東京都議選挙における自民党の大敗―「憲法の番人」 | なか2656のブログ

なか2656のブログ

ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

2017年7月2日に投開票された東京都議会選挙は、自民党の歴史的な大敗に終わりました。

(AERAより)

さらに7月3日の新聞紙の夕刊の見出しに、「閉会中審査には応じざるを得ない」との記述をみて私が思い出したのは、『法律時報』2016年5月号に掲載された蟻川恒正教授の論文「「憲法の番人」に関する考察」でした。

・「閉会中審査には応じざるを得ない」 首相含む自民幹部|朝日新聞

この論文は、砂川事件判決などの統治行為論が、「統治行為に関する判断は、一次的には内閣のおよび国会の判断に従い、最終的には主権を有する国民の判断に委ねられる」と結論付けられていることを再確認してはじまります。

そして、同論文は、「憲法は主権者たる国民が統治者に課した法規範であり、だから統治者は憲法を守る義務を国民に対して負うのである。それに対して国民は(略)憲法の名宛人ではないから守る義務を負わない。(略)国民は統治者に憲法を守らせる立場にある。だから統治者が憲法を守るよう監視する「義務」を負う。」という高橋和之教授の見解を紹介しつつ、

選挙で、誰もしくはどの政党が、どれだけの票を得票すれば「国民」は当該統治行為について、判断、監督をなしたといえるのか不明であるとします。

そこで、同論文は、疑念の源は、国民を民主主義の観点からみるからであるとします。そして同論文は、公権力担当者が憲法を守らなければならないのは近代立憲主義の要請であるとします。すなわち、公権力担当者に憲法を守らせる国民は「個人」として表彰されるものであるとします。

したがって、選挙において個人が自らの義務(「不断の努力」)を尽くすのが、「個人の尊厳」の要請であるとこの論文は結論付けされています(憲法12条、13条)。


ここで冒頭の都議会選挙の結果と閉会中審査に話を戻すと、これまで国会などで野党が激しい抵抗をしてきたにもかかわらず、安倍政権は2012年から第二次・第三次と約5年間、憲法違反、法令違反を平然と行い、国家を私物化してルイ14世のごとく傍若無人に立ち振る舞ってきました。

2015年には安保関連法を強行採決し、本年は国会の手続きを無視して共謀罪法を成立させました。

そして本年6月に野党4党が行った憲法53条に基づく臨時国会の召集の要求も安倍内閣は拒否しています。

しかし、7月2日の選挙が、臨時国会そのものとは違えども、閉会中審査の開催を安倍政権から勝ち取ることに成功したのです。

これは統治担当者に憲法を守らせる義務を負う多くの個人の不断の努力による、大きな成果であると思われます。

法律時報 2016年05月号 通巻1098号



憲法 第六版



共謀罪の何が問題か (岩波ブックレット)