや、別に?イメージ?」

 

ミョンス:「いきなりもうイメージあるんだ?」

 

リリィ:「第一印象に決まってるでしょ?さっそく来たからちょっとやってみて。」

 

ミョンス:「うん・・・。ありがとうございます・・・。¥850です。」

 

リリィ:「・・・・そう、小計押して・・・オケッ! ありがとうございましたぁ~。」

 

ミョンス:「はぁ~~~・・・・。」

 

リリィ:「緊張する?w大丈夫だよ、すぐ慣れるから。」

 

ミョンス:「うん、そうだね。あっ、ねぇねぇ・・・俺さぁ・・・。」

 

リリィ:「うん、何?」

 

さっきまでの真っ直ぐな横顔が、急にフニャリとした笑顔になった。

なんか、その瞬間、思わず二度見してしまった。

 

ミョンス:「えっと・・・なんだっけ?俺、今何言おうとしたんだっけ・・・・。」

 

リリィ:「あははっ!!何それぇ~w でも、そういうのあるよねっ!

    すっごい分かるっ!!wwwんで、思い出そうとすればするほど

    分かんなくなっちゃうの。」

 

ミョンス:「そーそーそー!!何なんだろうね・・・アレって。」

 

リリィ:「さぁ・・・?何なんでしょうねwでさっ!ほんっとにどうでもいい時に

    思い出さない?例えば家に着いてからとか、お風呂に入った瞬間、

    トイレに駆け込んだ瞬間とかっ!!」

 

ミョンス:「ちょっと・・・・wここカフェだし、トイレに駆け込むとかそんな大声でっ;;;」

 

リリィ:「あっやだwごめんw」

 

 

 

 

ミョンス:『・・・でもさ、実は俺もトイレで思い出すことあるよ・・・。』

 

 

俺はリリィの耳元でそう囁いた。

周囲にいるお客さんに聞こえないように、上目遣いにキョロっと見渡しながら

自分もそういうことがあると伝えた。

 

 

 

リリィ:『おっ!やっぱ同じだねw私達気が合うじゃんっ!』

 

 

そうリリィも小声で言う。

しかし、背の高い俺の耳には届かないからと判断したのか、

左腕をグイッと引っ張り、体を傾けさせてから、口元を少しだけ手で覆いながら言った。

 

なんだか急に熱が上がったかのように体中が熱くて、口を開けて無意味に目を

横に流し、それから今度は口を一文字に直しては、また目を横に流すことを

繰り返して、この体の変な熱さを紛らわせた。

 

瞬間、こんな絵本を思い出してしまった・・・・

 

【黒い翼とシマネコと月夜のキョロリ】

 

キョロリキョロリと目が動く。

路地裏のシマネコが、ゴミ箱の上でひっそりと身構えて、月夜に光らせているように。

でもそれはいつもと違う。

それは何かを狙っているんじゃない・・・

その目は縄張りに怯えた、シマネコの不安だった。

 

そんなシマネコを突如現れた少女が拾い上げシマネコの瞳をジッと見つめた。

驚きすぎて逃げられないシマネコ。

全身の毛が逆立ち、その瞳孔は、まるで二重の月か、

それとも中身のない月のように瞬時に金色に縁り、大きくて丸い黒になった。

少女は肩をすくめて、まるでそのシマネコを隠すように抱え、

キョロリキョロリとあたりを見渡す・・・・

 

シマネコ(こいつは猫みたいにキョロキョロしてるな・・・)

 

そんなシマネコを気にもとめずに、少女は唇を閉じたままシマネコを抱えて走った。

シマネコも驚いたけど、何も言わない少女の胸から伝わる鼓動が、

まるで自分と同じように聞こえて気持ちよくなってしまった。

 

不安な時の僕の鼓動だ。

 

シマネコはそう思って、親近感を覚える。

 

 

 

シマネコ(ここはどこだ・・・・?またキョロキョロしてる・・・お前は何故猫みたいにする?

         ・・・またそうするから今日からお前はキョロリだな。)

 

 

その少女がよく行く公園なのだろうか・・・少女はシマネコをギュっと掴んで

絶対に離さない覚悟でもしているかのように抱え込んで、走った勢いのまま

『月山』の穴に向かって登り始めた。

 

潜り込んだ。

真っ黒な夜空とほとんど黒いシマネコ。

お月様だけが二人を見守っている・・・・

そんな中に。

 

月山とは、公園にそびえ立つ、今にも遊んでいる子を覆い被せて食べてしまうような

大木と大木の間にある、コンクリートで出来た大きな山だ。

それには滑り台もついていて、高さは10数メートルもあるだろうか・・・

小さな子には到底上れはしないその月山は、小学生の間では登れることが

高学年としてのステイタスのようになっている。

 

登れない者はバカにされる。

ちっさな社会がそこにはあった。

 

その月山にキョロリはシマネコを抱えながら、片手で手すりを掴んで頂上を目指したが、

真ん中辺りにある、踊り場的な部分に急に体をひねりジャンプして入り込んだ。

中間地点であるその踊り場に

その穴は、月山に大きな排水管みたいなものが埋め込まれている穴だ。

中間地点であるその踊り場に行くにしたって簡単じゃない。

 

その踊り場の幅はわずか1メートルだろうか・・・

そこに足を乗せるには、月山に付けられている手すりは頂上まで繋がっていて、

中断して入りやすくはなっていなくて、その手すりをくぐって足を掛けるように

左にジャンプして上がる仕組みだ。

そして、こんな中間地点にさえ、大人には気づけないちっさな社会がそこにはあった。

 

真ん中にさえ行けない情けなくて、弱虫な奴・・・・

 

そんな風に後ろ指さされるのだ。

 

だけど、キョロリは見たところ高学年でもないのに、

持ち前の運動能力で素早くそこに隠れたのだ。

 

今日は満月。

 

シマネコはお月様とキョロリを交互に見たんだ・・・・

 

何も言わずにここまできて、何も言わずに大雨をこの体に落としたんだから。

雨が止まない理由と、シマネコがここにいる理由はきっと同じなんだ。

 

ずっと人目を気にしてた。

ずっと誰かの目を恐れてた。

 

だれかの目ってなんだろう?

 

特定の人?

いや、そうじゃない・・・・

それはきっと【人の心】なんだ。

 

人の心が恐ろしくて、キョロりキョロリとしてしまうんだ。

 

キョロリ:「シマネコ・・・・ごめんね?連れてきて。でも、ここの眺めは最高なんだ。」

 

シマネコ:「ニァア~・・・・」

 

キョロリ:「フフッ?そうだよね?この上はもっと最高だよ?でも、怖いよ?行く?」

 

             シマネコ(お前・・・笑えるんだな。)

 

シマネコ:「ゴロゴロゴロ・・・・」

 

 

少女は土管の中から出て、頂上への道へと踏み出した。

本当に急な斜面・・・・

クライミングみたいにして登らなきゃならない。

その事になんの意味があるかなんて分からないのに、みんな必死にこの山を登るのを

少女は知っていた。

 

だけど少女は”見ていた”だけ。

 

正直馬鹿らしかった。

なんでそうまでしてその山に登るの?

 

 

 

少女は”遊ぶ”事を知らなかった・・・・・

 

いや、誰かと遊ぶ事で何故あのように笑えるのかが理解できなかった。

何も話していないのに笑うなんて・・・とさえ思っていたのかもしれない。

 

でも、少女は本当はその事に気づかないフリをしている。

 

ざわざわざわざわ・・・・・・・・・・

 

【大木が囁きあう声に後押しされるように、

              少女はつま先を中間地点から出す・・・。】

 

 

もしかしたらその事を知ろうと、今、

偶然夜更けに出会ったシマネコと登っているのかもしれない。

少女は再び無言で登る。

あの子達と同じようには笑わないけど、必死に月山の頂上を目指し始める。

シマネコを抱えているせいもあって、上の方に近づく度に、

体を支える腕がしびれるような痛みが増してくる。

 

それでも少女は何かと戦うかのように、意地でもシマネコを放すことはしなかった。

 

シマネコは自分で登れるのに・・・

とでも言いたげに、ヒゲをピクピクと動かしながら、少女の顔を見上げる。

風はそよそよと吹いて心地よいが、少女は少し汗ばんできているようだった。

 

 

少女はキョロキョロとはしない・・・・

 

ねぇ、お前をキョロリと呼んでみたけど、もうそう呼ぶのはやめるよ。

だってお前・・・もうキョロキョロとしてないもんな。

 

 

頂上についたキョロリは清々しい顔のまま目を閉じて、風に当たった。

 

キョロリ:「はあ~~~~~っっ・・・・気持ちいい。

ねっ?あ、お前、名前何て言うの?・・・・って、喋らないか。」

 

シマネコ:「ニァ~~・・・・。」

 

キョロリ:「ニア?ニアっていうの?」

 

シマネコ(違うけど・・・)

 

キョロリ:「ねぇ、ニア・・・・私ね。こんな風に頑張れば良かったのかな?w

いつもみんなを見てただけ。何もしなかったし、しようとも思わなかった。」

 

ニアはキョロリに腕から下ろしてもらった。

 

ニアはキョロリの足にまとわりついてスリスリと寄り添って、甘えてみせる。

 

キョロリ:「あはっw私もニアみたいに甘えたら良かったんだろうけど・・・

できなかったのよ。私知らないの。何にも知らないの。」

 

ニア:(この人間・・・なんだか好きだな。俺と似てるのかも・・・何も知らずにいて

それが当たり前で、知ろうともしなかったから、俺は孤独になったんだ。)

 

それからニアは自分の話をたくさん聞かせてくれた。

孤独だったこと・・・・

誰かに打ち明けることは怖いことだ。

悲しむと虚しい事。

誰かがいるから悲しめるんだって分かったって言うんだ。

 

それが当たり前に育ったから知らなかったと・・・・。

 

それから言葉にはまじないが掛かってるから、安易に声にしちゃいけないって

俺に凄く訴えてきた。

俺は人の言葉なんて喋れないから関係ないのに・・・・

 

それでもキョロリ・・・お前は初めて声に出してるんだね?

俺にだけ、話してくれたんだな。

俺、嬉しいってこういうことなんだって今、わかった気がするよ。

 

キョロリ:「ねぇ、ニア・・・・それでもね?私は生きていたいんだよ。

おかしいでしょ?悲しくても怒っても、声に出せないのにね。」

 

ニア:「ニャオ~ン・・・・ニャオ~ン・・・・・・ニャオ~~ン・・・・。」

 

キョロリ:「どうしたの?大丈夫・・・傍にいるよ?

      ニア・・・・?」

 

気づけば俺が泣いていた。

人間って、大変なんだな。

でも、これからは俺が傍にいてやるから、キョロリ、お前も沢山泣けよ。

 

思えば、この時から俺はキョロリのことが大好きだったんだろうな。

キョロリが大切な唯一の存在になったんだ・・・・

 

キョロリ:「ニア、この月山に登れたらね?目を閉じて月に向かってお願いすると

      その願いが叶うんだって。」

 

ニア:「・・・・・。」

 

スリスリ・・・・・

 

キョロリ:「お月様・・・・・どうか、ニアが人間になれますように・・・。」

 

俺が?

人間に??

ははっ・・・バカだなぁ・・・・そんなの叶うわけないだろう?

あれっ・・・・?なんか体が熱いや・・・おかしいな・・・・

目が痛いよ。

全てが熱くて痛くて、俺は座ったまま首を落とした。

 

キョロリは目を開けて、お月様をじっとみつめたまま、言葉にはまじないがあるから・・・

と、また俺に言ってちゃんと俺を抱えて下に降りていった。

 

地面に着くと、キョロリは俺を下ろして、しゃがみこみ俺の頭をハゲるかと思うくらい

撫で回してくれた。

 

俺はハゲネコにはなりたくないぞ・・・・

 

そう思いながらも気持ちが良くて、思わず目を細めてしまう。

 

キョロリ:「ニア・・・・付き合ってくれてありがとう。ニアの家まで送ってくね?」

 

そう言ってキョロリは俺が元いた場所まで歩き出した。

俺を・・・・抱えずに。

 

普通の猫ならそっぽ向いてどこかに消えるんだぞ?

なぜお前は俺を運ばない?

この時、到底理解できなかった・・・・

 

キョロリはゆっくり歩いたり、早足で歩いたりを繰り返す。

そして、幾度となく振り返るんだ。

俺は跳ねるように歩き、時には小走りにもなった。

このまま別れるなんて嫌だ・・・・

俺を連れてってくれよぅ!!

 

そう何度も叫んだけど、神様は俺に”ニァ~”という声しか下さらなかった。

 

結局、元のいた場所にまで来たけど、キョロリは足を緩めなかった。

一瞬、元居た場所で、振り返って俺がいるか見たけど・・・・

俺は1も2もなく歩き続ける。

元居た場所なんか要らない・・・キョロリと一緒にいたい。

 

だけど、俺はあの時、お月様に願い事をしなかったから・・・・

 

後悔ばかりがこの小さな体を痛める。

俺も願えば良かったって。

 

 

 

 

 

 

つづく