「ダークタワー」　★★★～原作大事にしろや

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2018』の掲載にあたって」

原作大事にしろや ★★★

（2017年／アメリカ／96分／The Dark Tower）【　監督　】ニコライ・アーセル【　原作　】スティーブン・キング

ダーク・タワー全巻完結セット (新潮文庫)

Amazon

【　出演　】イドリス・エルバ
マシュー・マコノヒー
トム・テイラー
クラウディア・キム
フラン・クランツ
アビー・リー
ジャッキー・アール・ヘイリー

【あらすじ】

　学校で問題ばかり起こしている少年ジェイクは、巨大なタワー、拳銃使いの戦士、黒衣の男の夢を毎晩見ていた。

　ある日、施設に入れられそうになったジェイクは逃亡、その先で時空を超えた“中間世界”に迷い込み、そこで夢で見た拳銃使いの戦士“ガンスリンガー”のローランドと出会う。

　ローランドは、2つの世界のバランスを保つ塔“ダークタワー”の最後の守護者であり、タワーの崩壊を目論む黒衣の男ウォルターを倒すため旅を続けていた。

　一方ウォルターは、タワーを破壊できる特殊能力を秘めたジェイクの身柄を拘束しようと目論む―

【コメント】

　さて、今回レンタルした映画は、ホラー作家と言えばこの人、スティーブン・キング御大の原作によるSFアクションである本作。劇場公開当時非常に気になっていて、観に行こうかどうか迷っていたものの、どうにも引っかかるところがあって（後述）、劇場での鑑賞はスルー。レンタルで借りようとしていたものの、なかなかの人気作品のようで、20本くらいあるDVDがすべてレンタル中。この度やっとこさ数本残っていたので、有無を言わさず手に取った次第です。

　うーむ、これさ、キング御大はどう思ったのかね。原作未読の僕が言うのもなんだけど、この「ダークタワー」なる小説、キング御大自身がライフワークと称した全7部にも及ぶ超大作なわけですよ。つまりは思い入れが強いはず。そんな小説の映像化である本作が、一体小説のどこまでを描いたのかは定かではないですが、こんな1時間半程度のしょっぼいB級SFアクションに仕上げて果たして良いものなのか。もうちょっと原作大事にしろや！原作が泣いてるぞ！キング御大も泣いてるぞ！と僕は物申したい。そもそも僕が劇場での鑑賞をスルーした理由は、まさにその点が非常に気になったからなんです。

　いや違うんです、本作はこれからまだまだ続くんです。ガンスリンガー・ローランドとジェイク少年の旅はまだまだ長いんです。それこそ「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「ハリーポッター」シリーズばりの超大作になるように続いていくんです。それならばまだ分からんでもないが、正直、続きそうな気配を感じないし、そもそも続けようという気合も感じられない。運よく映画が当たったら続編も・・・なんて棚ボタな気持ちがラストシーンから垣間見える。あのねぇ、原作7部作よ。キング御大の人生を懸けたライフワークのコンテンツよ。作り手はその気持ち組んでやれよ。しかも、御大の書いた「ザ・スタンド」とか「アトランティスのこころ」とか「IT」といった代表作と密接な世界観を共有しているわけですよ、ダークタワーは。“スティーブン・キング・ユニバース”という新たな映画の世界観を構築することだって可能なわけですよ。事実、本作には「IT」のペニーワイズの遊園地跡が登場してくるわけだし、他作品とのクロスオーバーは必要不可欠なコンテンツのはず。なぜやらない、やろうとしない。原作に対する扱いがとにかく酷いと感じる。

　そんなことは抜きにしたとしても、映画自体はなんとも地味ーなB級モノに落ち着いた印象。一本の映画としてもインパクトは薄い。コンテンツを雑に扱った悪しき例だと僕は思いますね。