株主優待運用 株価変動の損失リスクを回避したクロス取引のメリットと注意点  | 家計資産運用の語り手 照彌のブログ

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今回は株式投資をされておられる方へ 株主優待運用 株価変動の損失リスクを回避したクロス取引のメリットと注意点について説明させていただきます。


前回、株主優待目的の銘柄については配当優待利回り、銘柄の健全性、購入タイミングの3つを確認した上で保有検討しましょうと述べました。


ただ、今の相場環境ですと長期的な視点から、優待目的銘柄を新規に購入するタイミングとしては悪いものが多く、将来大きな損失を招く可能性があります。


その理由として過去の株価チャートを見ると、ほとんどが高値圏であることが分かるからです。


長期で保有することは相場の山だけではなく、谷も経験することになります。特に深い谷ではかなりの苦痛が伴います。それを乗り越えて精神的に強くなることも大事ですが、やはり想定されるダメージは少ないに越したことはありません。


特に、NISAで優待銘柄をこれから新規で買う場合は損益通算できないことをよく考えておいてください。


今、魅力的な優待銘柄はどんどん買われており、一度買うとしばらく売ることもないので、個人投資家の買い支えにより高値が維持されやすい傾向にあります。


しかし将来、市場が弱気相場に転じ、恐怖のどん底を経験する時には我先に売りが殺到する場面に直面します。


こういった銘柄において、普段は太い木の枝のように株価が折れにくい性質がある(株価下落耐性がある)のですが、いざ、想定を超える有事が発生すると、個人投資家の動揺パニック売りが加速度的に起こり、木が一気にへし折られるかのような感覚で他の非優待銘柄以上に下落することが予想されます。


このタイミングで売ると非常に大きな売却損が出ます。さらに、特定口座で利益の出た銘柄と損益通算できないことにより、売却損の約20%の税金還付もありません。まさに泣きっ面に蜂の状況になります。


NISAで購入すると利益が出た時には非課税のメリットがあります。反面、損失になった場合は上記のデメリットも理解しておきましょう。


よって、これから優待目的で購入保有する銘柄は多少の株価変動に対しても動揺しないもの、生涯保有したい銘柄や日常生活で欠かせない銘柄を中心にポートフォリオを作りましょう。


さて、話は戻りまして、どうすれば株主優待運用において、株価変動による損失リスクを回避して行えるのか。


それは1つの銘柄を信用売り、現物買いで同数保有するクロス取引の方法です。


信用売りは制度信用取引と一般信用取引があります。


信用取引を使って権利日前場後場の寄付前にクロス取引を行えば、配当分はほとんど相殺されますが、権利落ち後の株価変動による損失リスクを回避して株主優待を受け取ることができます。今回はその詳細について話していきます。


まずは優待銘柄の権利を獲ることによるメリットです。


私はある私鉄の銘柄をクロス取引して、半年フリーパスの定期型株主優待券(価値十万円以上)を数千円程度で取得し、普段利用しております。


日常生活で使うスーパーの優待券・割引券・優待カード、コンビニなどで使えるクオカードも各社から頂いて買い物に利用しています。また、お米やビール、お茶、ジュース、お菓子など様々な品物が贈られてくるので、狭い部屋の我が家が優待品で溢れる時期があります。


このクロス取引を使いこなすと、日常生活費が相当量低減できます。低減した部分を貯蓄・投資するとさらに優待品が増える好循環になり、貯蓄スピードが高まります。今は知識不足の方でも今から資金力を少しでもつけておくことがここで活かされてきます。


ただし、クロス取引で売買銘柄、売買注文、数量、売買条件、売買タイミング等いくつかの項目で1つでもミスがあると正しく取引が出来ず、運良く利益になることもありますが、損失が出てしまう可能性が多々あります。


よって、確実に取引を成立できるように気を配る必要があります。


特に3月9月には優待銘柄が多くなるので、ミスを防ぐために私は取引銘柄の進行状況表を作って現状を確認し、注文時には声を出して1つ1つ確認しながら注文を出しています。そして、注文後は注文状況を再確認して、間違いがないか見ていきます。



ここから、制度信用クロス取引においての注意点を説明していきます。



権利日前に制度信用クロス保有している場合は普段から日本経済新聞朝刊のマーケット総合1・2欄を見て、注意喚起、売り建て禁止(売禁)などの情報が入っていないか確認します。


注意喚起、売禁の入った銘柄で貸株(信用売り)超過の場合は逆日歩が高くなるケースがあります。逆日歩があまりつかないケースもありますが、貸株超過で該当した場合は基本的に信用売り現物買いポジションを解消決済します。


さらに、権利日当日の寄り付き前や前場引けから後場が始まる休憩時間内に日本証券金融の貸借情報サイトを確認します。注意喚起、売禁、品株料率10倍適用などの情報が突発的に入ることがあるからです。


突発的なニュースが入った銘柄も制度信用クロスしているものは権利を取らず、当日中にクロス解消決済します。翌日、高額の逆日歩が待っていることが多いからです。


数十億から百億円レベルの時価総額の少ない銘柄、小型株、逆日歩3日分の該当月、1000株単位銘柄または12月優待銘柄の制度信用クロスは要警戒です。


逆日歩が自分の予想以上にかかることがあり、クロスしている単元数が大きいと、少しの逆日歩でも優待価値を上回る手数料を支払うケースがあります。


また、12月は年末年始をまたぐため、逆日歩適用日数が約5~7日間と長く、高額な逆日歩が来ると日数分かかるので、そのダメージは強烈になります。



ここで、極端な例を申し上げます。



音通という銘柄の優待は5000株以上保有で3000円相当のそば・うどん・そうめんセットが貰えます。


2012年9月当時、株価は15円と極端に安く、75000円の投資で優待を受けることができました。また、これまで権利日に信用売りが超過することはほとんどありませんでした。


そこで一部の方は制度信用のクロス取引を使って、権利落ち後の株価変動の損失リスクを回避した取引を試みます。私は低位株の制度信用売りによる逆日歩の怖さをこれまで目の当たりしてきたので、恐れ多くて近づけません。


権利日当日引け後の結果、この銘柄の発行株式数約1億9千万株に対し、権利日当日の売建超過わずか約30万株で発行株式数に対する割合は0.16%、通常のケースだと逆日歩はかかっても少額です。


制度信用売方はこれなら大丈夫と胸を撫で下ろします。逆日歩の結果は翌日昼前に分かります。


最高逆日歩回避の一応の目安は発行株式数に対する売建超過割合が1%超えで避難勧告レベル、2%超えで避難指示レベルです。


この把握方法は前日の売建超過株数と権利日当日の前場後場の寄付出来高(クロス取引が多数を占めるため)を合計して、権利日当日後場で制度信用クロス取引を継続するか解消するかの判断をします。


ただし、銘柄によっては売建超過割合が1%未満でも最高逆日歩がかかるケースや2%超えでも逆日歩が少額のケースもあり、銘柄の特性や経験が必要とされる部分もあります。後で申し上げます最高逆日歩がどれだけ付くのか、過去の売建超過割合に対する逆日歩状況も頭に入れておく必要があります。


話は戻ります。


しかし、この銘柄には大きな落とし穴が待っていました。当時は東証市場に合併される前の大証(大阪市場)取引です。分かる方はご存知でしょうが、品貸入札の流動性が低い銘柄が中にはあり、最高逆日歩のつく銘柄が発生しやすい市場でした。 


そこに前回述べました、鬼より怖い逆日歩が制度信用売方に襲い掛かります。


翌日、なんと前日に保有していた制度信用売方1株に対し、1日当たり6円の最高逆日歩が発表されます。



この数字を見た投資家は愕然とします。



優待受取に必要なクロス取引5000株売建で1日当たり3万円の支払い、さらに2012年9月権利の逆日歩日数は3日間、よって合計9万円の逆日歩支払いです。


3000円の優待品に対し、9万円を支払うとんでもない状況になったのです。この支払いのために音通現物株5000株を全て失った上、15000円をさらに支払うことになりました。


それ以来、この音通に関しては3月9月の年2回優待があるにも関わらず、権利日に制度信用クロス取引がほとんど入らない銘柄になりました。



また、逆日歩の状況判断は時価総額の多い大型株でも油断禁物です。


時価総額1千億超える銘柄でも過去に高額の逆日歩がかかることがあり、スギ薬局(7500円・100株3日分)・パーク24(1600円・100株1日分)など、時に制度信用売方は売買手数料を含めると優待価値を超える手数料を払うことになりました。まさか、これだけの大型株なら掛からないだろうと思っていた私もこれには巻き込まれました。



よって、高額の逆日歩を受けてしまった場合は仕方がないのですが、まずは最高逆日歩総額がどれだけになるのかを確認すること、過去の売建超過割合に対する逆日歩傾向を調べることです。


ただし、最近はクロス取引による優待取りも人気化しており、厳しめに逆日歩を見積ります。優待価値を超える可能性のある危ない銘柄は回避します。基本は最低単元数で制度信用クロスを形成します。


また、優待クロス銘柄を少数に集中せず、分散投資して、逆日歩によるダメージを平均化させます。


さらに、権利日当日の出来高状況を考慮し、日本証券金融の注意情報等の有無を確認して、当日後場で制度信用クロス取引を継続するか解消するかの総合的な判断をします。



なお、特定口座で源泉徴収あり、配当金を株式数比例配分方式で受け取っておられる方で、制度信用売り現物買いクロス取引の場合は権利日をまたいで保有していると、配当の約12%が取引差益として約3か月後(証券会社や状況によっては株式取引利益との年末調整後の翌年1月初旬)にもらえます。一般信用クロス取引の場合は配当分は相殺されます。


詳細はカブドットコム証券のQ&Aに載っておりました以下の部分をご覧ください。


引用始め


現物株式の配当金は、源泉税(20.315%)を差し引かれた状態で支払われます。
配当金が1万円の場合、源泉税を差引かれた7,969円が支払われます。

信用取引の配当落調整金は、制度信用と一般信用で異なります。
○一般信用取引(売り)の場合(配当落調整金100%)
配当金が1万円の場合、配当落調整金として1万円全額をお支払いいただきます。

○制度信用取引の場合(配当落調整金84.685%)
配当金が1万円の場合、配当落調整金として15.315%の所得税分を差引いた8,469円をお支払いいただきます。

配当金にかかる源泉税(20.315%)につきましては、確定申告することで譲渡損(配当落調整金の支払を含む)と損益通算することができます。


なお特定口座(源泉徴収あり+配当受入あり)かつ配当金の自動受取(株式比例配分方式)を選択されているお客さまの口座につきましては、現物株式の配当金は特定口座の譲渡損(配当調整金の支払いを含む)と自動的に損益通算され、翌年1月に税金が還付されます。


引用終わり



これを見ると、配当金の税引後受取7969円-配当落調整金8469円で500円損するではないかと思われますが、8469円の損失には約20%の税金還付があります。その還付分から500円を差し引くと、配当金の約12%が取引差益になります。


売買手数料や貸株料を差し引くと、おまけみたいなものですが、高額クロス取引で配当金額が多い銘柄ですと、ばかにできない額となります。ただし、高額の逆日歩が付いてしまうと、この利益も吹き飛びます。高額クロス取引の差益狙いでうかつに近づくと、大やけどする可能性があります。



これらの状況を見て、制度信用取引なんて怖くて無理、逆日歩が付くかどうかの面倒な判断をする時間や経験もないよ。



そんな方々には一般信用取引を紹介します。貸株利率は制度信用金利より割高ですが、この取引は問題となる逆日歩がありません。


カブドットコム証券、SBI証券、松井証券、大和証券、岩井コスモ証券で対象銘柄は限定されていますが一般信用売建が可能です。


ただし、人気のある銘柄は1か月前には品薄や在庫切れになっていることもあります。ところが、かなり前から一般信用クロス取引を行うと、貸株利率が制度信用より高いので売買手数料と維持金利コストを計算しないと優待を獲っても高くついてしまいます。


また、保有期限が短く限定されている売建銘柄だと権利日までに届かずに決済になってしまう場合もありますので、最終決済日がいつになるのかを確認しておきましょう。


最大のメリットとして逆日歩が付かないので、優待取得のための総額経費の把握がしやすいです。大型株を中心に様々な優待を軽減されたリスクで取得可能になります。


優待クロス取引を始めて間もない方、逆日歩が付きやすい銘柄を避けるには一般信用取引が良いと思います。



では、最後に株主優待運用のクロス取引で紹介したいサイトを述べていきます。


コツコツ株主優待

http://ameblo.jp/y50/


業界最大数の一般信用取引銘柄を取り扱うカブドットコム証券の売建可能数、競争倍率が曜日毎に記されており、人気度と一般信用クロス取引のタイミングが分かるようになっています。また、最高逆日歩や過去の傾向も載っているので制度信用取引で注意が必要な銘柄を知ることができます。


株主優待を極める

http://yutai.amits.net/


月毎の人気の銘柄や優待内容を知ることができ、権利月/日、証券会社別、単元価格別、銘柄コード順に並び替えが可能で、自分が必要な情報を分類することができます。また、過去の逆日歩状況も過去5年分記載されており、制度信用の詳しい逆日歩動向が把握できます。


もちろん、過去の傾向ですので、将来の逆日歩がどうなるかは分かりません。一定の目安として、または平均値を想定する意味合いで使いたいです。



クロス取引で株主優待を取得することは普段生活する上でとても役立つと考えております。まずは知識を蓄え、日々の倹約による貯蓄で資金力を高めると、こういった方法でさらに貯蓄スピードが高まります。まずは小さなことからコツコツと進めていきましょう。



上記の運用につきましてはご自身でしっかり確認した上で、自己責任でお願いいたします。


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