いろいろな伏線はそのままに原作者様他界により本作がとうとう最後となってしまったフロスト警部シリーズ。
相変らず下品で毒舌吐きまくりだが愛すべきフロスト警部を主軸に、同時並行して立て続けに起こる事件に右往左往するデントン警察署という構造はいつもどおり。基本的にユーモアサスペンスなのですが、相変らず事件の方は微妙に、というかかなり陰惨で、けっこう容赦はありません。
フロスト警部のくたびれっぷりは最終巻で行き着くところまで行き着いた感じもありまして、だからこそ、妻と死別した理由をあてもなく思い浮かべたりする様子は、地味に心に響きます。
とはいえ、署長をおちょくったり、赴任してくる警部をコケにする腕前はやはり読んでいて痛快で、やっぱりいつものフロスト警部なのであります。
事件の真犯人は本編をどう読んでもたどり着けません。だから純粋にミステリとして楽しむというよりも、通俗的なフロスト警部の言動にニヤリとしたり、ワーカホリックな職務遂行ぶりに感心したり同情したり・・・、というか、やや後者の方に同調することで感じるシンクロニシティに悲しくなることなのかもしれません。
人手不足だって外が死ぬほど寒くたって多忙のあまり空腹だって、どこかの誰かが対処しなければ世の中は回っていかないのです。
現場ってそういうもの。
そして、そういう現場の努力を上の方は全く理解できていない(かつては自分達も現場にいたのにも関わらず)。どうせやらなきゃならんのだからやるべき事はとおりいっぺんさっさとすませ、上でふんぞり返っているボンクラどもには痛烈な皮肉をガツンとお見舞いする。とまどう彼らを見て、溜飲を下げる、下げなければならないのが庶民の悲哀なのです。
ムチムチプリンプリン(死語)の検死官とのラブロマンスの前にシリーズが終了となったのはたいへん残念なのですが、マンネリズムに堕するよりは、ちょっくらここらで尻をまくるってのも、なんともフロスト警部シリーズらしいな、などと思いました。
作者のご冥福をお祈りいたします。
それにしても文庫上下巻合わせて3千円近くするってのは、やっぱおかしいなぁと思いますよ。だったらハードカバーで出してくれ・・・、いや、ハードカバーはこのボリュームだと5千円は超えるな・・・。高いなぁ、いったいどこの世界線の物価なんですかね?
それにしても文庫上下巻合わせて3千円近くするってのは、やっぱおかしいなぁと思いますよ。だったらハードカバーで出してくれ・・・、いや、ハードカバーはこのボリュームだと5千円は超えるな・・・。高いなぁ、いったいどこの世界線の物価なんですかね?