「サウンドトラック」
君が鳴らす口笛は、尖る無毒な槍になる、
街の隅々、走り抜けては心臓だけを貫いてゆく、
虐殺があった街、
悲惨な歴史を忘れたふりをする、
トカゲの眼をした支配者の、彫刻だらけ、
君と僕を睨んでる、
眼球だけが自由に回転してうろつく君を捕らえてる。
風のない午後、なぜだか旗がなびいてる、
偽りの風にはためく赤黒白のトリコロール、欲望の影、
〝彼はまだ生きている〟
虐殺者を英雄に祭り上げる愚かしさがいつか世界を狂わせる、
君は街に漂う戦争と、独裁の臭いに富を貪る支配者層を悲しんでいる、
沈鬱な表情で、口笛を鋭い矢にして走らせる、
〝自由と平和と愛し合う幸せを〟
新しい旗を掲げる地下の人々、弾圧された移民の子供たち、
革命を誓い合う、十字架ナイフ、
君はハーモニカを鳴らしてる、
ありふれたブルーズ・コード、
音色に気づいた独立主義者は地上で旗を振り始める、
弦の足りないアコースティック・ギター、
ドラム缶を錆びたナイフの柄で叩く、
集まる手拍子、前列には歓声あげる少年少女、
指笛、笑みと囃子声
生まれたばかりのバンドは街角をステージに、
新しい音楽を奏でてる、
けたたましいリズムに乗って、
祈りを歌う痩せっぽちのビーチガール、
トランペット、ベロアスーツのチンピラはハットを投げて、
アジテーターは夜を統べる銀髪だった、
〝今夜世界に火を放て〟
手を繋いで踊り狂う、ぶつけるボトル鳴り割れる、
風葬の参列はしばらく死を忘れてる、
君はハーモニカを棺におさめ、
言葉をナイフに空に突き刺している、
音楽は鳴りやまず、歌声も終わらない、
音楽は鳴り響く、騒々しくも痛みまで乗せ、
喧騒だらけに湧き立って、口笛たちが槍になる、
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