Maddalena's La mamma morta
マリアカラスのマッダレーナ=「アンドレア・シェニエ」より
Andrea Chénier/Umberto Giordano作曲
アリア「亡くなった母を」
私はスタジオ録音版を持っていましたが、これは舞台の生禄です。
スタジオ版の方が、映画「フィラデルフィア」トム・ハンクス主演で使われていました。
カラスは、超高音のコロラトゥーラを軽々と歌ってしまうかと思えば、とっても重たい
ワーグナーを若い頃には歌っていました。
カラスはいっぱい悲しい思いをして育ってきた人なので、悲しみや怒りの表現力が凄いのです。
この「亡くなった母を」を、これだけ感動的に歌いきれる人を他には知りません。
かなり重たい声でないと歌えない役で、歌うにはパワーが必要です。
アリアの最後の最高音Cが、他のもっと軽い歌でCを出すより遥かに大変で、こんな風に歌い切るのは至難の業です。
つまり、テクニックが実に卓越しているのです。
それを、感じさせない程に、楽々とやってのける程のテクニシャンなのです。
それが分からない人は、「テクニックが無い」などと馬鹿な評価をします。
芸術と言うのは、どんなに難しい事をしていても、
それが難しいと感じさせない程に精巧に処理する能力が有って、初めて成り立ちます。
ああ、ここは難しそうだ、大変そうだな、と思わせるのは、芸術とは言えません。
あたかも、自然にナチュラルにやっている様に思わせる程、鍛錬する事で成り立ちます。
本当は簡単に出来る事を、わざと難しそうにして、ハラハラさせるのがサーカスです。