「オカズが何も無いの」

ある日の朝の食卓で
母がそう切り出した。

母本人は前夜の
宅配弁当のオカズの
残りを食べている。

何にも無いわけ無いでしょ。

冷蔵庫を覗く。
人参、キュウリがある。
お、豚肉があるじゃん、
これら炒めようよ。

「判った」

自分でやったほうが
好みの味付けに出来るが、
なるべく母に料理など
家事をさせるよう、
主治医に言われてるのだ。

「はい、出来たわよ」

……人参もキュウリも無い。
ただの肉炒め。

ひと口かじる、
うん、やはり味もない。

昔は肉にショウガ醤油を
揉み込んで美味しい
ショウガ炒めを作って
くれていたのに……。

とうとう塩コショウすら
出来なくなっている。

母の肉炒めボクは無言で
チューブショウガ、
コショウ、醤油で
味付けして食べました。

つづく。