少し顔を上げたら、潤んだ瞳が私を映す。
「ん?」
無理に笑ってるのがわかる笑顔で、首をかしげる。
その仕草が愛おしい。
手放したくないし、誰にも見せたくない。
だけど、そんな悲しい笑顔にさせてるのは、まちがいなく私。
そんな私が、隣に居てもいいのかな・・・。
「翔は、私と居て・・・幸せ?」
「え?」
私の質問に、酷く驚いた顔をする。
そして、ゆっくりと瞳を閉じる。
もし、苦しいって言われたら、翔から離れよう。
翔を自由にしてあげよう。
だけど・・・。
翔を失う怖さに震えそうになりながら、返事を待った。
しばらく私を抱きしめて、何度も優しく背中を撫でてくれた後。
「俺には、結衣の居ない時間なんて、もう考えられないよ」
そう言って、優しくて甘いキスをくれる。
「翔・・・」
「結衣は俺の一部なんだ。だから、居なくなったら・・・なんて、想像するだけでゾッとする」
「・・・」
「だからね、結衣」
「・・・うん」
「例え何があったとしても」
「うん」
「結衣が隣に居てくれるんなら、幸せだよ」
「・・・こんなに泣かせてるのに?」
頬にこぼれ落ちた雫をゆっくりと拭いとる。
「俺から、幸せを奪わないで」
拭っても拭っても溢れる涙で、私の服の袖が冷え始める。
「俺は、幸せだよ、今、とても」
思い切り下がった八の字眉の不細工な笑顔を向けてくれる。
大好きなその笑顔を見て、心臓が引き裂かれるような痛みに苛まれる。
「誰にも譲る気は、ないから」
壊れ物を抱きしめるように優しく私を抱きしめて。
そっと私の存在を確かめるようなキスの雨が降ってきた。