ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演要旨(2014年8月23日)

2014年8月23日

本日早朝に発表されたイエレンFRB議長のジャクソンホール会議での講演要旨です。(ロイターより転載)

講演原稿

<労働市場回復と金融政策>
回復が進むなか、労働市場にどの程度の緩みが残存するかを判断する上で、米連邦準備理事会(FRB)の二大責務と一致する雇用水準をめぐりかなりの不透明性が存在するため、ニュアンスを読み取ることが一段と必要になっている。
従って、フォワードガイダンスの改定で、政策決定は単一の指標に基づかず、労働市場や物価動向、金融情勢に関する幅広い情報を考慮するという連邦公開市場委員会(FOMC)の見解を再確認した。

<労働参加率>
2008年以来見られている労働参加率の低下には、1)定年退職、2)障害、3)学校への入学、4)労働者の失望を含むその他の要因、という4つの要素が大きくなったことが背景として挙げられる。
これらのうち、労働市場が軟調だったことが労働者の失望が増大した直接の要因だった可能性が高い。このため、労働需要がさらに増加し失望した労働者の多くが労働市場に呼び戻されると予測することは理にかなっている。
実際、労働参加率が昨年終盤から横ばいとなっていることは、労働市場をめぐる状況に著しい改善が見られていることを受け、失望した労働者が労働市場に戻りつつあることを一部反映している可能性がある。
これが事実なら、労働参加率の循環的な低下は和らいだ可能性がある。

<パートタイム就業者>
労働人口の5%近くを占めており、失業率に対して、また歴史的標準と比較してパートタイム就業者の数は多い。そのため現在の失業率水準は、労働市場に残る緩みの度合いを過小評価している、との見方を裏づける根拠の1つとなっている。
経済的理由からパートタイム職に就いている人々の割合が長期的にどのような水準に落ち着くのかを見通すことは困難だが、選択の余地がなかったパートタイム就業者がリセッション(景気後退)時から急増し、その後も減少ペースが鈍いことは、景気循環的な要因が大きいことを示唆している。

<雇用>
過去1年に求人件数が大幅増加したことは、労働市場状況の顕著な改善を示しているが、求人率は景気後退時の低下からやや持ち直したに過ぎない。求人件数の増加により、雇用は加速する見込みだが、求人状況の改善に伴い雇用が伸びない場合は、企業が依然として採用増を正当化するほど成長見通しが明るくないとみていることを示しているかもしれない。一方で、雇用が抑制されている状況は、企業が適正人材を見つけることが難しい状況を示唆している可能性がある。
しかしながら、証拠を踏まえると、総じて弱い総需要が、景気後退とその後の回復期における離職、雇用水準の低迷に大きく寄与していると判断している。

<賃金インフレ>
実質賃金の伸びはおおむね横ばいで、労働生産性よりも低い伸びにとどまっている。このようなさえない賃金の動向は、名目賃金がインフレに大幅な上方圧力を及ぼすことなく、一段と速いペースで上昇していく可能性を示唆している。
また、賃金動向が歴史的に労働市場のひっ迫状況に敏感なことを踏まえると、最近確認されている名目および実質賃金の動向は、労働情勢が失業率によって示唆されているよりも軟調な状況にあることを示している。

<長期失業>
長期的に失業している労働者、および労働市場から脱落したものの景気が力強さを増した際に復帰しようとしていると思われる労働者は、再雇用に向け著しい障害に直面している。
こうしたケースでは、労働市場がさらに改善すれば、完全雇用が達成される前に一時的に賃金圧力が強まる可能性がある。

<労働市場の緩み>
われわれの目標に景気状況が近づくにつれて、FOMCの関心事項は、残存する緩みの程度、緩みがどの程度の速さで解消するか、つまりどのような条件下で異例の緩和策縮小を始めるべきかとの問題に自然と移りつつある。
これまでの私の発言で明らかなように、緩みの評価は幅広い指標に基づく必要があり、労働市場の循環的、構造的影響について困難な判断を要する。

<金融政策>
このところの連邦公開市場委員会(FOMC)声明で示している通り、政策スタンスは、最大雇用とインフレ率2%というわれわれの目標からどの程度離れているのか、また、これらの目標達成に向けどの程度のペースで進捗しているのかに関するわれわれの評価により導かれる。

 

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