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五右衛門風呂の愛情②

最近、野菜中心の「お爺ちゃんの昼食

」を食べ過ぎた反動で、連日肉ばっか

り食べてます。




井戸水を汲んで、風呂釜に水を満たす

だけでも重労働なのに、薪でお風呂を

沸かすのは時間や手間の掛かる作業で

す。

だからこそ、家族が助け合わなければ

お風呂にさへ入れません。


現在の便利な暮らしでは、望むモノは

全てボタン一つで叶ってしまうので、

家族間のコミニュケーションが無くな

っても何ら問題が無いのです。

しかし、手間の掛かる危険な五右衛門

風呂しかなかった僕達は、それぞれが

分担して準備を進め、いつも家族が一

緒にお風呂に入らなければならなかっ

たのです。

だから僕達は、手間の掛かる五右衛門

風呂のお陰で、常に自分達の近況を語

り合っていました。

そして、危険な五右衛門風呂に浸かる

時は、熱い風呂釜から子供達を守る必

要があるので、僕達は常に父親や母親

に抱きしめられて浸かっていたので

す。

だから僕達は、危険な五右衛門風呂の

お陰で、常に家族の愛情をみじかに感

じていました。

五右衛門風呂は僕達家族にとって、ゆ

ったりとした幸福な時間と、お互いの

絆を感じさせてくれる大切な道具だっ

たのです。

しかし数年後、近所の人にボロ屋を馬

鹿にされて激高した父親は、先祖から

受け継いだ土地を叩き売って、立派な

家を建ててしまいました。

それから僕達は、1人でお風呂に入る

様になったのです。

いや、1人でお風呂に入れる様になっ

てしまったのです。

お風呂は新しくなり、ボタン一つでお

湯が沸く様になりましたが、便利にな

ったぶん家族は以前の様に、あまり語

り合わなくなりました。

そして、お風呂に危険は無くなり、湯

船に背中をあずけてくつろげる様にな

りましたが、安全になったぶん、家族

の愛情を直接感じられなくなってしま

ったのです。

そして今、施設に入所している父親は

、宅地開発されて様変わりした、以前

自らが所有していた広大な土地を眺め

て、「あの時、この土地を売らんかっ

たら今頃は億万長者やな…」と笑って

います。

僕は今でも、1人で快適なお風呂に入

りながら、大昔の五右衛門風呂を思い

出して、人生における幸せの意味を深

く噛みしめているのです。


-五右衛門風呂の愛情 完 -



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