少しでも楽になるのならと、毎日 通院へ通いました。
しかし、リロは日毎に弱って行きました…
ある日、シンクへ登ろうとして踏ん張りが効かず、滑ってしまい
床に落ちてしまったのです。
慌ててステンレスの部分に滑り止めのマットを敷きました。
しかし…2度と使うことはなかったです。
キッチンを見上げ
「僕はもう登れる力はないんだ」
そう悟ったようでした…。
それでも、キッチンのシンクが冷たくて気持ちが良いのでしょう。
寂しそうに見上げてると、抱っこしてシンクに置きました。
少し寝て、移動したくなった様子を見たら
シンクから降ろして…。
玄関にもよく行っていました。
私はいつもリロの側で座っていました。
まだ肌寒い季節なのに、冷たい所へ行くリロ。
冷たいところは良くないと言われていましたが、リロが穏やかに過ごせるならと
好きなようにさせました。
この頃にはもう…強制給餌もやめ、口を潤したり、好きなものに反応しないか、目の前に置いたりする程度でした。
嫌なことをいっぱいしていたのに
「おいで」っていうと大きなお腹を引きずって
お膝に乗り、甘えます。
私のそばにいたいのか、私が長くいる事の多いキッキンで横になることが多かったです。
あんなに可愛い声をしていたのに
私の姿が見えないと
かすれた、声にならない声で、私を呼びます。
出来るだけ側に…
胸水も溜まり始め、夜は本当に苦しそうでした。
一生懸命息をしているのが分かりました。
「リロ…ごめんね。頑張って。
ママ、リロの側にいたいよ…。」
リロは悲しそうに見つめてきます。
しんどいよ、ママ…そう言ってるようでした。
もう、どんな体勢でも辛いのです。
抱っこも出来なくなりました…。
仕事から戻って来たサトに
「リロを楽にしてあげたいの…。」
声を絞り出して伝えました。
リロはそれを横で聞いていました。
「リロ…。お前はよく頑張ったよ。偉かったな。」
そういうと、サトは静かにリロを撫でました。
すると、突然リロが起き上がり
私の膝を通過してサトの腕の中に入って行きました。
サトに抱っこされに行ったのです。
怖がりのリロは、仕事で朝早くて夜遅い、ほとんど家にいないサトに懐いていませんでした。
撫でようとすると逃げ
無理やり抱っこすると迷惑そうな顔をし
何とか逃げ出そうともがいていました。
そんなリロが、初めて自分から抱っこされに行ったのです。
サトの目から、大粒の涙がこぼれ落ちました。
その日、サトとリロは
リビングで一緒に寝ました。
朝を迎えました。
体温は34.1度しかないのに
冷たいところへ、冷たいところへといくリロ。
まだ風の冷たい季節でした。
窓を開けてあげると、お日様にあたりに行きました。
気持ちよさそうに風を感じ
ひんやりした空気を楽しんでいるようでした。
呼吸が落ち着いていました。
私は…決心が揺らぎました…。
まだ大丈夫なんじゃないか。
側にいたい…!
結局、私は決断出来ませんでした…。
リロ…リロ…ごめんね…。
本当なら、ここで決断すべきだったんです。
朝は呼吸も落ち着いていて
夜になると苦しくて…
夜、苦しんでいるリロを見て、明日こそは楽にしてあげようと思い
朝になると落ち着くから、もう少し頑張って!と思う…
こんな事を繰り返してしまいました。
利尿剤をいつもの点滴に加え始めると
自分でトイレのコントロールをするのが大変だったようでした。
シーツに最初真っ黄色なオシッコを・・・
1度 失敗し、その後はトイレで3回。
オシッコが出て、おなかの圧迫が少し楽になるのか
お水とちゅーるを自分から少し飲みました。
休み休みしか移動出来なくなったリロ。
夜中の事です。
急に立ち上がり、どこかに行こうとしたリロは
必死に移動して、その場に希望する物がなかったのか
絶望的な顔をして倒れるように座り込みました。
ハッ!としました。
いつもは病院へ連れて行くキャリーをそこに置いていました。
キャリーを目の前に置くと、慌てて入り、シーツにオシッコをしました。
あぁ…トイレに行く余裕がなかったんだ…
ここにキャリーがある。シーツを敷いてるからここで。
そう思って必死で動いたんでしょう。
やっと移動して来たのにキャリーがなかった時のリロの気持ちを思うと、胸がしめつけられました。
どうか、どうか
これ以上苦しみませんように。
もう迷わないよ。リロ。
冷たい雨の日です。
日向ぼっこさせてあげたかったな…。
「サト。決めたから。もう…もう十分…。」
朝、予約を取るために一人で病院へ行き
サトが仕事を抜けれる定時後、18時に病院へ来る事を伝えました。
私達家族が決断したのは「安楽死」でした。
予約から戻ってからはリロの側にいました。
今までで一番落ち着いた顔をしていました。
キッチンのボックスで寝ているリロを見ながら
それでも迷い、ずっと泣いていました。
安楽死をするにあたっての心づもり。
本当に苦しまないのか。
どんな処置なのか。
リロの横で調べていました。
再び迷いが出始めた時でした。
ボックスの中で動いたので
起きたのかな、トイレかなって思っていると
ボックスの蓋が飛び上がりました。
バタバタともがき苦しむリロ。
泡を吹き、失禁しました。
「リロ!大丈夫よ、リロ!落ち着いて!ママはここだよ!」
ずいぶんと長く感じました…。
発作が落ち着くと、リロは以前のように
クリクリのパッチリしたお目目で私を見ていました。
そう…この写真が一番近いです。
こんなお顔でした。
リロに「抱っこする?」て聞くと
「あー!!」
そうチカラいっぱいに応えたのです。
声も出なくなっていたリロが
まるで病気ではないような、はっきりした意識で
本当に元気な時の顔のまま
元気にお返事しました。
涙が溢れでて、「リロ、ママのこと好き?」て聞くと
「あー!!」
と元気にお返事します。
何度か会話をして…リロはまた腕の中で眠り始めました。
もう苦しくて、抱っこもされなかったのに…
それから病院へ向かうまでの2時間半。
私も少しも動かずに、リロも抱かれたまま。
私の足はしびれて感覚がなくなっていました。
でも、私達はすごく特別な時間を過ごしました。
すごく、すごく、幸せな時間でした。
もう迷わないから。
私の決心が変わらないように、発作を起こしたんだね。
ごめんね、リロ。
大丈夫だよ、リロ。
ありがとう、リロ…。
病院で、サトと私の腕のなかで
幸せそうに眠るように旅立って行きました。
帰ったら、美味しいご飯をいっぱい食べようね。