「潮騒のゆりかご」
後ずさる波飛沫、砂の上には置き忘れた貝の殻、
渚にゆりかご、老夫は手紙を広げてる、
船乗りだった若かりし、港々を転々と、
渡り鳥と旅したころの、薄れつつある記憶を手繰る、
仰ぐ空には月の裏側、凹凸数えて夢を語った、
途上に果てた人と想いと、淡く苦く甘い刻、
無言を連れて振り子のように、瞬きごとに遠ざかる、
刻は連続、繰り返しだと錯覚を、
気づけば右手に木の杖と、霞む視界に揺らめく言葉、
かつての水夫は享楽だった、刹那のころを振り返る、
二度と戻ることはない、過ぎゆき還るものはない、
水気を帯びた海の風、花の匂いを運びくる、
潮が騒ぐゆりかごで、
いつかの少年、眠るように夢を見る、
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