先日、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が解任されました。ロシア・ワールドカップまで2カ月という時期での監督解任は、これまでの他国の例を見てもあまりないことで、非常事態と言えるでしょう。

 

ハリルホジッチ監督はロシア・ワールドカップ出場に導きましたが、スポンサーやマスコミ受けが良くないために、最終予選中からハリルホジッチ監督を批判する声がありました。更に、出場権獲得後の親善試合や東アジア選手権での敗戦などもあり、度々解任論が出ては、日本サッカー協会側が解任はないと火消しをしていました。

 

これらの試合では勝つことができないばかりか、試合内容についても乏しく、このままではワールドカップ本戦でも勝つのは難しいと言われていました。

 

まあ、日本はグループH4カ国の中でFIFAランキングは最も下位で、出場32カ国の中でも下から4番目20182月のランキング)ですから、日本はグループリーグを突破するどころか、グループリーグで勝つことさえも困難だと言えます。

 

個々の選手を見ても、日本は他の3カ国と比較すると劣っていると言わざるをえません。日本には、欧州チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進出したクラブチームに所属する選手はいませんし、その他の選手を見ても欧州のトップリーグで出場している選手が少なくなっています。

 

3月の親善試合で対戦したマリとウクライナとの対戦は、11敗と勝利を挙げることはできませんでした。その2カ国は、ロシアワールドカップの出場権を獲得できていないため、マスコミはワールドカップに出場できない国にすら勝つことができなかったと批判をしていました。

 

しかし、アジアは実力に比べて出場枠が多く、それに比べて欧州など他の大陸では実力の割に出場枠が少なく、イタリア・米国・チリ・カメルーンなど最近のワールドカップの常連だった実力国が予選で敗退しています。そのため、ワールドカップに出場していなくても、日本よりも格下とは言えない国もあります。

 

実際に、ウクライナは2月のFIFAランキングは35位と日本の55位よりも20位も上です。また、マリは67位ですが、代表選手のほとんごが欧州のリーグに所属していて、個々の選手を比べれば日本よりもマリの方が実績はあります。

 

 

そして、ワールドカップ本戦への出場権を獲得してから、ハリルホジッチ監督はチーム戦術を固めることよりも選手の見極めを優先していました。そのため、代表での出場が少ない選手や新たな選手を多く試合に起用しており、当然内容も結果も芳しくないものになっていました。

 

ハリルホジッチ監督としては、チーム戦術を固めるのはワールドカップ直前の合宿などで行えば十分で、また早くから日本の手の内を見せて対戦国に対策を取られないようにすると考えていたのでしょう。

 

こういったハリルホジッチ監督のようなチーム作りは、最近のワールドカップで各国が取り入れているやり方です。ある程度の戦術の共通理解のベースがあれば、細かな戦術は直前の準備で十分可能であり、逆に早くからチームのやり方を固めると、対戦国に研究されて対策を取られてしまうからです。前回のブラジル・ワールドカップの日本は、まさに対戦国に日本のやり方を研究されて、自分たちがやろうとしていたサッカーができずに1分け2敗のグループ最下位で敗退しました。

 

 

日本の選手からは、ハリルホジッチ監督が提唱していたボールを奪ってから速く攻撃するというサッカーに不満があり、ボールを細かくつなげるサッカーをやりたいという声があったようです。

 

ハリルホジッチ監督が言っていたボールを奪ったら縦に速い攻撃をするというのは、現代サッカーでは当たり前のことです。一方で、日本は細かくボールをつなぐパスサッカーの方が合っていると言われています。私も、個人の力で打開するサッカーよりもパスをつなぐサッカーの方が日本に向いていると思いますが、現在の日本のパスサッカーは、相手から少し強いプレッシャーを受けるとパスをつなぐことが難しくなってしまうようなレベルです。

 

相手が疲れてプレッシャーが弱くなるか、明らかに力が下のチームでないとパスサッカーができない力しかありませんので、パスサッカー以外のサッカーもできなければワールドカップ本戦で勝つことは難しいでしょう。

 

パスサッカーを中心にしてワールドカップ本戦で通用するかどうかは、ブラジル・ワールドカップで明らかになったばかりですが、日本の選手たちはそれを忘れてしまったのでしょうか。それとも、この4年間で日本のパスサッカーのレベルが急激に上がったと認識しているのでしょうか。

 

 

日本サッカー協会は、ハリルホジッチ監督の解任理由の主なものとして「コミュニケーションや信頼部分の問題」と発表していました。コミュニケーションの問題の方は、外国人監督の場合によく起こることですが、そこが問題にならないようにするのが協会側の仕事です。ハリルホジッチ監督の意図やチーム作りについて、協会側がほとんど把握できていなかったと言っているようなものです。そういったことが監督から選手によく伝わっていなかったのであれば、協会側の人間が監督の考えを把握して、選手に伝えることが必要だったと思います。それができていれば、選手と監督との信頼関係も変わっていたように思えます。

 

そして、ハリルホジッチ監督が日本サッカー協会の意向に中々従わなかったことが、解任の大きな理由のような気がします。ハリルホジッチ監督は、親善試合をテストの場と位置付けて臨んでいました。しかし、スポンサーにしてみると大金を出してスポンサードした試合をテストの場として乏しい内容になれば、何のために大金を投じたのかということになります。

 

また、広告代理店やテレビ局からすると、高い放映権料を払ったのに、選手や戦術のテストとして試合をしただけでなく、人気のある選手を起用せずに視聴率が低迷するのは避けたいところです。

 

ブラジル・ワールドカップの時の監督だったザッケローニ氏は、その辺は大人の対応をしていたようですが、ハリルホジッチ監督は生真面目で日本代表を強くしたいという考えを貫いていたので、上記のような日本サッカー協会の意向を受け入れなかったようです。

 

更に、日本サッカー協会の大スポンサーであるアディダスと個人契約している人気のある選手が、もし大会のメンバーから外れたり試合に出られなかったりすると、協会としても非常に苦しい立場になります。そういったリスクを確実に回避するためにも、ハリルホジッチ監督を解任したのかもしれません。

 


関連の記事) 
○国際的なスポーツ競技連盟の本部がスイスにある理由
○欧州サッカーがJリーグを見習う?
○日本サッカーを支えた高校サッカーの名将(小嶺監督)
○日本サッカーを支えた高校サッカーの名将(大瀧監督)
○日本代表がグループリーグを突破
○サッカー選手の移籍金
○サッカーでは移籍金以外にも支払われるお金がある
○伝説のフリーキックって知っていますか?

○さすが迷解説者の張本氏
○新国立競技場コンペは民主党政権時代に実施された
○サッカー実況の名フレーズ
○ワールドカップ アジア2次予選
○Jリーグの優勝チームが本日決定
○リオ五輪サッカーアジア最終予選が始まる
○サッカーの五輪アジア予選は今日イランと準々決勝
○日本がAFC U23選手権で優勝
○リオ五輪女子サッカー アジア最終予選
○なでしこは絶対に勝たなくてはならない試合へ
○なでしこのリオ五輪出場は絶望的に
○カズがJリーグ最年長出場記録更新
○カズの言葉
○日本はアジア2次予選を突破
○ワールドカップアジア最終予選が始まりました
○日本サッカーはゾーンディフェンスが苦手?
○ハリルホジッチ監督が欧州組を優先するのは?

○ロシアワールドカップ最終予選途中経過

○やはり野球には体格のいい選手が集まっている

○ワールドカップ予選で日本はアウェーUAE戦で勝利

○日本は最終予選で初めて1位に浮上

○ワールドカップ予選で日本はイラクと引き分け

○日本は6大会連続でワールドカップ出場

 


こちらをクリックしてください!