タイムカプセル-8- | パレット

パレット

嵐が好き。
翔ちゃんが好き。
それは変わらない。

もうすぐ終電の時間だったから、バタバタと店じまいをして。
「じゃ、松本くん。またね!」
駅に向かって走って行く彼女を見送った。
タクシーで送るって言ったのに、電車がいいと聞いてくれなかった。
ひとりタクシーに乗り込んで、住所を伝える。
髪からは、整髪料の匂いに混じって、彼女の香水の匂いがした。
この間のキスの理由、聞くの忘れたな・・・。
そっと頬に指を触れさせて、窓の景色を眺めた。

翌日、新しい髪型の事を聞かれたけど。
「気分転換だよ」
と言って、話を反らせた。
ふわふわとした髪のせいで、気持ちもなんだか浮ついてる。
でも、彼女に会う口実がなくなった。
どうやって次の約束をしよう?
携帯を取り出して、トーク画面を出してみるけど。
誘う口実が見当たらない。
笑いながら収録をしても、どこか上の空。
「調子悪いのか?」
心配したメンバーが声をかけてくれる。
「いや、そんなことないよ。ごめん」
謝ったら、大丈夫ならいいって笑ってくれた。
彼女の事は、少し置いておこう。
自分にそう言い聞かせて、次の仕事へ向かう。
移動車の中から彼女の店が見えた。
丁度客を見送る為か、出てきた彼女が見えた。
ニコニコ笑って頭を下げてる。
客の背か見えなくなるまで手を振って、店の中に戻って行く。
近くに居るのに、遠い距離。
ふぅっとため息を吐いたら、震えた携帯。
『30日、昼間にタイムカプセル出すけど、潤は来れそうか?』
友達からの確認メッセージ。
30日は夕方からの仕事だったはず。
彼女に会える口実が、見つかった。