遺言執行者の選任 | 愛媛県松山市の司法書士事務所、山岡信己のブログ

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遺言執行者の選任

遺言執行者の選任の要否について
遺言執行者を、遺言で定めておいたほうがいいケースが多いですが、
遺言執行者を遺言で定める必要が無いケースもあります。
しかし、そのケースであっても、遺言執行者を定めておいたほうが好ましい場合があります。
どういう効果があるのでしょうか。

たとえば、
「不動産を長男に相続させる」
という遺言書について考えてみます。

相続人に対し、「相続させる」という遺言があった場合、
遺言執行者によることなく、相続人が単独で財産の移転を行うことができます。
この遺言の場合、不動産取得した相続人は、司法書士に依頼すればそれで
不動産登記を備えることができます。
なお、この場合は対抗要件を備えなくとも、第三者に対抗できるとされています
(最高裁判所・平14年6月10日判)
ということは、この遺言の場合、財産移転は相続人が行うので、
遺言執行者は、この遺言の場合必要ないとも考えられます。

しかし、
遺言執行者は、「相続させる」という遺言の場合においても、
不動産を取得した相続人(長男)以外の者が不動産を移転させてしまった場合において、
その者に対して、遺言執行者は抹消登記手続や真正な登記名義の回復を求めることができるとされています。
(最高裁判所・平11年12月16日判)

つまり、
相続人に対し「相続させる」遺言では遺言執行者の役割が表面的にはありませんが、
妨害行為があった場合など、潜在的に遺言執行者の権限があります。

よって、
必ずしも遺言執行者が必要でないケースであっても、
遺言執行者を選任しておいたほうが好ましい場合もあるのです。

遺言執行者の指定の要否については、上記のように不要な場合であっても、
遺言の文言だけでは無く、相続関係などあらゆる事情を考慮して考えるのですが、

遺言者の意思実現、
死んでしまった人がやりたかったことが実際に行われるためには、遺言執行者を選任しておいたほうがよいといえるでしょう。




遺言執行者の妨害排除請求でなくても、
財産取得した人が弁護士に妨害排除を依頼すれば足りるから、
遺言執行者の妨害排除請求自体考える必要は無い、という意見もありますが、
そのケースであっても、遺言執行者を指定しておいたほうがよい場合も中にはあります。
たとえば、不動産を遺贈する、という場合で、第三者に不動産が譲渡されたとき、
遺言執行者が無い場合は対抗関係となり、
遺言執行者がある場合は絶対的無効となる
といった具合で、
どのように権利が動くのかという効果に差が出るためです。








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