私は1956年(昭和31年)に生まれた。「もはや、戦後ではない」と言われた年だ。逆に言うと、それまでは「戦後」という意識が強い時代だったのだろう。私の最も古い記憶に、母に手を引かれて名古屋の近鉄駅から地上に上がったら、白い服を着たオジサンが鍋を足元に置いて立っていた姿がある。
「あれ、何しているの?」
と、母に尋ねたら
「戦争で、足をなくした人がお金をもらっているの」
と、教えられた。
名古屋駅裏では、むきだしの地面にカンカンを置いてお菓子が並べられており、屋根はただのビニールシートだった。
小さい頃に、英語も日本語もペラペラの人を見たら「天才!」と思いませんでしたか?私は、そう思った。ガリレオの湯川先生のように、数式をスラスラと書き進む人を見た時も同じ印象を持った。
両方とも、子どもには理解不能の記号を駆使しているのだから驚くのも無理はない。私は
「いつか、あんな風に英語をペラペラ話せたらいいなぁ」
とか、
「いつか、数式をガリガリ書いて周囲を驚かせたいなぁ」
と思ったものだ。
高校生になると、それが
「東大や京大に行くヤツは天才的」
となった。
あれから40年。英語がペラペラになり、京大合格程度の数学は指導ができるようになった。
「夏期講習会」の真っ最中だ。北勢中学校から来ている生徒は、分からない問題があるとロクに考えもしないで、前後左右の生徒に「教えて!」を連発する。これは、学校で5人ずつ班を組ませて集団学習をさせているからだ。
机を普通に並べて一斉授業を行う講習会では、私語にしかすぎないのだけれど、学校の教師はそれが助け合いの理想的な姿だと教え込むので、生徒たちは授業中に平気で横やら後ろを振り返って質問しまくる。
全く困ったことだ。だから、最初は
「そんな勉強法では、自分で考える習慣がつかないからダメです」
と、授業態度から注意し始める。時間のムダだ。
それでも、私の塾は地元ではレベルの高い塾として知られているらしい。どんな教育を受けていても賢い子は、「学園ドラマを見ていると、どうも私の学校は異常らしい」と気づくからだ。
ここでは、上位の3%が四日市高校、11%%までが桑名高校、15%までが川越高校という感じだ。つまり、大多数が進学校に行かないのだから、中学校の先生は、受験指導など興味がない。
○合格者数○ 四日市高校 桑名高校 川越高校 生徒数 合格率
1, 光陵中学校 16 49 3 180 38%
2, 陵成中学校 17 42 7 200 33%
3,員弁中学校 1 15 7 80 29%
4,東員第二中学校 1 19 9 110 26%
4,東員第二中学校 1 19 9 110 26%
5,藤原中学校 2 10 3 60 25%
6,北勢中学校 5 17 6 120 23%
7,東員第一中学校 2 19 5 120 22%
8,大安中学校 4 8 8 140 14%
塾の月謝は、特別個人指導で15000円。中学3年生は、英語と数学だけのクラスは16000円。理科と社会のオプションを付けると27000円となる。大規模塾の授業料に比べたら良心的なのだが、それでも経済的に余裕がないと通わせられないだろう。
負の連鎖がいう言葉が流布している。
日本は、変わってしまった。私の記憶にある貧しい社会から、日本全国どこにでもコンビニがあり、欲しいものは何でも手に入る。そして、子どもたちは自立心を失った。教師が言うままにレールの上を進むだけ。かわいそうなものだ。
こうして、中国や韓国のような新興国に追い抜かれていくのだろう。大国病だ。
父も、私の小さい頃はミカン箱のようなものを並べて靴を売っていた。私は自分が貧しい暮らしをしているとは思わなかった。周囲が、みんなそうだったからだろう。それでも、ハングリー精神は旺盛だった。
「いつか成り上がってやる!」
と、思っていた。「あしたのジョー」にせよ「巨人の星」にせよ、上昇志向の強いマンガが多かった。「鉄腕アトム」や「8マン」を見ながら、勉強でなり上がろうと思っていたようだ。
バツイチになった時、赤ちゃんだった三女だけ連れ去られた。一時、行方不明になったので探しまくって、家庭裁判所で面接交渉権だけ確保した。こちらに、法廷離婚理由が何もないので慰謝料を支払う必要はなかったし、向こうがすぐに再婚して養育費の請求もなかった。
しかし、私は三女が小さい頃はポケモンカード、大きくなったら図書券、高校生になったら現金でお小遣いを渡していた。大学生になった時は、いくらか仕送りをしていたが、そのお金が再婚相手を助けることになるのなら嫌だった。
戦後なら絶対に許されないようなワガママで簡単に離婚する世相となっている。3組に1組は離婚だ。これが日本が長年求め続けてきた豊かな社会なのだろう。
私は、父の世代の戦争を「アジアから欧米諸国を追い出した日本」と認識している。朝日新聞の従軍慰安婦報道が捏造と分かる前から、「父は悪魔ではなかった」と分かっていた。
北勢中学校では、日教組の教師が私たちに「憲法九条を暗記せよ。さすれば、日本の平和は守られる」と言われても、信用していなかった。マンガの世界の方がよっぽど説得力があった。
「話せば分かる」と教わったが、話しても分からないから軍事力があることは小学生の頃から分かっていた。「鉄人28号」でも「宇宙少年ソラン」でも、最後は戦いだった。
2016年度(7名)
京都大学「医学部」、京都大学「理学部」、大阪大学「人間科学部」、名古屋大学「経済学部」、名古屋市立大学「医学部」、神戸大学「経済学部」、御茶ノ水大学「理学部」
2015年度(6名)
京都大学「経済学部」、京都大学「総合人間学部」、東京医科歯科大学、大阪大学「外国語学部」、東工大、名市大「薬学部」。
先の戦争では、非常に多くの日本人が犠牲になった。30年後、50年後の日本が素晴らしい国になるように願って亡くなったはずだ。その未来に私たちは生きている。
まさか、鳩山さんや菅さんのような左翼政権が権力を握るなんて想像もできなかったはずだ。競争が可哀そうだからと、偏差値や順位を否定して業者テストと追放するなんて想像できなかったはずだ。
私は、戦後の混乱は知らないが、父たちが必死に生き残ろうとしていたことは知っている。同業者との激しい競争にさらされていたのも知っている。競争を否定した社会主義の国が、ソ連をはじめ次々に崩壊していったのも知っている。
それなのに、民主党に投票したり、今回は鳥越さんの人気が高いなんて、日本人はどうかしてしまった。三重県は、100%日教組の教師なんて、恐怖を覚える。日本がソ連のように衰退していくのは当然だ。
受験業界でも、タレントを使ったCMや、合計人数を足し算したら定員を越えるインチキ合格者数。あるいは、暴走族講師やキンピカ先生のようなパフォーマンスばかり。
コンシェルジュ、ハイブリッド指導?なんだ、そりゃ?
電子黒板やタブレットで集客しようとする塾も多い。もう、ムチャククチャ。
こんなイカサマの社会を作るために、先人たちはその身を犠牲にされたのだろうか。情けなくなってしまう。