#264 高田崇史『QED東照宮の怨』|読書NOTE~読んだ本の感想・レビュー~

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#264 高田崇史『QED東照宮の怨』

QED 東照宮の怨
著者:高田崇史
出版社:講談社文庫
初 版:2004年03月15日




内容(裏表紙より引用)
「三十六歌仙絵」を狙った連続強盗殺人事件が発生。不可解な事件の手がかりは意外にも日光東照宮にあった。「陽明門」「山王権現」「三猿」「北極星」「薬師如来」「摩多羅神(またらじん)」「北斗七星」。桑原崇が東照宮に鏤められた謎を解き明かした時、天海僧正が仕掛けた巨大な「深秘(じんぴ)」が時空を超えて浮かび上がる。好調シリーズ第4弾!


所感:
「この世の中で、寺社巡りと墓参りほど我々に清々しいきぶんをもたらしてくれるものは、他にないね」(『QED六歌仙の暗号』より)と宣(のたま)う奇人薬剤師タタルこと桑原崇が歴史または伝説上の謎の解明に挑むQED(=証明終わり)シリーズの第4弾。

今回タタルが挑むのは天海が日光東照宮に仕掛けた一種の呪(しゅ)の謎。
東照宮といえば徳川家康が祀られている場所。
「みざる・いわざる・きかざる」の「三猿」や「眠り猫」の彫刻なども有名だ。
しかし本作で注目すべきは東照宮に飾られている「三十六歌仙絵」である。

三十六歌仙とは、平安時代、藤原公任らによって編まれた
『三十六人撰』に選ばれた三十六人の歌の名人のことである。
当時の和歌の第一人者として三十六の歌人を選び、
それぞれの歌を一首ずつ、『三十六人撰』に載せたという。

そして三十六歌仙絵とは
『三十六人撰』に収録された36首の和歌に
絵を添えたもののことである。
しかし東照宮を訪れたタタルはあることに気付く。
東照宮の「三十六歌仙絵」と藤原公任選「三十六人撰」では、
掲載されている和歌が一致しないのだ。
これはなぜだろう?

というところから、タタルは東照宮に仕掛けられた「怨」の謎解きを進めていく。
そしてそこにいつものごとくオマケ的に現実の殺人事件が絡んでくるのだが、
現実の事件の導入(あらすじ)は裏表紙に譲ることにする。

「現実の事件はどーでもいいのっ! 蘊蓄さえ聞け(読め)ればっ!」
っていうスタンスなので、ね。

東照宮や三十六歌仙の他に
「神社と大社と神宮の違い」や「かごめ歌」に載せた騙り
(=口に出せないことを歌に載せて回りくどく人に広める)
など興味深い話題も登場して本作も大満足の一冊だった。

最後に、「三十六歌仙絵」について作品の核とは外れたところで少しだけ。
「三十六歌仙絵」で最も有名なエピソードは
『佐竹本三十六歌仙絵』と呼ばれる絵巻に起こった悲劇と呼ばれている切断事件だ。

大正時代の没落仕掛けの佐竹家という旧家から売りに出された
『佐竹本三十六歌仙絵』には当時の価格で約37万8千円、
現代の価格に換算して約40億の値がついた。
しかし40ともなるとさすがに個人では手が出せない。
そこで当時の財閥トップたちは一巻の絵巻を切り分けて
それぞれを一片にしてしまった…という
文字通り「切断事件」だ。

当時の東京朝日新聞(大正8年(1919)12月21日付)にも
「信実の三十六歌仙絵 遂に切り売りとなる」の見出しで掲載されている。

このエピソードは本作でも「三十六歌仙絵」にまつわる
有名なエピソードとして登場する。
そして他にもこのエピソードが登場する作品がある。

『深淵のガランス』
こちらは絵画修復師が主人公のミステリなのだけれど
同じエピソードを複数の作品で読むというのは興味深い。

しかし登場する場所がどこであれ憤りたくなることには変わりない。
ただ決断事件に関わった「当時の財閥トップ」の立場に自分をおいてみると、
切断を止めよう(止められたではなく、止めようとした)とできたか…
自信はない。



2014年10月29日| コメント:0トラックバック:0Edit
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