国立天文台の特別公開「三鷹・星と宇宙の日」2014に行ってきました | なか2656のブログ

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10月25日に、三鷹国立天文台の特別公開「三鷹・星と宇宙の日2014」に行ってきました。

(国立天文台ウェブサイトより)



入り口の受付の建物が古風で、屋根の青が美しいです。


長年調布に住んでいますが、はじめて国立天文台の中に入りました。
写真はちょっと逆光ですが、ゆたかな緑の中に研究棟が立ち並んでいます。
おお、これが日本版JPLあるいはMITもしくはNORADなのか・・・ 
そういえばJAXAの大きな拠点の一つも調布市深大寺東町にありますね。


地元の大沢の方々の屋台もでていて、焼きそばなどが振舞われていました。


もちろん男性も多かったですが、若い女性が多い感じでした。時代の流れですね。


「すばる棟」を見学しました。

岡山の天体物理観測所が今年で54周年なのだそうです。


なんと岡山の天文台は、太陽系外惑星29個も発見しているとのことです。


今回の特別公開に来て驚いたのは、「サイエンスカフェ」と銘打って、小さな喫茶店のようなスペースで、無料のコーヒーなどをいただきながら、研究者の方と約10分間、1対1で天文学に関するお話を伺う貴重な機会をいただけたことです。




けっこう美術館や博物館に行きますが、ここまで親切な”おもてなし”をしていただける機関ははじめてで、とても驚きました。

私は、小宮山裕先生という若手の感じのよい先生から、ハワイのマウナケアの「すばる望遠鏡」CCDカメラ太陽系外惑星のお話をお伺いすることができました。

とくに「すばる」について、パンフレットの図表などを元に、CCDカメラが約1Gpixelという高精度なうえに、1つがおよそスマホ1つ分くらいの大きさのCCD116個を焦点面に敷き詰め、さらに微弱な信号をとらえるためにそれらのCCDを冷却機でマイナス100度に保っているとのことを詳しく教えていただきました。


やはり実務に携わる方から口頭で説明していただくと、文書で読むだけと違って非常によくわかりました。従来の望遠鏡にくらべて、精密に、広範囲に観測ができることがわかりました。

「すばる展望鏡」に関する、「ここまでわかった太陽系外惑星の姿」の展示です。

このパネルの横にいた若手の研究者の方が教えてくれたのですが、ハワイのマウナケアの「すばる展望鏡」は太陽系外惑星にも力をいれているそうでした。「すばる」は従来の展望鏡に比べてCCDの技術のみならずカメラの視野もとても広いので、アメリカの地球型太陽系外惑星の探査機「ケプラー」などの軌道上の探査機がピンポイントなのに対して、「すばる」は広範囲に精密に調べることができるとのことでした。






太陽系外惑星については、私も個人的に興味があったので、素人ながらいろいろとお伺いさせていただきました。これまで多くの成果をあげてきたアメリカの「ケプラー」が最近、姿勢制御装置の不具合に陥っていること。また、それにかわって、「TESS」(トランジット系外惑星探索衛星Transiting Exoplanet Survey Satellite)という探査機が計画されているということ。さらに欧州のESAも2020年代に地球型太陽系外惑星の探査機の打ち上げを予定しているとのことでした。

また、天文学という分野における、例えば映画「アルマゲドン」のような小惑星や彗星から地球を守るスペースガードの取り組みや、月面のヘリウム3などの資源などのお話も聞くことができました。とくに、日本の「はやぶさ」が研究目的でイトカワに行ったのに対して、あるアメリカのベンチャー企業は軌道上でレアメタルを得ることを目得として、有望な小惑星をゲットしてくる衛星を計画しているというお話は、いかにもアメリカ的だなあと思いました。

宇宙開発を扱ったSF小説である、笹本祐一氏『星のパイロット』シリーズの「ブルー・プラネット」は近未来のアメリカを舞台に地球型太陽系外惑星の探査機を描いた小説です。 “もし地球型の惑星が見つかったら再び大航海時代が始まるようなインパクトが世界中の経済界に起こる。距離はたいした問題じゃない。そこに行くためのエンジンがないなら、逆に銀行や証券会社が金を集める”という趣旨の小説中の野心的な実業家の台詞が印象的でしたが、それを思い出しました。

さらに、私が岡山の望遠鏡が太陽系外惑星を発見した方法がパネルの説明文を読んでも今ひとつよくわからなかったと質問したところ、”ハンマー投げの室伏選手のように、惑星をハンマー恒星を室伏選手と考えてみてください。ハンマーを投げるときに、ハンマーが回転するとともに室伏選手自身も動きます。岡山の望遠鏡は室伏選手の動きに注目して、ハンマーの存在を割り出しています。”という解説をいただきました。

はるか遠くの恒星の微妙な動きをとらえる岡山の望遠鏡のすごさを実感するとともに、この研究者の方の池上彰さんのような解説のわかりやすさにも感服しました。

加えて、その研究者の方からは、現在、太陽系外惑星の研究が非常にすすんでおり、今後もさらに精度の高い研究が行われていくので、おそらく数十年後には、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という哲学的なテーマに関しては答えが出ると思います、という非常に興味深いコメントをいただきました。

素人の一市民に丁寧に教えていただける研究者の方に頭が下がる思いでした。

「太陽観測」のコーナーを見学しました。


太陽観測「ひので衛星」の部品だそうです。



太陽の彩層を観測する、「CLASP」という機器のプロジェクトのついての展示がありました。


展示の前にいらした研究者の方の説明によると、この「CLASP」は来年夏にアメリカから小型ロケットで打ち上げ予定で、いったん宇宙までいったあとに軌道にのることなく落下しパラシュートで降下し回収されるそうです。


そのため太陽を観測できる時間は約5分間ですが、この「CLASP」のミッションにかけられる時間・期間予算も、衛星などに比べればはるかにコンパクトに済むそうで、国立天文台としては緩急を使い分けてさまざまな研究をしていきたいとのことでした。

また、解説のパネルにこのプロジェクトに携わった研究者の方々のお名前と顔写真があったのですが、全体的に若手助教の方が多いように思われました。近年は理系の世界ですらポスドクという問題があるそうで、このような若手の方々が活躍できる機会があるのは、大変良いことなのではと思いました。
この研究者の方もたいへん親切な方で、頭がさがる思いでした。


「CLASP」解説パネルを読みました。この観測機器の作成のさまざまなプロセスを手作り感あふれる感じでパネルにしていました。
うえであげた『星のパイロット』に、「宇宙船はコンピュータで飛ばしてるんじゃない、人力で飛ばしてるんだっ!」という台詞があるのですが、無人の観測機器も、三鷹や岡山やハワイにある天文台も大変な努力の賜物なのだなと思いました。
(もちろん理系でも文系でも、研究機関でも民間会社でも人のやっている事は本来そうだと思いますが。)




太陽の観測に関するミニ講座です。
太陽の動画をどんどんモニターに映して講義を行なう、大人がみても大変興味深い内容でした。また、質疑応答形式の講義であり、最前列に座っていた小学生たちが元気よく声をあげているのが印象的でした。本とかで読むと、NASA等では子ども向けの社会科見学的な科学授業を積極的にやっているそうですが、こんな感じなのでしょうか。


なお余談ですが、文科省のウェブサイトの「高等教育」の箇所などを見ていると、最近のわが国の政府・与党は、”ごく一部のエリートに対しては別として、一般人に対しては、大学ではシェークスピアなどの学問をするべきではない。一般人に対しては大学ではTOYOTAで使われている最新鋭の工作機械の使い方などの職業訓練をすべきである。”という方針に基づく教育改革を推進しようとしているようです。学問全般や近現代の知性への侮蔑の念や、一般の国民はすべて派遣社員になりなさいという政府・与党の選民意識を感じます。

しかし、国立天文台はまともな考え方をお持ちのようで、ぜひこのスタンスを持続していただきたいと思いました。

また、うえでもふれたとおり、国立天文台ではさまざまな展示のあちこちに若手の研究者の方々が立っておられて、一般の市民に対して気さくに、親切に説明していただけるのが、素晴らしいなと思いました。このような取り組みが日本の市民や社会の学問を支えてゆくのではないかと思います。

・国立天文台
・「系外惑星探索に新衛星TESS」日経サイエンス2013年8月号
・「ESA 系外惑星探査の宇宙望遠鏡を2024年打ち上げ はやぶさ後継機は採択ならず」response
・文部科学省|実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議
・文部科学省|資料4冨山和彦委員提出資料(PDF)


ハイ・フロンティア/ブルー・プラネット 星のパイロット3 (朝日ノベルズ)



散歩の達人 2014年 05月号 [雑誌]




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