明けたばかりと思った今日も、すでに陽は落ちてゆく、
過ぎ去る日々を慈しむには僕にはまだ早いらしくて、
明けるころの月の匂い、また再び闇にゆく、
ショーケースに見た自転車は、テント前でピエロが乗ってた、
前輪のやたら大きなおどけたやつで、
もう彼は素顔だろうか、赤い鼻を思い出す、
またどこかで子供達にキャンディーを小躍りしながら配ってるかな、
放した風船、空の青みに溶け込んで南の向こうへ流されてった、
夏の空に散る風船、色はとりどり、原色ばかり、
いくつか樹に引っかかる、いずれ川へ流される、
見えなくなるまで見ていたい、感傷なんだと分かってて、
バイバイ、サーカス、夏の日の束の間の、
弾け飛ぶソーダにも似た甘い夢にうつつをぬかした、もう逢うもないだろう、
メイク落としたピエロが手を振る、僕はそれが誰なのか、
大人になるまで分からなかった、後輪巻き上ぐ砂煙、埃の匂いは憶えてる、
いまでもずっと憶えてる、あの日咲いてた花の名を、
僕はいまだ知らないままで、視点がずっと高くなっても、
近くで見たその色をいまでもずっと憶えてる、
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