『宇宙人』第2章 髀肉之嘆 2-⑥
母親と先生は、僕の学校での様子について、話し合っていた。
特に、人間関係の話をしていた。
成績の話は、先生は、とにかく素晴らしい、としか言わなかった。
先生の話したことから推測すると、僕の人間関係の下手さは、深刻らしい。
先生にそう言われた母親も、否定はしなかった。
僕だって、否定はしない。一番の苦手科目だという自覚も、ある。
続けて話を聞いていると、人間関係については、母親はもうあきらめているようだった。それどころか、頭が良くて、一つのことに没頭して時間を忘れる、研究者に向いているタイプだから、それで成功してくれるのなら、人間関係のことはとやかく言うつもりはありません、と先生に言った。
僕は、母親に感謝すべきだろう。
僕は、両親が、僕のことを理解してくれることに期待はしていなかった。しかし、僕が思っているよりは、母親は僕のことを理解してくれているようだった。
母親は、僕のことを宇宙人だと思いながらも、理解できないと思いながらも、何とかして受け入れようとしてくれている。
先生の家庭訪問があった次の日からも、僕は先生の心配をよそに、周りの子たちと関わることはなく、ずっと一人でいた。
周りから見れば、僕は完全に浮いている奴だっただろう。
でも、そんなことは、僕には関係がなかった。
僕は、勉強ができればそれでよかった。
学校は、勉強をする場であって、遊ぶ場ではないからだ。
僕は、一人の世界で自由に過ごすことで、満足していた。