最近、ERで氷がとても役に立つという文献がでました

 

Song J, et al. 

Pre-emptive ice cube cryotherapy for reducing pain from local anaesthetic injections for simple lacerations: a randomised controlled trial. 

Emerg Med J. 2018 Feb;35(2):103-107.   

 

 

 

創処置をするときに使う局所麻酔の痛みを軽減させたい!

 

という熱い論文です

 

 

 

局所麻酔の痛みと言われても、打たれたことがない人はピンとこないかもしれません

 

 

縫合など傷の処置をするときに局所麻酔をするのですが、これって結構痛いんですよね

 

傷そのものじゃなくて、局所麻酔が痛いんです

 

 

痛み止めなのに、痛みを伴って注入されるなんて馬鹿らしいけど、この痛みは浸透圧の違いから周辺の神経を刺激して誘発されるみたいです

 

まさに泣きっ面に蜂

 

 

 

もちろん痛くない方がよほどのM気質の人以外はいいでしょうから、なんとかしたくなります

 

 

 

1分間に1mL程度のスピードでじっくり注射すれば痛くないというような話もありますが、こんなんじゃ指がプルプルしちゃいますよね

 

そこで、氷で冷やすという方法で痛みの軽減を図ったのがこの研究です

 

 

 

氷の効果を調べるために、著者らは56人の患者を対象にランダム化比較試験を行ないました

 

 

介入は

 

創処置の前、ゴム手袋に1.5cm四方の氷を入れて2分冷やすだけ

 

です

 

 

冷やした群と何もしなかったプラセボ群に分けて、痛みの評価スケールを使用して局所麻酔の疼痛を評価しました

 

 ここで使われた痛みの評価スケールはNumerical Rating Scale(NRS)

 

 

痛みを0から10の11段階に分け、痛みが全くないのを0、考えられるなかで最悪の痛みを10として、痛みの点数を問うものです

 

 

よく救急外来で「人生最悪の痛みを10としたら今の痛みは何点くらいですか?」なんて聞いているあれです

 

 

 

氷を用いた群ではNRS 2.0(95%CI 1.8-3.5)

対象群ではNRS 5.0(95%CI 3.9-6.1)

 

ということで、氷を用いた群で有意に疼痛が軽減しています

 

 

2分間氷で冷やすだけなので、有害事象もなかったようです

(nが少ないですけどね)

 

なお局所麻酔時の注射針は26Gを使用しています

(やさしいですね)

 

 

 

局所麻酔の痛みって、事前に説明しておいて耐えてもらうことができれば良いのですが、小児などは結構反応するんですよね

 

注射されるというだけでかなりの恐怖を煽りますし……

 

「氷で冷やしたら痛いの楽になるよー」

 

なんて言って安心してもらいつつ2分間おしゃべりして落ち着いてもらい、痛くない注射をして鎮痛して処置をしたら、今まで以上にスムーズに治療できるかもしれません

 

 

氷をどうやって準備するかが問題になるかもしれませんが、当院はERの医師控え室に冷蔵庫を完備しておりますので、処置用の氷も冷凍庫で作成可能です

 

喜んで作成したいと思います

 

 

今年ERでは氷が熱いです!

(冷たいんだけど)