ミトコンドリア・イブとYアダム



聖書の創世記に、アダムとエバ(イブ)という人類始祖の男女が登場します。さすがに現代科学を駆使しても彼らの名前までは解明できませんが、人類始祖が実在したことは証明されています。

ほとんど全ての生物の細胞の中には、ミトコンドリアと呼ばれる微細な器官が存在します。この器官は、細胞内の有機物を酸化し、生体内のエネルギーを生産しています。

通常、1つの生物のDNAの中には、父親由来の部分と母親由来の部分が混在しています。ところが、ミトコンドリアのDNAだけは、母親の卵子からしか子どもに伝えられません。この特性を利用して、さまざまな人種の間でミトコンドリアDNAを比べてみることにより、女性の起源を探ることができるのです。この探索方法を分子時計法といいます。

研究の結果、ヨーロッパ系やアジア系などの人種に関係なく、誰でも共通にアフリカ人女性の特徴的な塩基配列(DNAの分子構造)を持っていることが分かりました。そして、現代女性の起源は、約20万年前にアフリカに存在した1人の女性であると結論付けられたのです。この女性の始祖を、科学者たちはミトコンドリア・イブと呼んでいます。

では、男性の場合はどうでしょうか。細胞核の中には、性の決定に影響を与えている性染色体があります。この中のY染色体と呼ばれるものは、父親から男の子にしか伝わりません。これを利用し、ミトコンドリア・イブと同様の研究を行った結果、Y染色体にも各人種共通に、アフリカ人男性の特徴的な塩基配列が見いだされ、やはり約20万年前のアフリカ人男性に行き着くことが判明したのです。この男性の始祖はYアダム(またはY染色体アダム)と呼ばれています。

人間の体の中に、自らの始祖の実在を証明できるような情報が残されていることに、自然の底知れぬ力を感じます。


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