カテゴリ:前立腺がん
◆◆ 限局性前立腺がんに対する過剰治療 ◆◆ 日本では前立腺がんと診断される患者さんが著しく増加しています。 2015年の男性のがんの罹患数予測では第一位です。 米国においても、2016年だけで、18万人が新たに前立腺がんと診断され、2万6千人がこの病気で亡くなると推測されています。 PSA検査の普及が、患者数増加の主たる原因と考えられています。 PSA検査が普及した現代においては、前立腺がんが見つかった時は、非常に初期で、放っておいてもいいような前立腺がんの患者さんもいれば、あちこちに転移した状態の進行した状況で見つかる患者さんもいます。 確かに米国では、PSA検査が普及することで、1992年から前立腺がんによる死亡が減ったという事実があることから、早期発見、根治療法が一定の役割を果たしていることは疑いようのない事実です。 前立腺がんの診断治療の目標は、いかに命を脅かすような前立腺がんを早期に診断して、根治させるかということです。 あちこちに転移した前立腺がんを根治するのは現状では困難です。 いかに前立腺内にがんがとどまった状態(限局性前立腺がん)で、進行する前に治療するというのが、重要になります。 限局性前立腺がんの治療と言えば、大まかにいえば監視療法か根治療法です。 さらに、限局性前立腺がんの根治療法といえば、手術か放射線療法ということになります。 しかし、限局性前立腺がんの治療、根治療法により、様々な副作用、合併症が起こりえます。 性機能低下、尿路の合併症、消化器症状などです。 根治療法を受けることにより、副作用や合併症によって、生活の質が落ちてしまう患者さんが一定の割合で存在します。 この副作用や合併症が一時的なものであればいいのですが、後遺症として継続してしまう場合もあります。 前立腺がんの中には、非常にゆっくり進行するものがあって、高齢な患者さんが多いことから、治療中に、他の原因で亡くなる方も少なくありません。 限局性前立腺がんの患者さんに、見つかればすぐに根治療法を行えば、寿命は延びるに決まっている というのが、泌尿器科医にも患者さんにとってもいわゆる常識でしょう。 しかし、前立腺がんの中には非常にゆっくり進行するものがあるとすれば、このような場合、とくに、前立腺がんが前立腺の中にとどまっている状態で見つかった場合の、限局性前立腺がんの患者さんに、本当に積極的な根治療法が本当に必要かどうかという疑問が以前からありました。 また、早期に前立腺がんが見つかったからといってすべての患者さんに根治療法を行うのはやりすぎだ、過剰治療だという考えもあります。 限局性前立腺がんの患者さんが根治療法を受ければ、根治は可能だが、生活の質が落ちる可能性があります。 限局性前立腺がんの患者さんへの早急な根治療法は、本当に有益なのでしょうか? 限局性前立腺がんの患者さんで本当に根治療法は、寿命を延ばすのでしょうか? 限局性前立腺がんの患者さんに、直ちに根治療法を行っても行わなくても結果が変わらなければ、根治療法の重要性、必要性がなくなってしまいます。 これが本当であれば、天地がひっくり返ってしまいますね。 過剰治療しているのではないかという反省から、経過観察や監視療法という考え方が近年生まれてきました。 問題は、どんな患者さんに対する早期根治療法が過剰治療となるのかということになります。
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最終更新日
2016年11月14日 01時12分35秒
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