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最新情報 前立腺がんの診断と治療

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2017年05月14日
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カテゴリ:前立腺がん

◆◆ 高齢の前立腺がん患者さんの治療 ◆◆
 

前立腺がんの治療を受ける患者さんは急速に高齢化しています。
高齢者とくに70歳を超えてくると、治療に関してもどこまで、若年者と同じようにできるかという問題があります。
また年齢をかさねると、どうしても、前立腺がんに限らず、様々な病気がでてきます。

単に老眼、難聴、記憶力低下などの老化現象だけでなく、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞、糖尿病、肝障害、腎障害などが増えてきます。
また、ベッドで寝たきりだったり、食事がとれない状態だったり、認知症やうつ状態が強い場合もあります。家族の援助が得られなかったり、経済的にも苦しい患者さんもいらっしゃいます。
様々な状況が考えられ、前立腺がん標準治療が受けられるとは限りません。

転移性前立腺がんなどで、急速に悪化している場合などは、治療の選択に難渋する場合が少なくありません。また、様ざまな治療を試す時間がないかもしれません。

 

食生活の変化、生活様式の欧米化、PSA検査の普及、人口の高齢化により確実に前立腺がんと診断される患者さんは増加しています。

米国では、前立腺がんと診断される患者さんの60%以上が、65歳以上であり、4分の175歳以上といわれています。

また、前立腺がんで亡くなる方の90%以上は65歳以上であり、半数以上は75歳以上といわれています。

日本でも、前立腺がんと診断される患者さんの20%前後が80歳以上であり、前立腺がんで亡くなる方の約40%は80歳以上といわれていて、高齢者の比率が上昇しています。

 

また、診断時には、比較的若かった患者さんでも、手術や放射線療法や内分泌療法で長期間治療後、再発や再燃が起こった場合、最終的に去勢抵抗性前立腺がんとなり、高齢となって亡くなる方も少なくありません。

前立腺がんは高齢者のがんではあり、高齢者の死因の中で、徐々に割合が増加しています。

前立腺がんが悪化再燃進行したり、高齢で進行前立腺がんが見つかった場合、高齢というだけの理由で、積極的な治療はするべきではないのでしょうか?

いったい、高齢というのは何歳からでしょう?

 

医者が高齢者に勧める治療は、そして患者さんが希望される治療は、

外来でできて比較的楽な治療です。

ドセタキセルの化学療法も外来で継続できますが、抗がん剤というだけで、大部分の患者さんは拒否反応を示します。確かに、一部の患者さんで生活の質が落ちるかもしれませんが、6070歳代であれば、必要であれば、ドセタキセルの化学療法を強く勧めるでしょう。


内分泌療法を行っても急速に悪化する患者さんでは、80歳代で体調のよいお元気な方なら、ドセタキセルの化学療法を今後は強く勧めるべきでしょうか


皆さんは、耐えられそうであれば、ドセタキセルの化学療法は、受けたいですか、いかがでしょう?


今回の電子配信では、PSA 80085歳高齢の転移性前立腺がん患者さんのモデル<患者さんSさん>を作成して、経過、治療法を検討してみました。

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<患者さんSさん>

病院受診時85歳。

左腰痛にて近くの医院を受診。

PSA697と高値であったため泌尿器科を紹介受診

手術歴) 虫垂炎(いわゆる盲腸)にて20歳代で手術。それ以外は手術なし。

そのほか持病なし。高血圧(-)糖尿病(-)結核(-)心疾患(-)抗凝固剤(-)

内服しているお薬はなし。

薬剤・食物アレルギーなし。

お元気で、一人で歩いて受診され、難聴もなく、見た目は若々しく、理解力もあって、

75歳ぐらいに見える。

 

泌尿器科に来られた時のPSA800とやはり異常高値でした。

前立腺がんはほぼ間違いない状況です。

すぐにCTと骨シンチを撮影しました。

 

 

治療前

CT

 前立腺癌、膀胱浸潤、左水腎症・水尿管症(左側の尿管が閉塞した状態)、多発リンパ節転移、骨転移

骨シンチ

 両側肋骨、胸椎~腰椎、仙骨、両側腸骨、右大腿骨近位部等に多数の異常高集積を認め

ます。多発骨転移の所見です。

腰痛は骨転移によるものと考えられました。

 

数日後に前立腺生検を6ヶ所行い、すべて前立腺がんの診断で、 Gleason sum 5+4=9

 

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以前から電子配信でも、高齢者の前立腺がんの治療について解説してきました。

高齢者、高齢者とはいうものの、いくつから高齢者とよんでいいのかでさえ簡単ではありません。

実際に病院でお会いする高齢な患者さんというのは一人として同じ状態の患者さんはいません。

そこが、治療を難しくしています。

100%安全な治療はありません。生存期間だけを延ばすことが治療の目的ではありません。治療効果があって、PSAが下がったとしても、副作用がつらい場合もあるでしょう。寝たきりになったり、痛みなどの症状が改善しなかったり、新たな症状がでてきて、治療を後悔するようなら、何のための治療かわかりませんね。

ここでも、以前、ヨーロッパ泌尿器科学会の転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する2017年最新バージョンの治療のアルゴリズムを私が訳したものを紹介しました。



これは、年齢で治療法を分けていません。


 

転移性前立腺がんの患者さんをパフォーマンスステータス(Performance StatusPSでまず振り分けたアルゴリズムです。

米国のNCCNのガイドラインでは、

患者さんの余命5年あるかないかと前立腺がんの症状があるかないかで、まず前立腺がんの治療のお勧めを振り分けているのと対照的です。

米国のNCCNのガイドラインでは、前立腺がんの診断時に余命5年以内で無症状であれば、よほどのことがない限り、精査治療は必要ないとしています。

 

ヨーロッパ泌尿器科学会では余命よりPSというわけです。

 

高齢者に一般的に標準治療をするかどうかを決めるための参考にするために、G8スクリーニングテストというものもあります。

 

 

 



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05/08  定期配信 『臨床試験とは? 治験とは?
05/15  定期配信 『85歳で見つかったお元気だが急激に悪化する転移性前立腺がん患者さんの治療
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前立腺がん治療の最前線

を参考にしてください。同じく月4回の発行です。
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興味のある方は是非1度、試していただければと思います。






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最終更新日  2020年10月22日 06時27分37秒
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