ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「鉱山」

2017年10月10日 | 旅の豆知識
 旅行先で、鉱山を訪ねたことはありませんか。現在採掘されている事業所は、特別の場合でないとなかなか見学できませんが、廃鉱となってしまったところは、観光坑道や資料館などが作られて、坑道内を見学できたり、鉱山についていろいろと学ぶこともできるのです。中には、トロッコ列車に乗って、坑道の中に入り、電動人形によって、当時の採掘の様子が再現されているところも出来ました。
 鉱山で採掘された鉱物は、日常生活に欠かせない製品になっていることも少なくないので、いろいろと知っておきたいところです。
 旅行先で、鉱山を見学できる機会があれば、ぜひ立ち寄ってみることをお勧めします

〇「鉱山」とは?
 「鉱山」とは、地中に存在する有用鉱物を探査・採掘し、選鉱(有用鉱物と廃石とを選別)・製錬(原料鉱石から必要とする金属を抽出し純度の高いものにすること)して、主として工業用の原料として供給する事業所の事で、基本的には日本の「鉱業法」に基づく鉱物を採掘する事業所に、採石場、石切場などを加えたものが広い意味での鉱山といえます。

・「鉱業法」第3条によれば法定鉱物とは次の41種とされています。
 金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、蒼鉛(そうえん)鉱、錫(すず)鉱、アンチモニー鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、砒(ひ)鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、燐(りん)鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスファルト、可燃性天然ガス、硫黄(いおう)、石膏(せっこう)、重晶石、明礬石(みょうばんせき)、蛍石(ほたるいし)、石綿、石灰石、ドロマイト、珪石(けいせき)、長石、ろう石、滑石、耐火粘土(ゼーゲルコーン番号31以上の耐火度を有するものに限る)および砂鉱(砂金、砂鉄、砂錫その他沖積鉱床をなす金属鉱をいう)。

 しかし、有用鉱物を採掘する事業場は、金属鉱山(金、銀、銅、鉄などの金属鉱石を採掘)と非金属鉱山(石灰石、ドロマイト、硫黄、石膏、珪石、ろう石、耐火粘土などの非金属鉱物を採掘)に大別され、石炭を採掘する事業場は炭鉱、石油を採掘する事業場は鉱場と称して鉱山とは区別することが多いのです。
 日本では、『古事記』『日本書紀』などに神代の採鉱、精錬に関する記述がみられるほど歴史が古く、古代・中世・近世に至るまで、日本各地に鉱山が開発され、採掘が続けられてきました。しかし、最近50数年の間の鉱山の盛衰は劇的とも思えるほどの大きな変化を遂げています。金属鉱山の多くは、地下資源の枯渇と坑内条件の悪化や安価な海外産の輸入増加により、閉山に追い込まれるところが続出しました。これに対して、非金属鉱山の中の石灰石鉱山等は採掘が続けられています。これは、石灰石資源の豊富さ、技術の飛躍的向上および合理化の進展によるものと考えられています。現在では、金属鉱物の不足分は海外からの輸入に頼ることになりました。

☆見学できる鉱山跡のお勧め(炭鉱を除く)

(1)細倉鉱山跡(宮城県栗原市)
 ここは、金・銀・鉛・亜鉛を採掘していた鉱山で、その歴史は古く、平安時代前期の800年代から始まったと言われています。近年は、三菱マテリアル・細倉金属鉱業(株)によって採掘されてきましたが、1987年(昭和62)3月に閉山するに至りました。しかし、1990年(平成2)から、「細倉マインパーク」として、昔の坑道跡(777m・所要時間約1時間)が、観光用に再開発されていて、中を見学できるようになったのです。鉱山の歴史がいろいろと解説してあったり、人形模型によって採掘の様子を復元してあったり、「宇宙創生空間」という摩訶不思議なところもあって、なかなか面白いものでした。

(2)足尾銅山跡(栃木県日光市)
 この銅山は、室町時代に発見されたと伝えられていますが、江戸時代に幕府直轄の鉱山として本格的に採掘が開始されることになりました。銅山は大いに繁栄し、江戸時代のピーク時には、年間1,200トンもの銅を産出していたとのことです。その後、採掘量が減少し、幕末から明治時代初期にかけては、ほぼ閉山状態となっていました。しかし、1877年(明治10)に古河市兵衛が足尾銅山の経営に着手し、数年後に有望鉱脈が発見され、生産量が増大しました。1905年(明治38)に古河鉱業の経営となり、急速な発展を遂げ、20世紀初頭には日本の銅産出量の約40%の生産を上げるまでになりました。ところが、この鉱山開発と製錬事業の発展のために、周辺の山地から坑木・燃料用として、樹木が大量伐採され、製錬工場から排出される大気汚染による環境汚染が広がることになります。禿山となった山地を水源とする渡良瀬川は、度々洪水を起こし、製錬による有害廃棄物を流出し、下流域の平地に流れ込み、水質・土壌汚染をもたらし、鉱毒問題を引き起こしました。1890年代より栃木の政治家であった田中正造が中心となり国に問題提起をして、鉱毒事件の闘いの先頭に立ったことは有名です。1973年(昭和48)に閉山しましたが、今でも銅山跡周辺に禿山が目立っています。尚、現在は足尾銅山観光などの観光地となり、資料館や坑道が見学出来るようになり、国内最大級の坑内観光となりました。

(3)佐渡金山跡(新潟県佐渡市)
 江戸時代に幕府直轄の金山があった所で、幕府の財政を支える上で、大きな役割を果たすと共に、罪人の流刑地としても有名になりました。今では、「史跡佐渡金山」として、資料館ができ、坑道が観光用になり、電動人形によって、当時の採掘の様子が再現されています。金山遺跡のうち相川鉱山関係遺跡が「佐渡金銀山遺跡」として、1994年(平成6)に国の史跡に指定されました。また、大立竪坑櫓、大立竪坑捲揚機室、道遊坑及び高任坑、高任粗砕場などが「旧佐渡鉱山採鉱施設」として、2012年(平成24)に国の重要文化財に指定されています。

(4)土肥金山跡(静岡県伊豆市)
 この金山は、江戸時代に第一期黄金時代を迎えて盛んに採掘されたのです。その後、明治時代から昭和時代にかけては、第二期黄金時代を迎え、佐渡金山に次ぐ日本第2位の産出量があり、坑道の長さは総延長100km以上にも及びましたが、1965年(昭和40)に鉱量枯渇のため閉山しました。1972年(昭和47)からテーマパーク「土肥金山」として観光用に利用されています。金山資料館「黄金館」には、土肥金山に関する資料や鉱石などが展示され、ギネス世界記録にも認定された250kgの世界一の巨大金塊などもあり、観光坑道(350m・所要時間約30分)内には当時の鉱夫らの人形が再現されました。また、「砂金館」では、砂金採りの体験もできます。

(5)大森銀山跡(島根県大田市)
 大森銀山(石見銀山)は、戦国時代後期から江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山でした。しかし、銀の産出量は減少し、明治期以降は枯渇した銀に代わり、銅などが採鉱されましたが、昭和時代前期には、完全に閉山するに至ったのです。その後も銀山に関わる施設跡や町並みが残され、武家屋敷、商家、寺社などが往時の姿を留めているので。1967年(昭和42)に石見銀山は「大森銀山遺跡」として県指定史跡に指定され、さらに1969年(昭和44)には国から「石見銀山遺跡」として史跡に指定されたのです。さらに、1987年(昭和62)には、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。また、2007年(平成19)には、温泉津と共に、「石見銀山遺跡とその文化的景観」として、世界遺産(文化遺産)に登録されたのです。中でも、石見銀山世界遺産センター(石見銀山関連の展示あり)、大久保間歩(ツアー形式により限定的に坑道を公開)、龍源寺間歩(観光坑道として常時公開)、代官所跡 (石見銀山資料館)、熊谷家住宅 (国の重要文化財)、旧河島家、渡辺家住宅、羅漢寺五百羅漢などを巡ってみると、当時の銀山の様子とその繁栄ぶりがわかって勉強になりました。

(6)別子銅山跡(愛媛県新居浜市)
 1690年(元禄3)に発見され、翌年から約280年間に70万トンを産出し、日本の貿易や近代化に寄与した大鉱山でした。一貫して住友家が経営し(閉山時は住友金属鉱山)、関連事業を興すことで発展を続け、住友が巨大財閥となる礎となりましたが、1973年(昭和48)に閉山しています。しかし、1991年(平成3)6月5日に、銅山のテーマパーク「マイントピア別子」としてオープンし、現在は“端出場ゾーン”に本館があり、旧火薬庫を改造して作られた観光坑道(長さ333m・別子銅山の様子を再現)との間を、鉱山鉄道(日本初の山岳鉄道)が復元されて、別子1号が運行されています。また、標高750mの山中にある“東平ゾーン”には、銅にまつわる品々を展示する「東平歴史資料館」、レンガ造りの旧保安本部を活用して銅板レリーフなどを体験できる「マイン工房」、その他数々の産業遺跡が整備されていて、端出場ゾーンとの間を観光バス(要予約)で結んでいます。

☆見学できる鉱山跡一覧(炭鉱を除く)

<東北>
・八戸石灰鉱山[石灰石](青森県八戸市)住金鉱業が操業中。展望台は開放(団体・説明案内は要問合せ)
・尾去沢鉱山[銅他](秋田県鹿角市)坑道見学、資料館有り。
・阿仁鉱山[金・銀・銅](秋田県北秋田市)阿仁伝承館、選鉱設備や阿仁鉱山専用線の遺構。
・小坂鉱山[金・銀・銅・亜鉛・鉛](秋田県鹿角郡小坂町)小坂鉱山事務所、小坂製錬小坂線の遺構など。
・野田玉川鉱山[マンガン](岩手県九戸郡野田村)坑道見学。
・細倉鉱山[鉛・亜鉛](宮城栗原市)坑道見学、砂金堀り体験可能。
・高玉金山[金・銀](福島県郡山市)坑道見学・トロッコ有り。

<関東>
・日立鉱山[銅・硫化鉄](茨城県日立市)資料館、記念館。削岩機コレクション。
・足尾銅山[銅](栃木県足尾市)資料館、坑道見学・トロッコ有り。国内最大の坑内観光。

<中部>
・佐渡金山[金](新潟県佐渡市)。坑道見学、資料館有り。
・西三川砂金山[金](新潟県佐渡市)体験型資料館、砂金とり体験。
・土肥金山[金](静岡県伊豆市)坑道見学、温泉砂金掘り。
・神岡鉱山[亜鉛](岐阜県飛騨市)関連事業は操業中。坑道、スーパーカミオカンデ、カムランド施設の見学は年一度開催。
・尾小屋鉱山[銅・金](石川県小松市)資料館有り、マインロード(坑道)見学。

<近畿>
・明延鉱山[スズ・銅・亜鉛・タングステン](兵庫県養父市)坑道見学(要予約)、廃線の明神電車跡あり。
・神子畑鉱山[銀](兵庫県朝来市)明延鉱業の東洋一の選鉱所あり。
・生野鉱山[銀](兵庫県養父市)坑道見学(ガイドは要予約)、町並みや軌道跡など。

<中国>
・吹屋鉱山[黄銅・硫化鉄](岡山県高梁市)坑道見学。
・柵原鉱山[硫化鉄](岡山県久米郡美咲町)資料館有り、坑道見学は月に一度(要申し込み)
・石見銀山[銀](島根県大田市)坑道見学、石見銀山世界遺産センター、岩見銀山資料館。

<四国>
・別子銅山[銅](愛媛県新居浜市)坑道見学(復元された鉱山鉄道で巡る長さ333mの観光坑道)、砂金取り体験。

<九州>
・鯛生金山[金](大分県日田郡中津江村)坑道見学、地底博物館有り。砂金とり。道の駅が併設
・津久見鉱山[石灰岩](大分県津久見市)露天掘り操業中、見学会有り(要問合せ)
・薩摩金山[金・銀](鹿児島県いちき串木野市)焼酎メーカー・濱田酒造が運営する坑道見学(坑道が仕込み蔵)。


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